最近よく考えているのは、本当にITバブルとAIバブルは似ているのか、ということ。

先日、とあるAIスタートアップの株主総会に参加してきて、僕はその違いを肌で感じる機会がありました。

今日は、その経験を通して見えてきた、AIバブルとITバブルの意外な違いについて、書いてみたいなあと思っています。

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まずは、ITバブルから振り返ってみたい。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて起こったITバブルは、まさに「カリフォルニアン・イデオロギー」の具現化でした。

シリコンバレーを中心に、ガレージから始まったスタートアップが次々と誕生し、世界を変えていったわけですよね。みんな大好きAppleのスティーブ・ジョブズがその代表例。

この時代のベンチャー企業の特徴は、何と言っても「反体制」的な姿勢です。

ヒッピーコミューンの流れを汲む西海岸の自由な雰囲気の中で、既存の秩序に挑戦する若者たちが主役であり、彼らの多くが、Tシャツにジーンズ、スニーカーという出で立ちで、従来のビジネス界の常識を覆していったわけです。

このムーブメント自体が、日本にも波及し、日本のベンチャー企業も「反体制側」というイメージを持つようになったわけですよね。わかりやすいのはライブドアの堀江さん。

そして、今回のAIブームでもまた、似たような下剋上が起きると思われている。

でもそれはどちらかと言えば、web3によって起きるはずだったことであって、今のAIブームは、そこから大きく様変わりしていると思うのです。

そして、 web3文脈は、今のところは完全に失敗に終わったものとして忘れ去られている。

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じゃあ、AIバブルはどう様変わりしているのかと言えば、これが昨日も語った、昭和的なものの復権、そして組織の力の復権だと思います。

今回のAIブームは、わかりやすく官民連携、産学連携、が大手を振って行われている。

そして、その要請を受けた、スタートアップのインキュベーションプログラムのようなものが、大企業の企業研修にように、しっかりと手とり足取り完全に構築されている。

最初から上場が決まっている中での、上場させるためにだけに生まれているスタートアップの存在。裏側に最初から「官」つまり行政と、「学」つまり大学、もっというと東大がついている。

もちろん、そのバックにいるひとたちの持株比率も、非常に高いのは言わずもがなです。

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なので、今回のAIバブルはそうやって、わかりやすく従来型の「組織」が出張ってきているということ。自民党の存在なんかも、はっきりと既に存在している。

今回ばかりは、乗り遅れるなと水面下においてしっかりと固められているんだろうなあということです。

ちょっと変な喩えだけれど、音声配信で「クラブハウス」のときの芸能人が乗り遅れるなと入ってきたときになんだかとてもよく似ている。あのときも、今回は乗り遅れるなと、旧来型のメディアに出ていたひとたちほど、一斉に群がっていたように思います。

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それでは、そのテレビ的なもの、昭和的なものの復権が一体どこにあらわれているのか。

それが、以外にも「スーツ率の高さ」なのだと思いました。

というのも先日、とあるAIスタートアップの株主総会に参加してきたときに、非常に物々しい雰囲気で行われている株主総会だったのですが、その場にいる全員がスーツにネクタイ姿の男性だった。

それだけでもすごい光景だなあと思ったけれど、経済、政治、大学、金融それぞれの文化がバラバラのまま、そのまま流れ込んでいるのも、またおもしろかったんですよね。

つまりどういうことかと言うと、壇上に並ぶ取締役のひとたち全員がスーツ姿であっても、それぞれの着こなしや雰囲気が、それぞれ微妙に異なるんですよね。

官なら官の、民なら民の、金融なら金融の、それぞれのなんとも言えない雰囲気が出ているようなスーツの出で立ちなのです。

しかも、本来なら一番似てそうなCEOとCFOの選んでいるスーツやその着こなしも違う。一見すると統一されているように見えるスーツ姿の中に、それぞれの出身母体の文化が色濃く反映されているのです。

これは、多様なバックグラウンドを持つ人材が一つの企業に集結している証でもあるなあと思いながら、つい眺めてしまいました。

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スーツなんて別に目新しくもなんでもないでしょ、って思う人もいると思います。

それはその通りで、もちろん、世の中には全員がスーツ姿の場所なんてたくさん存在している。

でも、ひとつのスタートアップに集められた人材が、出身地ごとにバラバラのスーツの着方をしていて、こんなにもバラバラなスーツ姿が集まっている業界も、なかなかにめずらしい光景だなあと思う。

個人的にはそれが一番驚きました。そして今日一番強調したいポイントでもあります。

こんなことは、現場に行ってみないと決してわからなかったことだと思う。

そして、言わずもがな、ここにITベンチャーで名を挙げたひとたちが、はっきりと絡んでいるのが、今回のAIバブルだと思います。

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で、これは余談なのですが、この「スーツ化」の波は、メディア業界にも及んでいるように思います。

最近のYouTube動画を見ていると、オリエンタルラジオの中田さんや元日経新聞記者の後藤さんなど、常にスーツとネクタイ姿で登場するような人も増えました。

さらに興味深いのは、彼らが堀江貴文さんと対談する際も、スーツ姿で現れるようになったことです。

そして、かつての堀江さんなら「なんでスーツなんか着てるの?」と詰め寄ったかもしれませんが、そのような反応すら見られなくなりました。

これは単なるファッションの変化ではないと思っています。権力や既存の体制に対する態度の変化を象徴しているなあと思うのです。

ITバブルやWeb3ブームの時代には見られなかった光景であり、反体制的な雰囲気は完全に消え去ったと言っても過言ではない。

むしろ、権力に対して明確にお近づきになろうとする様子、少なくとも権威側に悪い印象は与えないでおきたいという意図が、はっきりと見て取れる。

昔はそれ自体が「媚びているような態度でダサい」とベンチャー精神に反することだったのに、今は、それこそがコスパよく賢い姿ということになっている。(時代は本当に変わるものですね)

こういうところにも、この過去10年で、完全に個人が組織に負けているということが、如実にあらわれている部分だなと思います。

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当然、海外にも目を向ければ、学生起業でグレーのパーカーが代名詞だったマーク・ザッカーバーグもいつしか、公聴会に呼ばれてスーツにネクタイを締めている写真ばかりが、毎回出回るようになった。

あとは、テクノリバタリアンの筆頭であるオープンAIのサム・アルトマンなんかも(ネクタイをしているかどうかは時と場合によるけれど)基本的にはスーツ姿で公の場に登場している。

こんなところにも、組織的なものの復権を、ものすごく強く感じる。

逆に言えば、今回のAIバブルはそれぐらい国家、政治、大学、金融すべてを巻き込んだバトルであり、ビジネスや経済には、とどまらないということでもあるんだと思います。(もちろん裏側には軍事もある)

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じゃあ、いま、昔ながらのベンチャー企業、そんなガレージ系の若者たちが一体どこにいるのか。

意外にも、ローカルの、ものすごく昔からある業界だったりするなと思う。伝統産業側。

わかりやすいのは、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんとか。ヒラクさんがスーツ着てるシーンなんて今まで一度もみたことない。

発酵食品なんてともすれば、ものすごく伝統産業側なのに、最近の発酵ムーブメントには、ものすごくヒッピー感というか西海岸の雰囲気がある。そして、ヒラクさんは実際に地方に行って生産工場(ガレージ)を日々巡っている。

そんなひとたちがローカルには少しずつ増えているからなのか、逆に地方公務員のひとたちが、いま何周遅れかで一生懸命スーツを脱いでいる姿を見るようになったなあと思います。

お決まりの地方公務員のスーツ姿から、なるべくカジュアルに見えるような格好に移り変わってきた。たぶん。それは東京の真似をしているつもりで、でも10年以上遅れている。ただ、それが意外と功を奏しているような気がしています。

その遅れと、上手くマッチしているようにも感じている。

AIバブルも一周して、それなりに世の中に浸透して、ここからきっと10年後ぐらいにそんなガレージ系のひとたちの中から、また革新的なことを仕掛けてくれる人達が出てくるんだろうなあと思います。

個人的にはそちらのムーブメントのほうに期待したい。

とはいえ、東京的なバチバチなAIバブルの流れなんかも、それはそれでおもしろいので、どっちも見ながら時代の流れを一歩引いた視点から、観察していきたいなあと思います。

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何にせよ、従来のベンチャー企業は、どこの馬の骨かもわからない、Tシャツにジーンズ、足元はスニーカーのガレージから始まるITベンチャーだった。

それが今回のAIでも起きるのだと信じているひとは未だに多いと思います。でも、AIバブルの場合はきっとそうじゃない。

そのような下剋上に見せかけての、派閥内闘争みたいになっているが、いまの現状だと思います。

それゆえに、たぶん今回のAIにおいて新たな覇権を握るのは、政治・大学・ビジネス・金融すべてと上手く連携できる企業なんだろうなあと思っています。

あくまで僕の見立てだし、かなり直感的な部分も多いけれど、いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの考えるきっかけになっていたら幸いです。