「これからの”働く”を考える」をテーマに活動するWasei Salonで、新しいインタビュー企画が始まりました。
企画名は「わたしの一歩」。転職や独立といった大きな一歩から、一見わかりにくいけれど自分の中に確かにある小さな一歩まで、さまざまな歩幅でメンバーの「わたしの一歩」を紹介していきます。
さて、第一弾である今回のお相手は、採用支援の会社でフルリモートで働きながらコーチングと選書のサービス を行うAyaさんです。筆者が会社を辞めて複業を始めるタイミングということもあり、「複業としてコーチングを始める」という一歩に焦点をしぼり、お話を伺いました。
Aya
北海道で生まれ育ち、北海道大学を卒業。大手金融機関での勤務を経て、パートナーの転勤で渡米。ダイバーシティの向上をミッションとしたNPO法人で活動。帰国後は事業会社の人事として働きながら、Wasei Salonでの関わりをきっかけに認定コーチ資格を取得。現在はフルリモートで採用支援の業務に携わりながら、複業でコーチングと選書を行う。
自分が大事にしたいことを実現できる場所は、会社以外にもあるのかもしれない
ーーAyaさんが初めてコーチングを受けたのはいつ頃ですか?
24歳のときですね。当時は大企業の総合職として働いていました。
「弱みを見せてはいけない、上司の思う通りに動かなければ」という気持ちが強く、自分の感情をなるべく封印して過ごしていたんですよ。そうしているうちに、土曜日の朝になると涙が止まらなくなってしまって。
似たような経験をされた人生の先輩にお話を聞けないかなと思って、初めてコーチングを受けたんです。
ーーコーチングを受けてみてどうでしたか?
自分の本当に思っていることを伝えられる場所ができたおかげで、自分の感じていることはちゃんと大事にしていいんだなと安心感を覚えました。
セッションの回数を重ね、自分の気持ちと向き合っていくうちに、上司とのコミュニケーションでも閉じていた扉を少しずつ開くことができました。「もう仕事を続けられないかもしれない」という状況から、なんとか持ちこたえて、次の部署異動を経て楽しく働けるところまで変化しました。
ーーその影響でコーチングを始めたんですか?
いえ、当時は自分でコーチングを始めるとは思ってもいなかったです。
ーー他にきっかけがあったんですね。
その時から9年後くらいですかね。前職で事業会社の人事として働いていた頃です。
没頭して取り組んでいた新卒採用や新人研修が終わってぽっかりと時間ができたときに、「これからどうキャリアを築いていったらいいんだろう。自分が大事にしたいことは会社の場だけで実現できるのかな」とモヤモヤした気持ちが渦巻いてきてしまって。
その時にもう一度コーチングを受けたんです。改めて自分の気持ちにじっくりと向き合い、言葉にできるコーチングの場の力を感じました。
ーー2度目のコーチングでは、自分も始めようと思ったのはなぜですか?
初めてコーチングを受けた時とは違って人事というポジションで働いていたので、「話を聞いてほしい」という新入社員と関わる機会が多かったんです。
それと、これまで色々な仕事や出会いを通して「人との関わりを通じて人は変われるんだ」と身を持って感じていたので、「人事というポジションにいる今、自分もそんな関わり方ができるタイミングかもしれない」と思ったからですかね。
最初は、コーチングを複業にするつもりはなかった
実は、複業としてコーチングでお金をいただけると思っていなかったんです。最初は会社の若いメンバーの役に立てたらいいなって。
ーー会社のメンバーの役に立とうとした結果、複業にもなっていった......
そうなんです。それもWasei Salonメンバーのみなさんのおかげだと思っています。
ーーどうしてですか?
まだコーチングスクールに通う前に本を読みながら学んでいたら、長田さん(Wasei Salonコミュニティマネージャー)が私のコーチングを受けてくださったんです。人生で初めてのコーチングでした。応援していただいている気持ちを感じて嬉しかったですね。
他にも、100ポイントマーケット(※)という企画が始まったとき、コーチングの募集をしてみたんです。メンバーのみなさんがコーチングを受けてくださり、感想をSNSでシェアしてくださったので、それからWasei Salonの外にも広がってコーチングの依頼が増えていったんです。
※100ポイントマーケット:Wasei Salonメンバーが持っているスキル・モノを、Wasei Salon内で使える100ポイントと交換できる企画。
ーーコーチングの依頼が増えることで、不安はありませんでしたか?
自分で考えたサービスでお金をいただけるのか不安に思っていました。そこで、最初はセッションの対価をお金ではなく本でいただく形にしていたんです。
その時は次々と本が届いて嬉しかったですね。対価としてお金をいただくことの不安を100ポイントマーケットや本をいただく過程で慣らしていけたのかなと思います。
ーーすごく素敵な循環ですね。今はどうされているんですか?
2020年の9月頃に、会社で複業申請が通ったタイミングでお金をいただく形に切り替えようと決めました。それまでの経験を通じて、クライアントさんに満足いただけているのかなと自信もついてきたので。
ーーこれまで順風満帆な印象を受けました。大変だったこともありましたか?
コーチングスクールを修了したタイミングで、「一旦資格は取り終わっているけれど、コーチングの周辺領域は色々な分野があって、どこから勉強していけばいいんだろう」と悩んでいました。周りのコーチの方はそれぞれ色々なことを勉強されていますし...
ーーそれはどう乗り越えていったのですか?
「誰かがいいと言っていることを闇雲に勉強するのは違うな」と思い、まずはコーチングに対する考え方が素敵だと感じた人の講座を受けることにしました。
その人がいいなと思った理由を言語化するのは難しいんですけど、「なんとなく好きだな」と思って受けたのがすごく正解で。そこで一緒に学んだ仲間と今もお付き合いが続いていますし、これから自分がさらに何を勉強したいのかが見つかってきたんです。
家族の話をちゃんと聞きたいと思えているか。いいバランスで働けているかの判断基準
複業の良さは、自分が一番いいと思っているものを好きなように形にできることです。組織に属していると、組織の方針や自分の役割の範囲により、やりたいことがあってもすぐには形にできないこともありますよね。
私の場合、複業は自分でサービスを作っているので「こうすればよりよくなりそう」と気づいたことがあればすぐに自由に取り入れられるところがいいなと思っています。
ーー逆に大変なこともありますか?複業と聞くと忙しそうな印象も受けるのですが...
そうですね。9時から19時くらいまで採用支援のお仕事をして、その後20時からセッションをするという日もあるので、忙しいと思うこともあります。でも、常にバランスを保つことを意識していて、無理しすぎないようにしています。
ーーいいバランスかどうかはどう判断されていますか?
まずは、家族の話をちゃんと聞きたいと思えているかどうかですね。コーチングセッションの予定を詰めすぎて、実家に電話をするのが億劫になってしまったり、一緒に暮らしている夫の話を聞き流してしまったことがあったんですよ。
それに気づいた時にハッとして。自分にとって一番大事な人のことを大事にできた上での複業だと思うので、一つの基準として大切にしています。
また、コーチングセッションの場では、クライアントさんが日常から少し離れてご自身の気持ちを丁寧に感じられる場をお届けしたいと考えているので、私自身もそういった余白の時間を大切にしています。
コーチとしてのあり方を探求する対話会を開いていきたい
そうですね、今学んでいるカウンセリング領域のことも活かしながら、より良い形でセッションをお届けしていきたいです。
また、国際コーチング連盟が定める世界基準のコーチングの資格があるのですが、もうすぐその資格を取得できる予定です。国際コーチング連盟の倫理規定やコーチとしての能力要件が素晴らしいなと思っているので、それをテーマに話し合える対話会も開いていきたいです。
ーーこれまでのお話を伺っていて、Ayaさんは人と一緒に何かを企画することが得意な印象を受けました。
Wasei Salonメンバーのおかげだと思います。
何気なくつぶやいたことに対して長田さんが「いいですね」と言ってくださって形になった企画もありますし、サロン内でのコーチング勉強会も、若月さん(Wasei Salonコミュニティマネージャー)が「一緒にやりませんか」と声をかけてくださったおかげで実現しました。私1人だったらこんなに色々企画できていなかったと思います。
「わたしの一歩」を踏み出すときに触れてきたもの
アメリカに滞在していた頃、NPO法人に携わるきっかけをいただくなど、とてもお世話になった方にインタビューをさせていただきました。その時に記事として残した文章を何度も読み返して力をもらってきましたね。
ーーAyaさんにとって、その記事はどんな存在ですか?
インタビューさせていただいたのは、アメリカの大企業で働きながら、毎週200〜300人が参加するヨガイベントを立ち上げられた方なんです。
未経験のことに取り組む時つい不安を感じてしまいがちですが、「未知である」ということは裏返せば色々な可能性を秘めたワクワクすることなんだ、という新しい視点を教えていただきました。
このインタビューを通して、私自身も物事に向き合う姿勢が変わったと思います。
ーー今回のインタビュー記事も、そのような記事にできたら嬉しいなと思いました。
そうですね。読んでくださった方の背中を少しでも押すことができたら、とても嬉しいです。
編集後記
「家族の話をちゃんと聞きたいと思えるか」
この言葉を聞いた時、ハッとしました。大半の時間を仕事に費やし、家族や友人など大切な人との時間をすぐに疎かにしてしまうためです。
そして、この言葉が発されるまでの時間の短さも印象的でした。おそらく、自分や他人との対話を繰り返すなかで、徐々にAyaさんに浸透し、現在はもう根を張っている考え方なんでしょう。
今、自分にそのような言葉はあるだろうか。
より良く仕事をするために、もっと自分を知っていきたいと思わせてくれる素敵な時間でした。この記事が、複業を始めたい人や新しい複業の形を模索している人に届きますように。
執筆:張本舜奎
写真:長田涼