前回「地方への移住の理由は大したことではない」という『理由』を書きました。



しかし、移住先のこと…つまり「自分が生活する町」をどれだけ気に入れるのか、ということは長く住み続けるうえでとても大切だと思います。

「なぜ沼津にしたんですか?」「大阪には戻らなかったの?」「東京のほうが便利じゃない?」と県内外さまざまな方から質問いただけることが多く、自分にとっては振り返りができるいいきっかけなので、移住先に『沼津を選んだ理由』を書いてみたいと思います。


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まず自分にとっての「ちょうどいい田舎」を具体化した

1982年生まれ、現在41歳の私は、生まれ育った大阪の大阪市に37年間、そのあと転職のために3年間東京・日本橋に住みました。言わずもがな両方とも交通の便もよく、全国トップクラスで人口が多い大都市です。

しかし、どうしても愛着がわかず「ちょうどいい田舎に住みたい」という漠然とした憧れがありました。でもその「ちょうどいい」というのは、どんな空気感、風景、規模、住環境で具体的になにかを知るために、いろんな町を見て知って体験する必要がある。そのために、できるだけ各地を長期で滞在できる多拠点生活のサブスクサービスを活用し、日本全国を3ヶ月旅をしながら具体化していきました。






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スーパーマーケット、図書館、役所に訪れる

観光名所よりも宿泊先と町のマップを見ては、必ず訪れていたところがあります。根拠はなかったのですが、スーパー・図書館・役所は明確に地域によって個性があったと感じたため、この3つにはできるだけ訪れるようにしました。

まずスーパーでは、地域の名産や美味しいものがどれだけあるかや力をいれているか、またどういう住民の方がいるのかを見るため。

たとえば、鹿児島だと生食用の新鮮な鳥があったり、沖縄では沖縄そばの種類が充実していたり。海側だと新鮮な魚がそのまま捌かれず陳列されていたり、山側では充実したきのこコーナーがあったりと……、地域性を感じつつ、地産地消の意識まで感じられました。住む場所の近くにスーパーがあるかどうかではなく、普段の生活感を味わえる特別な時間だったと思います。

あと、栄えた都会のスーパーでは、整った服装の方が多く、ローカルであればあるほどラフで、店内で挨拶し合う風景を見ることができます。それが、なんの参考になるのかと言われれば困るのですが、地の空気を感じられたことがとても良かったです。


図書館も、自治体が運営している図書館では、書籍がどれほど充実しているかはもちろん、私設図書館が活気づいているエリアはその地域の子どもが元気に遊んでいたり、コミュニティ化していることろがあったりと、街を映す鏡のように感じられました

たとえば、沖縄の恩納村文化情報センター内にある図書館は老若男女の方が過ごされていて、設備も整っており、恩納村の歴史もわかるように工夫されていました。こういう地域はなぜか交流の活発さと活気を感じることが多かったんです。


最後にベタですが、役所。地域の情報を知るためはもちろんなのですが、移住の窓口があるか、またどれくらい熱量があるのかのお話を聞くようにしました。移住希望者用の専用職員の方の熱量(そもそも、そういう方がいないところもあります)、役所が作っているパンフレットから得られる情報も貴重ではあるのですが、その窓口に民間のサービスがどれくらい揃っているかも個人的にはポイントだと思いました。

ある地域では、さまざまなコミュニティを紹介しているコワーキングスペースのパンフ、地域の町会が作ったガイドブック、おすすめグルメのパンレットまでいただいたとき「あ、ここは自治体が民間と連携しているんだろうな」という安心感がありました。

ちなみに私が移り住んだ沼津でもこの体験をして、後日知り合った方からも「あ、あの役所の○○さんね」というぐらい市役所の窓口の方が近い存在であって、力をちゃんといれている地域なんだなと安心できました。



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風景と環境の重要性にも気づく

その町の主なアクセスはどういうものがあるか、駅近がいいのか、駅から遠いほうがいいのか、山・海・川・平地など、どういう自然がどれくらいあるといいのか、気候はどんな感じなのか、というのを自転車や徒歩でいろいろ地道に回っていました。

で、本当に驚いたことだったんですが、「なんとなく海の近くがいいな」と思っていたことが「絶対、静かな海の近くに住みたい」という願望に変わりました

なぜかはわかりません。

無理やり理由を探すとすれば、自分の両親の故郷が鞆の浦という海に囲まれた街だったということかもしれません。とにかく、海の近くの候補地を何度も選びたくなり、何度も静かな海に癒やされたので、移住したときに散歩できたら安らかな気分で過ごせるだろうなと思えたのです。

移住先に風景なんてあんまり優先度高くないだろうなって思っていたのですが、「長く住みたい」という要素が加わった瞬間、自分にとって風景はとても大切な要素でした。






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言語化できた自分にとった「ちょうどいい田舎」

あえて相対的にさまざまな町を比較しながら、さまざまな体験を経て、自分の「ちょうどいい田舎」の具体化・言語化ができました。

【必須】

・波が穏やかな海の近くが好き
・降雨量が少ない、温暖な気候
・新鮮な魚介が多く食べられる
・高いビルがなく、空を広く感じられる
・人口5〜20万人規模の都市で自然が比較的近くで感じられる
・車がなくても生活できる
・自転車圏内に大きいショッピングモールがある
・地域の方と挨拶ができるほどよい距離感

【希望】
・レンタカーで自然あふれるスポットが近い
・コーヒー、整体、美容室など自分の好みのお店ができればあれば嬉しい
・地域を盛り上げていて、移住者と地元の方が共に頑張っておられる土地

西日本では、児島・尾道・柳川・名護・鞆の浦(福山)とたくさん候補が上がったのですが、東京オフィスへの出勤はなかなかに遠い距離……なので、関東圏で改めて探すことにしました。

しかし、関東エリアにはなかなか穏やかな海がなく苦戦……。改めて地図を眺めたとき、直感で候補にしたのが一度も訪れたことがない「沼津」でした。

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入江の位置にあり太平洋の波を直接的に当たらない場所も多そう。かつ、会社にも通勤可能圏内。きっと南側にいけばいくほど穏やかな土地が広がっているだろうと予想し、すぐに賃貸物件の予約をいれました。

するとたまたまいい物件に巡り合うだけではなく、タクシーの運転手の方におすすめの地元スーパーや海岸にも連れて行ってもらったり、地域のことを教えてもらい【必須】の要素はほぼ間違いなく当てはまるだろうと思えましたし、実際ドンピシャでした。

最後に背中を押してくれたのは沼津市役所の担当の方がなにげなく発した「沼津はちょうどいい田舎だと本当に思います」という言葉です。私からなにも言っていなかったのでマジで運命を感じてしまいました。ここまで当てはまっていて、失敗したら仕方ないかな、とも(笑)。







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実は「人」を一番の理由に移住はしないことを意識した

移住先を探していたことを旅の話のネタにさせていただいたこともあり、たくさんの土地で「ウチの町に移住しなよ!」と誘っていただきました。本当に魅力的な場所ばかりでたくさん悩んだのに、誘っていただいた町以外を私は選びました(笑)。

しかし、沼津を選ぶことができたのは、みなさんとの縁やたくさんの町での経験のおかげでした。この場をもって改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。また、お土産話をもってみなさんの町にお伺いできればと思っています。

で、今回もっとも言いたいことでもあるのですが、「人との出会いやつながり」を決して一番の理由にしない、ということを大切にしました。

さっき書いた「縁」はなんだよ、と感じられるかもしれませんが、長く住むときになにかしら人とのトラブルがあったり、逆にその対象の方が遠くにいってしまうことになれば「一番の理由」がなくなってしまいます。もちろん、地域自体も変化していきますが、人の関係よりも変わりづらいものだと考えています。

まずはハードから、と言ったらいいでしょうか。自分は自分の地元にどこか愛着をもてないことが気がかりだったので、誰かに頼らず、好きになれる要素を大切にしてみたいという想いが大きいことからの意識。

今後、この考えがどうなるかはわかりませんが、実験的に長期間、人生をかけて楽しんでみようと思います。

結果的に現状はとても楽しく、穏やかに沼津で過ごせています。移住したときよりももっともっと沼津の「この町いいな」を見つけられていまし、特に今回で書けなかったたくさんの「この町もっといいな」と思える「人」との出会いもあったので、続きは次回書きます。

▼※書きました!▼



地元住民の方にとっては当たり前であるからこそ気づきにくいことで、移住先を具体的に考えたい方にとって、参考になれば嬉しいです。

最後に、途中で紹介させていただいた、多拠点生活のサブスクサービス「ADDress」で取材もしていただいた記事も、もし移住に興味がある方にとっては参考になると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。


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