前回、わたしなりの「この町いいなの見つけ方」をハード的な観点から考えてみました。


そして移住から3ヶ月が経過し「『もっと』この町いいな」を見つけることができました。

そのきっかけは「人」との出会いから生まれたもの。その出会いから実体験を通して、考察してみました。

長文になってしまい恐縮ですが、地域や移住、暮らしを考えている方にとって参考になればと思います。

前提 -「人との出会い」の捉え方

至極当たり前ですが、移住したら「移住先の地域と先輩住民」と「移住した自分」の関係は無人島にいかない限り、切っても切り離せません。移住先での地域創生やフリーランスで活動をしないということであっても、です。

また、移住・地域創生などの記事で人との出会いに関する文脈で書いてあるものは、人脈構築の話が多いんじゃないかな、と感じています。

しかし、この「人との出会い」に関して、欲を持って能動的に掴もうとする行為は、絶対いいことではありません。ここで書いた「行為」にもう少しだけ説明を付け加えると、自分の利や希望だけを考えて人と繋がろうとする行動です。

正直にいうと、私は過去そういう行動をしてしまったことがありました。相手の気持ちを考えられていなかった浅はかな行為だったと本当に後悔しています。なんなら、昔はそういう人たちと繋がって、利益がある人脈構築しましょうなんてアドバイスもあったほどです。

その行動すべてが悪いとは思わないのですが、ちゃんと「縁」を大切にすること、そしてそもそも「利」を求めるのみで人とつながろうとしていないか、気をつけたほうがいいと考えています。

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話を戻して、今回の出会いからの話を

私は引っ越し前日に新居でどうしてもバルサンを炊きたく、沼津に前入りすることにしたのですが、どうせ泊まるなら地元の方との交流があるかもしれないと考え、利用していた多拠点生活のサブスクサービスで沼津拠点兼シェアオフィスの「シンマチ」に泊まることにしました。

すると管理者の方からこんなメッセージが。

宿泊される日に1階リビングスペースにて18:00〜21:00まで「スナックシンマチ」というイベントを開催予定です。

ご宿泊いただくのは2階になりますが、多少延長の可能性もあり、遅くとも22:00にはお客さまは移動していただくように配慮いたしますが、それまで少し賑やかになりますのでご了承くださいませ。

こちらのイベントは家守でありシェアオフィス「シンマチ」管理人がママになり料理やお酒を振る舞います。

沼津界隈の様々な活動をしている方やシンマチ会員さんが遊びに来てくれると思いますので、もしお時間あるようでしたらご参加お待ちしております。

※冒頭の日付以外原文ママ

「いや、もはや運命やん」というのは少し言いかもしれませんが、このタイミングは「縁」だと私は感じ「参加させてください!そしてぜひ、夜更けまでやってください!」と、すぐにご返事させていただきました。

そのスナックイベントに地元の方と移住者の方がたくさん集まっておられ、たくさんのお話を聞かせていただけることができました。私のことなんて誰も知らないのに、あたたかく迎え入れていただいたのは本当に嬉しかったです。

そして、その数週間後に、お世話になったシェアオフィス兼ゲストハウス「シンマチ」を運営されている合同会社「キナリ舎」代表お二人のこれまでの軌跡をたどるイベントがあったのですが、そこのお話を伺い、さらにこのお二人のことが大好きになりました。

前段が長くなってしまいましたが、今回はそのお二人のこともご紹介させてください。

地元への想いから立ち上がった「キナリ舎」

44.jpg 127.53 KB西島 由紀子さん
1982年  静岡県沼津市、原生まれ大岡育ち。
地元を盛り上げるイベント「0022 Local Market」に運営として参加したことをきっかけに、居住する大岡団地再生を目指して活動中。団地の広場を利用した「ダンチマルシェ」イベントは3年間で10回開催。住民ら4人でグループ「キナリ舎」を立ち上げ、活気を取り戻そうと敷地内でマルシェを開いたり、住民に活動内容を説明したりと様々なイベントを企画、グループ代表として仲間を引っ張る。( Instagram


349622433_3510112009205297_7345209890584227239_n.jpg 250.22 KB山崎 友也さん
1987年  静岡県沼津市、大岡生まれ大岡育ち。
外資系保険会社で保険コンサルタントとして過ごすなか、沼津市のリノベーションまちづくりの活動に多く参加する。その中で「これから息子が育つ街に成長のきっかけの場を増やしたい」と感じ、「0022 Local Market」を開催。その後も仲間たちと団地再生を目指す企画などを行っていくうちに、「暮らしを作る」ということに興味を持ち、2021年10月より個人事業主として独立し「キナリ舎」の共同立ち上げから参画。( Instagram


SS 3739.png 393.01 KB西島さんも山崎さんも沼津出身の方で、共にご自身それぞれの見える風景での危機感から、地元での活動を個別にスタートされました。

まずは山崎さんが、2019年に「0022 Local Market」という商品販売や催しを楽しむマルシェの主催を担当し、そのイベントに西島さんも運営側で参加。

この小さくて大きい最初の一歩が「キナリ舎」の設立と活動に繋がっていくことに。

山崎さんは、改めて地元沼津に目を向けるきっかけとなり、そこから様々な企画に関わることになりました。「自身も活動に参加しながら、地域や活動する人を応援する事業を行いたい。そして、これから息子が育つ街に成長のきっかけの場を増やしたい」という強い想いで、具体的な事業もあえて定めず保険会社を退職し、独立する決断にいたります。

西島さんは、祖父母から引き継いだ沼津にある、築50年超え・総戸数252の『大岡団地』に10年以上住まわれていたのですが、団地からどんどん人が…とくに子どもが減っていくことに危機感を覚えていったそうです。

だからといって、団地の住民全員がそういう気持ちになっている訳ではない…という不安や葛藤を意識しながら、住民の方と何度も丁寧にやりとりを重ねてオリジナルの団地マルシェイベントの開催を進められました。

SS 3735.png 3.33 MBその後、さまざまなイベントを通し、意気投合した他の2人のメンバーを加えて「キナリ舎」を設立、2022年の6月に法人化され、その活動の輪を広げていかれています。

例えば、地元カップルの要望に答え、沼津の中心を流れる狩野川沿いでの手作りウェディングパーティーのプロデュースや団地リノベーション&家守事業、さらにはフリーランスコミュニティ作り、移住前から定住サポート企画など、その内容は幅広くもとてもユニークでワクワクするものばかり。今後の活動も本当に楽しみです。

ちなみに、「キナリ舎」という名の由来は「周りの方のありのままの生活が実りますようにという想い」から名付けたそう(ステキすぎる)。
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なんのためにやるのか。そして、応援したい気持ちの大切さ

これらの解説を進められていくなかで気づいたことがあります。

フリーランス向けや起業家向けイベントに多い、成功のハウツーや定量的な結果をいっさい話されず、なにを大切にし、どう変化していったのかを丁寧に、丁寧に説明されていたんです。そして、そのひとつひとつの風景が、移住したての私にも見えてくるような、そんな時間にように感じられたんです。

そのイベントのなかで私からひとつ質問させていただきました。

質問
“こういう活動を進めていくなかで、いろんな方と関わることになると思います。

今回挙げられていたさまざまな企画進行のなかでも、もちろん辛かったり大変なところはあったとは思いますが、コンセプト……というか信念をもちつつ、信頼を得ながら実行されておられるように感じましたが、この実行に導くまで意識されていることはなんでしょうか?

山崎さん
「企画を進めて迷ったときに「なんのためにやるのか」に振り返ること、そして、ひとりひとりと向き合って、みんなと本当に「おもしろい」気持ちを持てているかを意識しています。

キーワードは「応援」ですかね…。よく人脈作りっていうじゃないですか、僕あのワードは苦手なんです。コミュニティっていうはやり言葉も。もっといえば正直、関わる前なんて沼津はおもしろくないって思ってしまっていました。だけど、地域創生!とかの流行りごとではない、それぞれが自分ごとされた「やりたいこと」や日常から困りごとを持っている人の目の前にいたら、覚悟を感じられるかどうかなんかも一緒に意識しています。」

西島さん
「私は子どもが生まれて、子育てのあとに時間ができたのが活動のきっかけです。やまちゃん(山崎さん)が企画しているイベントに参加したときに、とにかく準備めっちゃがんばって大変だったけど、当日がとても楽しかったんです。こういうことが団地でもできればなって。

わたしが住んでいる「大岡団地」は、祖父母から引き継ぎました。おばあちゃんが住んでいた頃のように、子供が100人以上いて活気にあふれていた団地に戻したい気持ちが強いんです。それ以外の企画でも、やっぱり色んな人が活気づけるように応援したい気持ちを大切にしています。


心から感動しました。ビジネス本などの流行りを追いかけず、媚びる気持ちがまったくない。「なんのためにそれをやるのか」を徹底し、頑張る人への応援したい気持ちを大切にし、実直に沼津への愛を感じました。

そして、お二人とキナリ舎や関わっている方々を応援したいと素直に思えました。そう、応援したいとしきりに言っていた二人をみて、私も応援したいと思えたんです。


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出会おうとすることよりも、出会いを大切にするということ

今回、私が言いたいのは「こういう人に会いましょう、繋がりましょう」ということでは決してありません。

出会った人との縁や繋がりから、心から信頼したい、信頼できるかが大切だと思います。

私の場合、その後も別のイベントに参加させていただいたり、このお二人と関わりある方とも交流させていただきました。そこで聞いたさまざまなお話から、キナリ舎の活動を自分が体で体験することによって、徐々に応援したいという気持ちが増していったんです。

一過性ではない、この「増していく」気持ちがとても大切で、それが「この町いいな」と思える理由にもつながるんだと確信しました。

もうひとつ大切なことは「自然体の自分」です。

たくさん人と関わりたい人もいれば、ときどき関わりたい人という人もいます。

このように「人」との距離感はそれぞれであるはずなので、その波長というものも大切にしています。

例えば、この人との関係を深めたいから、何度も会おうとしたり、無理して参加しようとする。だけど本当は疲れてしまう……。

そうすると、どうでしょう。

せっかく心安らかに安定した生活がしたいはずで移住したのに、なんだか気を遣うような生活になってしまいそうですよね。

※ でも、出会いたいなら出会う場に参加することも大切なので、そこは自分の無理のないペースでイベントを探したり、いろんなスポットに向かえればいいかな。ちょっと矛盾するし、当たり前のことだけど、大切なことなので蛇足で書き残しておきます。




とはいえ、沼津の人と繋がりたいという気持ちがなかったのかといえば嘘になるので、「小さな希望」を持つことも大切だと思います。大きな希望ではなく、小さな希望。

この「小さな希望」とともに「出会い」と「自然体の自分」を大切にすれば、その町をもっと魅力的に感じる。

私の場合、移住して3ヶ月で沼津の歴史やお店はもちろん、その後も素敵な人々にたくさん出会うことができました。

これが、わたしの「この町いいなの見つけ方」

みなさんはいかがですか?


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