【WaseiSalonメンバーインタビュー企画 No.1 長濱裕作さん 】

時間を取り戻す宿ーミヒャエル・エンデ著の『モモ』の世界観をコンセプトとして創られた「どこにもない家」。運営するのは、フリーランスライターで、コミュニティスペースの運営を行っている"ハマさん"こと長濱裕作(はがはまゆうさく)さん。
ハマさんも、Wasei Salonの大切なメンバーのお一人です。

ハマさんは、12年勤めた会社を辞めてフリーランスとして独立すると同時に静岡県掛川市にUターンし、2019年8月にゲストハウス「どこにもない家」を開業しました。

今回は、Wasei Salonの広報部メンバーである美月が、広報部活動の一環として、「働き方」「暮らし方」をも含めた「これからの生き方」をハマさんにインタビューさせて頂きました。

なぜハマさんだったのか。

それはハマさんの暮らしや働き方が、私にとっての理想像であり、かつあまりにも遠いところにいるよう感じたから。

仕事も暮らしも欲張りたい。
ワークとライフのバランスをとるのではなくて、ワークもライフも充実させたい。


このヒントを探るべく、「どこにもない家」を訪れました。


〈聞き手/ライター/編集=渡邊美月〉
〈写真=河合建〉


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ー前編では、フリーランスへの歩みを中心にお伺いしてきました。後編では、ハマさんの暮らし、生き方についてお伺いしていきます。



【どんな生き方をしたいかが起点となり、いつの間にかそれが大切な軸になっていった】
ーハマさんは、キャリアだけでなく、暮らしにもこだわっているようにお見受けしますがいかがですか。
僕は、生き方から考えて今の仕事も暮らしも実現してきました。
フリーランスとして独立、ゲストハウスをオープンする前に、こういう生活できたらいいなというイメージが今実現していることに僕自身も驚いているし、今の生活は楽しくてたまらない。仕事は忙しいのですが、毎日「楽しい」ってつぶやいていると妻に言われました(笑)。
僕が目指していた生き方が、「半農半X(※前編参照)」なんですが、実際に農的な生活をはじめてからも「これ本当にやっていけんのかな」って不安は消えずに共にありました。
始めたころは正直不安だったけれど、継続しているうちにこの「半農半X」という生き方が
ゆるぎない軸になっていったのです。

ー不安からゆるぎないモノに移り変わっていくのには、何がそうさせたのでしょうか。
きっかけはゲストハウスをオープンしたことですね。
ゲストハウスオープン前に、ライターの仕事を一気に減らしてゲストハウスの運営に注力したんです。ライターという比重の大きな軸を手放すことで収入も減ったし、手放すことへの恐怖が大きかったけれど、勇気をもって手放してみたらそれ以上に、新しい出逢いや出来事が舞い込んできました。



【論理的に考えたら「間違った選択をしている」と思うけれど、それがいい。】
ーゲストハウス経営と聞くと、相当念入りな準備をされたように思います。経営についてはどのようにお考えですか。
僕たちにとって、ゲストハウスはあくまで生活の一部として捉えています。外から見ると「経営している」と思われるのですが、僕たちはマーケティングとか、市場分析とか、ビジネス観点から考えるようないわゆる「経営」はしていないんですよね。
むしろそういったビジネス観点とは逆視点で概要を考えてきました。「まず、自分たちはどうしたいのか」を起点置き、その結果のひとつの道がゲストハウス経営だっただけで。一方で、最終的なビジネス視点、例えば価格設定などは苦手とする部分ですが、起点を忘れず悩みながら決めてきました。
素泊まりで8000円は決して安くない価格帯だと思っています。来客を増やしたいのであれば価格を下げれば良いのかもしれませんが、僕らは値段を下げてただたくさんの人がくればいいとは思っていないんですよね。それよりも、コンセプトや僕たちが大事にしていることに共感してくださる方に来て頂きたいと願っています。

ーとはいえ自分起点でビジネスにするとなると、どうしても経済的な考慮は外せないと思いますが、「お金」についての考え方を聞かせてください。
もちろん、家族もいるし経済的なことも考慮しなければならないのでたくさん悩みましたね。僕も2年くらいは踏み出せずにいました。自分起点でビジネスをやるって、論理的に考えたら「間違った選択をしている」んですよね。会社員時代は年収800万くらいあったけれど、フリーランスになったら0になる。駆け出しフリーランスの頃は、やっぱり不安でした。
なんせ僕、会社員時代はパチンコ業界で勤務していて、「じゃんじゃんばりばり~」とか言ってましたからね(笑)
過去のキャリアから市場価値を高めるという観点で考えるならば、異業種(ライター)への挑戦は、明らかに間違った選択をしている。


ーじゃんじゃんばりばり(笑)。現在のハマさんからは想像できないお姿です。
でしょ(笑)。
未経験でも自分が好きなことを選択した結果、幸いなことにライターでもある程度食べていけるようにはなりました。そしたら今度は、ライターの自分以外が想像できなくなっていって。
ゲストハウス開業についても、ライターが軌道に乗ってからは特に、ライターとしての強みが自分の強みだと思い込んでいました。むしろ自分にはそれしかない、と。
一方で、家に遊びに来てくださる周囲の人からは「なんでゲストハウスやらないの?」「やったらいいじゃん」と言われることが増え、ライターとしての僕よりも「築140年の古民家」の方が優れていると気が付いたんです。それで開業に踏み切りましたね。


ー「論理だけでない選択」の大切さを痛感しますね。
資産はお金だけじゃないと考えています。僕だったら、妻の実家が近くにあって、いつでもヘルプできるという関係性で年収150万くらい、畑があって野菜が育つことは年間36万くらい、DIYすれば50万など換算して、資産を捉えています。
さらにいざとたったら自分のことを助けてくれる大事な友人たちも含めると、どんどん豊かになっていく。そう考えると僕の資産はトータル1億くらいはあると思っています。

ー見えない資産も可視化していくと、不安は減っていくように思いますね。
今ももちろん不安は感じているし、その総量は昔と変わらないけれど、今は意識をどこに向けていくかが大事だと思っています。
相対的にその不安は「ある」もので無くしたり、減らしたりすることはできないから、その不安を抱えながらよりよい未来を創るために何をしたらいいかを考えていくようにしています。
不安以外の楽しみや喜びが増えたからこそ、不安が気にならなくなっていく。だからこそ、その楽しみや喜びを増やすための行動をすることを意識して過ごしています。


【自分の身近な誰かを幸せにすることで、幸せになった人たちがまたその周囲を照らす。その循環が起きることで、世界が幸せになる。】

ーハマさんが思う、暮らしと働くの関係性はなんですか。
「暮らし=働く」。
暮らしと働くはイコールの関係だと思っています。
働くってお金をもらう行為じゃなくて、価値を届けるものとして捉えています。その対価として、お金を受け取っている。お金はひとつの目安であり目印でしかないから、それを目的にする必要はないと思います。
僕は、自分たちの創りたい価値をつくっていく。そしてその総量を増やしていくことが理想的だなと感じています。
それに、暮らしと働くを分けてしまうとパフォーマンスがさがってしまうと思っている。いわゆる、コスパが悪い(笑)
例えば、誰かと雑談していても、その中からあたらしいプロダクトや価値が生まれると思って接していますね。会社員時代にはこの感覚はまったくありませんでした。



ーハマさんは、これからどんな生き方をしていきたいですか。
「一燈照隅 万燈照国」という言葉が好きです。
意味は、「一人ひとりが自分の身近の一隅を照らす。 それだけではちいさい灯りかもしれないが、 その一隅を照らす人が増えていき、 万の灯りとなれば、 国全体を照らすことができる」。

僕もこの考えに共感しています。自分の身近な誰かを幸せにすることで、幸せになった人たちがまたその周囲を照らす。その循環が起きることで、世界が幸せになる。
実感として、僕は自分の照らせる範囲が拡がってきていると感じています。家族から、地域へ。それは僕にとってすごく自然な拡がりなんです。今後もそんなかたちで、僕の照らせる範囲は拡がっていくんだろうなと思っています。


<編集後記>
今回ハマさんのインタビューを通じて、改めて自分はどんな生き方をしていきたいか、価値の置き所を内省する時間となりました。
「フリーランスは自由で楽しそう」そんなイメージがある方も多いかもしれません。それはある意味では正しいし、ある意味では間違っている。
正解がないこの時代に、私たちは何を大切にし、どう生きていくのか。
時計のない「どこにもない家」は、そんな悩みを抱える方に自分とゆっくり向き合う時間を創ってくれる、そんな場所でした。

●どこにもない家




◎ハマさんプロフィール
2017年 退職。田舎フリーランス養成講座へ参加。フリーライターとして独立。
2018年 家族とともに掛川へUターン。
2019年 ランサーズ「新しい働き方LAB」加入。ゲストハウス「どこにもない家」開業。WaseiSalon加入。NPO法人かけがわランド・バンク加入。
2020年 静岡のフリーランスコミュニティ「SHIZUFREE」立ち上げ。

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