最近、ひとと会うとほぼ必ず聞かれるのが、トークンエコノミーやFiNANCiEのお話です。

このような話題に一切興味がなさそうなひとであっても、僕が頻繁にこの話題についてネット上で言及しているので、やっぱり社交辞令としてこの話題を振ってくれるんですよね。(みんな優しい)

そんなときは「すみません、すぐにそういう胡散臭いものに反応してしまうもので。笑」と流すことが大半なんですが、それでも割と本気で知りたい素振りで踏み込んでくる物好きな人も一定数存在しています。

そういう人に対しては、こちらも本気で向き合うのが礼儀だと思うので、めちゃくちゃ真剣に話そうと思うのですが、そのような方々の気にしている点は主に2点。

ひとつは、トークンエコノミーの今後のゆくえ。そしてもう一つは鳥井は今後どうするのか、いつごろ自らが関わるトークンを発行するのか?のふたつです。

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前者は、日々このブログやVoicyで語っているので、そちらを見ていただいて、後者に関してはこれまで特に何も語っては来ませんでした。

もちろん、いつかは自らのトークンを発行する日はやってくると思っていますが、今はまだ意識的に手を出さないでいる局面でもあります。

その理由というのは、様々ありつつも大きな理由は2点あります。

まず1つ目は、既にこの荒野を開拓しているイノベーターの人たちがしっかりと存在していること。

だったらまずは、既に挑戦しているひとたちの背中を押して、そのひとたちのことを最大限に応援し、少しでもトークンエコノミーというジャンルにおける成功事例を増えて欲しいなと。まさに「お先にどうぞ」の精神です。

最初から分散しすぎてしまって結局どれもあまりうまくいかなかった場合が、一番もったいない。

だったら、今現在すでに本気で取り組んでいるひとたちの力に少しでもなれたらいいなあと思っています。それは金銭的な意味でも、情報発信的な意味でも、そうです。

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あと、今回のトークンエコノミーの善いところは応援した人間が、放置されない構造なのがいいなあと思います。

それは仕組み的にもそうですし、人間同士の認知的にもそう。つまり、全力で先行者を応援していても、それが報われるだろうと信じられて、トリクルダウン効果みたいなものを期待できるし、むしろみんなでこの荒れ果てた荒野を開拓している感じになれるのも本当に素晴らしいことだなあと思っています。

これにより、自分も焦ってすぐに参入しなければとは決して思わないで済むし、だから安心して既に挑戦している方々をしっかりと支援できる。

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で、2つ目の理由は、これは完全に自分の直感的な判断なんですが、もし自分がトークン発行者側やファウンダー側に回ったら、今実際に何が起きているのか、それを冷静に判断できなくなる気がしているからです。

僕がいま一番楽しく、そして自分がやるべきことだなあと思っているのは、何がここで起きているのか、それを正しく判断し、今後はどのような世界観が理想とされて展開されていくのかを中長期視点で考えて、それを言語化しながら、それをみなさんにお届けすること。

そのうえで、今強く思うのは、web3やトークンエコノミーの世界、その本質というのは、受け手側、消費者、コミュニティメンバーなど受動側の方々以上に、ファウンダー自身を一番ガラッと変えてしまうことだと僕は思っています。

ここが今日一番つよく強調したいポイントです。

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現在は、ファウンダーのひとたちが情報の発信源でもあるから、自己言及のようになってしまうために意外と誰も言及しないけれど、いちばん変化があるのは、僕はファウンダーの方々の意識の変化のほうだと思うんですよね。

それはもはや、ポジショントークとかのレベルや次元じゃない。

トークンが持つその引力たるや、凄まじいものがあるんだろうなあと。

それは決して悪いことではなくて、単純にものすごくファウンダーのみなさんが「善いひと」になっていくなあと思いながら眺めています。

しかも偽善的に振る舞っているとかそういうわけではなく、もともといい人だった性善説のような話でもなく、そうすることによって、本当の意味で「経済合理的な行動」につながるから、だと思うのです。

言い換えると、悪く振る舞うインセンティブが、ほとんどない。従来のビジネスにはここに結構なインセンティブがありました。良くも悪くも、出し抜く旨味みたいなものも間違いなく存在したんですよね。

でも、今回は本当にただただ「善い人」であることが、一番経済合理的な行動に結びつくような構造となっているなあと思います。

わかりやすくあえてこういう表現をすると、トークンエコノミーを本気でハックし、世界を変えるぐらいの変化や成果を得たいと願ったら圧倒的に善い人になるしかないというジレンマがここに存在している。

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そうすると、ファウンダー本人が発信する情報の内容自体も変わっていきます。

ゆえに、コミュニティに集まってくる人たちも大きく変わってくるし、集まったあとにも、そのひとたちのなかに潜在的に存在していた「善性」みたいなものがドンドンと引き出されていくようになる。

結果的に、善い人間関係がそこに生まれてくる。

もちろんこれは「にわとりが先か、たまごが先か」みたいな話ではあるのだけれども、でも僕はやっぱり、ファウンダーのみなさんの変化のほうが圧倒的に大きい気がしています。

コミュニティメンバーも相手を信頼すればするほど、善い結果が跳ね返ってくるから結果的にプラスのスパイラルが生まれてくる。

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このファウンダー側、つまりビジネスを仕掛ける側の人間性の変化せざるを得ない状況こそ、今回のweb3のいちばんの革新性のひとつでもあると思っています。

そして僕は、このような変化に対してものすごく大きな可能性を感じているし、これが何なのかを、ちゃんと観察したいんですよね。

で、それを理解するためには、自分自身がトークンを発行する主体になることは、まだあまり得策じゃないように感じています。

それよりも、どっちに対してもある程度、客観的な距離を保ちながら、その変化自体を観察していきたいフェーズ。

前にもお話したように、僕が一番望んでいるのは、自分のプロジェクトや企画、商品が世の中で広く受け入れられることよりも、このトークンエコノミーという構造自体がm世の中にひろく浸透していくこと。だとすれば、自分もそれに資する行動をしていきたいなと。

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この点、具体的なお名前をあげてしまって恐縮なんですが、特にイケハヤさんやけんすうさんあたりは、もう10年以上ずっとそのご活躍を観察してきているために、余計に強く思わされるのですが、やっぱりトークンエコノミーに参戦してから、そのお人柄が大きく変化したなあと思わされます。

おふたりの10年ぐらい前は、ブログやWeb記事などSNSやSEOの仕組みを、ありとあらゆる方向からハックをして、キュレーションメディアやバイラルメディアを仕掛けまくっていたときです。

当時、それが賛否両論ある行動だったとは思うけれど、少なくともあのときのルールや社会状況においては、あの行動は非常に経済合理的だったと思います。

つまり当時の仕組みに対して、一番成果が出るアプローチだった。

で、今回のweb3やトークンエコノミーもまったく同様で、おふたりはこの構造を全力でハックしようとしていて、その結果として圧倒的に「善い人」になっていっている気がしています。

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誰もこんなふうには語らないけれど、web3という構造変化による、その仕掛ける側の導かれ方の変化って、本当にすごい変化だなあと。

これまでのWeb2や、昭和や平成の成功物語の中だったら、自らベンチャーやスタートアップを立ち上げて世界をガラッと変えてしまうような異才、そんな圧倒的な才能をもっているひとたちが、コミュニティ運営をする側にまわっていること自体が、まず凄いこと。

そして、そこでそのような圧倒的な才能をもつひとたちが、そのゲームのルールや本質を見抜き切ったうえで、全力で「ハック」し成功させようとすると、結果的にものすごく善い方向に向かわざるを得ないこと。

これは、本当に希望に満ちた話だなあと思います。

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これが一般化すれば、当然のようにここから出てくるさらに若い新たな圧倒的な才能においても、その先を目指すに決まっています。

だとしたら、僕らが次世代に向けてつくるべきは、道徳や倫理を説教臭く語り、その行動基準を示して嫌々ながらもそれを強制させるのではなくて、どう考えても、そう振る舞ったほうが、経済合理的であると思える社会構造のほう。

それを残してあげられることが一番、将来世代にとっても理想的だと思うのです。

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最後に、今日の話に関連して、最近同時によく思うのは、トークンエコノミー概念に触れていないひと、いわゆる従来的なWeb2や、ビジネスの観点からまっさらな議論すると、これまでは特に何も感じていなかったのに、久しぶりに会うと「なんて悪どいこと考えているんだ!」って思ってしまうようにもなってきたなあと。

以前は比較的、善いひとの分類に入れていたようなひとであってもそうです。

でもそれは、相手のほうが悪いわけじゃなくて、それがこれまでの世の中の当たり前であって、自分の視点や観点のほうが大きく変わったということでもある。

自然と視点が遠くなる、いや、遠くならざるを得ないのがトークンエコノミーという仕組みの罠。あえてこういう言い方をしますが、本当にこれこそがトークンエコノミーの罠、だと思います。

なにはともあれ、僕はもっともっと、このあたりを丁寧に観察していきたい。そして、ここで一体何が起きてるのかをこれからも自分なりに言語化していきたい。

そのために今、最前線で挑戦をしているひとたちを強く応援していきたいなあと思います。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。