2019年の12月から始めた、無拠点生活(ホテル暮らし)をついに終了し、東京都心にまた定住することに決めました。

奇しくも、コロナが始まるほんの数ヶ月前から、無拠点生活を始めて、そこからは日本全国を旅するように約4年間生きてきました。

とはいえ、コロナも収束に向かい、ドンドン観光地にもひとが戻りつつある。

いま考えると、2020年の景色は嘘みたいな状況だけれども、旅好きにとっては、本当に夢のような4年間でした。

さて、今日は、このあたりが潮時だと思った理由について、このブログの中でも書き残しておきたいと思います。

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まず、単純にここ半年ぐらいで一気に費用対効果が悪くなったことは大きいです。

どこに行っても、大抵の場合は5000円以下の金額で泊まれていたのに、今はそれが当たり前のように1万円を超えてきます。(2020〜21年はドーミーイン系列でも、軒並みどこでも3000円代でした。今考えるとありえない破格)

そして、観光地だってどこへ行ってもガラガラだったのに、今はどこに行っても激混みです。

客層も悪化の一歩を辿っていて、みんなが写真や動画を撮るために長い間ベストポジションにとどまっているような状態になっています。

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ちなみに、これはちょっとした雑学なんですが、地価の安い田舎になればなるほど、ホテルは空いていて安いと思われがちなんですが、むしろローカルになればなるほど、宿の数の供給量が全然足りていないため、今のような状況だと意外と高い。

たとえば、僕は来週末から、出張で愛媛県の今治に行く予定なのですが、既に週末は宿が取れない状態で、ビジネスホテルでも数万円するというような状況です。

地価が高いわけでもないのに、このような状況は、日本全国で今あたりまえのように起きています。

他にも、たとえば、僕の地元の北海道函館市は観光地としても有名ですが、その割に宿の数はあまり増えてはいません。

だから、平日でも毎日当たり前のように宿泊費は1万円を超えてくるし、週末は何の変哲もないビジネスホテルでも、当たり前のように数万円という価格帯だったりします。

で、意外だと思われるかもしれないですが、一番宿泊費が安いエリアはたぶん、名古屋や大阪など、大都市圏かつビジネスホテルが非常に多いエリアで、かつ観光する所も多くはないところなんですよね。

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さて、話をもとに戻すと、「絶対に行くべきお勧めの地域は、どこですか?」という話は、本当にこの4年間のあいだ無限に質問されてきました。

その質問の背後には、何か「絶対的な価値」があると思っているんだろうなあと思わされます。

でも、実際にはそうじゃないんですよね。

「5,000円で、このクオリティが体験できるなんてすごい…!」という感動があっても、1.5万〜2万円なら大したことないなと思うことは、十分にあり得る。

たとえば、これをわかりやすい話に喩えてみると、UNIQLOのヒートテックは1千円で、あのクオリティだからすごいわけで、1万円であのクオリティだったら、別に大したことがないというか、他にもアウトドアブランドのベースレイヤー(下着)なども比較対象になってくるから、別にすごくもなんともない。

で、観光というのもまったく同様の話で、観光は値段が一定のように思えて、仮想通貨もびっくりするぐらいにボラティリティが激しい。そんなダイナミックプライシングの極みが観光なわけです。

需要があれば、どこまでも青天井で価格が跳ね上がっていく。

たとえば、横浜のみなとみらいのような場所は、平日は本当にガラガラなのに、週末は各種ライブイベントなどが目白押しなので、5倍から10倍近く価格が跳ね上がる。

ここもあくまで需要と供給の問題です。

だから、平日のみなとみらいは、横浜の情緒あふれる港町を観光したい人にとっては、価値は非常に高いと思いつつも、週末のみなとみらいは訪れるべきではない観光地ワースト5に入ることもあると思います。

ここを理解していないひとがあまりに多いなあと。何か絶対的で、客観的な価値があると思い込んでいる。

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で、この観点から考えると、ほとんどのローカルが、日本人の僕らには、もう行く価値がほとんどないような状態になってきているなあと思います。

不定期でバラまかれている旅行支援を活用して、やっとトントンぐらいじゃないでしょうか。

じゃあ、なぜ今、日本の各地が旅行で盛り上がってきているのか。

それは、これまでコロナで躊躇っていた日本人(主に貯蓄のある高齢者)が動き出したもそうですが、皆さんご存知のように、インバウンド観光客が急増しているからです。

つまり今、日本に来ている訪日外国人たちは、コロナ禍の僕らのような状況なわけですよね。

具体的には、円安の影響を受けて、日本があまりにも安く感じられてしまう。

さらに物価も日本人に合わせてグッと抑えられているので、僕らが、コロナ期間中に感じていたことがまさに今、外国人が感じているわけです。

世界単位で見たら、日本だけ旅行の大バーゲンセールが行われているような状態なわけですよね。このような状況下で日本に来ないわけがない。

つまり、今は、「安い!うまい!安全!」みたいな三要素揃っているところに、日本が大人気になっている理由があるということなんだと思います。

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もちろん、それでも政治家や為政者たちは「日本の魅力が世界の中でも圧倒的に優れているから彼らは日本に訪れているんだ」と主張しますが、もちろんそれもある一方で、何よりも安いことがやっぱりいちばん大きい。

これが円高になったり、物価も他国と同様にインフレになったりしたら、また全然違う印象を抱かれるはずなんですよね。

だからこそ、本当に大事なことは、その時であってもちゃんと日本に価値があると思ってもらえること。

「他国と比較して、相対的に安くてお得だから行く」ではなく「いくら払ってもでも、日本に行きたいから行く」にしないと意味がない。

そういう意味で、今はかなり意図的に仕組まれたボーナスタイムなわけです。

ここで、安さ目当てで来た外国人のハートをちゃんと掴まないと行けない。

実際、僕自身は定住生活を始めたと言いつつ、今月末にもまた石見銀山に訪れる予定があるのですが、それは多少高くても、お金には代えがたい価値がそこにはあると思うから、です。

この価値をいかにして作り出すのかが、本当に大事なことだと思います。

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今日の話は、いまインバウンドの観光ブームの熱に冒されているひとたちはまったくピンと来ないと思いますが、これはいくら強調しても強調しすぎだということはないと思っています。

安売りだけに躍起になって、外国人が落とすお金に群がって、コミュニティもつくらずに、ただただ誰でもおいでというような状況を作った地域は、感染症や自然災害、地政学的なリスクの危険性が生じたとき、一気にまた波が引いていく。

2020年初期の外出自粛が行われたときに、生き残った飲食店はファンがいて、潰れたところはお客様しかいなかったというあの話にも、とても良く似ている。

当時、さんざん痛い目にあったはずなのに、喉元過ぎれば熱さを忘れる。そしてあのときに借りた返さなければいけない借金もあるから、背に腹は代えられないということでもあるのだとは思います。

ちゃんとここを意識しているのは、本当に数えるほどの地域しかない。

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そういう意味でも、つくづく資本主義というのは残酷だなあと思います。

タピオカや、株式、仮想通貨などの金融資本のように、一通り荒稼ぎしたら立ち去るっていうことができるのなら、そのようなボーナスタイムやバブルにうまく乗っかれという論理でもいいのかもしれないけれど、

でも、ローカルはそうじゃないですよね。その土地の人間は、そこにそのあとも暮らし続けるわけです。

だとしたら、東京のエセコンサルみたいなひとたちにくれぐれも騙されないで欲しいなあと思います。そのひとたちは、またコロナのようなことが起きたら見放すに決まっているわけだから。

決して、彼らは責任を取らない。

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それは、日本全国に散らばるバブルの負の遺産が何よりも物語っている。

美しい山や海の景色の中に廃墟と化した瓦礫の残骸が無惨にも残っている。作り途中のものをバブルが弾けたからという理由で放置し、壊して後片付けをしようともしない。

30〜40年ほど前だから、事業責任者もまだまだ存命だと思うけれども、あくまで自分じゃなくて、会社がやったこととして後始末しないのは、本当に倫理観が低いなと言わざるを得ない。

くれぐれも、今回の観光やインバウンドのバブルにおいては、そんなふうにお金や人気に目をくらませずに、本当に大切なものは何かを考えて欲しい。

そうすることで巡り巡って結果として、お金も人気もついてくることは間違いないのだから。ぜひとも中長期目線を忘れずに。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。