最近、リハックで配信されていた後藤達也さんが主宰する「あつまれ経済の森」の糸井重里さんゲスト回を観ました。


これが本当にとってもおもしろかった!

前・後編あり、合計すると2時間以上ある内容だったのですが、本当にあっという間です。

聞き手が経済のジャーナリストである後藤さんだったため、基本的には「経済」や「経営」にまつわる話がメイン。

糸井さんがほぼ日を経営する中で日々考えられていることが語られていました。

そこで語られている内容がWeb3やトークンエコノミーに関わる内容にもドンズバで当てはまるようなことばかり。

「糸井さん、もしかしてこの界隈を研究してませんか?」と思ってしまうほど。

その中でも、特に印象に残っているお話が3つほどあります。今日はそんなお話をご紹介してみたいと思います。

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ひとつ目は、「ユーザー行動をしている間であっても、僕らは労働をしている」というお話。

何かの生産活動をしているときだけが働いているわけではなく、業務時間中に映画を見に行ったり、ラーメンを食べに行ったりしている間にも、僕らは立派に労働をしていて、そこから得られるヒントや気づきもいっぱいあるのだと。

これは本当にそう思います。

たとえば、少し文脈は異なりますが、いまNFTコミュニティやFiNANCiEコミュニティを盛り上げているひとたちは、果たして消費をしているのか、労働をしているのか、一見するとよくわからないような状態です。

確かに、コミュニティ運営側から与えられたコンテンツを中心に、コミュニティ活動を目一杯楽しんでいるだけなわけだから、従来的には明らかに「消費」なんだけれどもでも、その消費活動が同時にコミュニティを盛り上げること自体にも貢献をしていて、それが結果的にそれぞれに持っているトークン単価も押し上げているわけですよね。

だとすれば、消費をしているあいだに「生産活動」をしているとも言えなくもない。

つまりこのあたりって、本来はものすごく曖昧になってきているのが、現代なんですよね。

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でも、どうしても古典的な「労働」の概念と「資本」の概念で僕らは考えてしまいがち。

ものすごくテンプレート的な労働観念を持ってしまっている。

これは逆の視点から捉えると、たとえばYouTubeの動画をつくったり、noteのブログを一生懸命書いたりして、アウトプットや「生産活動」をしていると思いきや、我々はWeb2文脈においては”商品”そのものなのだと考えると、GAFAなどのビックテックのプラットフォームを使って、散々“消費行動”をさせられているだけとも言えそうですよね。

つまり、従来的な労働観だけを持ち合わせていると、本当に大事なモノを見誤る可能性が現代では非常に高いわけです。

逆にNFTやFiNANCiEコミュニティにおいては、ユーザー行動が上手なひと、プロ消費者やプロユーザーみたいなひとたちがいるところほど、コミュニティ全体の価値が高まり、そこに資本も集まってきて、生産活動自体も活性化していく。

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さて、続いて2つ目は「従業員とフラットな関係性をつくりだして、株主という立場も彼らに体験してもらいたいから、アルバイト含めて関わっている従業員全員にほぼ日の株式を100株分配った」というお話。

これは、もはや言わずもがなだなと思います。

糸井さんは、株主と従業員が分かれていることに対して、若干の疑問を感じられたようで「実際に株を持ってみようよ!」と呼びかけるつもりで、ご自身の持ち株から全員に100株ずつ、当時のレートで言うと35万円分の株をタダで配ったそうです。

周囲の有識者からは「どうせ、すぐに売られてしまいますよ」と言われたらしいのですが「売られたら売られたで、それでいいじゃないか」という視点を持ち合わせていらっしゃって、これも本当にweb3的だなあと。

まずは当事者になってもらい、意識変革を起こしてもらうこと。

これから大事なことは、この「労働者マインド」から「資本家マインド」に切り替わってもらって「自分たちひとりひとりの手によって、その資本の価値を増加させていくんだ!」という気概を持ったうえで働いてもらうことができるかどうか、だと思います。

この意識さえ変わってしまえば前述した「労働観」というのも自然と変わってくる。

なぜなら、結局、この資本の増加に寄与する行動こそが労働であるという認識を自ら理解できるからです。

ここが今日一番強調したいポイントかもしれません。

先ほども例に出した、YouTubeで動画を投稿したり、noteでブログを書いたりすることは、確かにその労働の対価として、広告費や多少のサブスクの報酬は入ってくるかもしれませんし、そんな「作業」を労働だと思っているひとが世の大半です。

もっと具体的に言うと「私が作業に当てた時間」その対価が、労働の対価であると思い込んでいる。でも、それは大きな勘違いで、完全なる労働者マインドです。

確かにそれで対価は得られるのは事実なんだけれども、それは小銭稼ぎみたいなもので、資本が膨れ上がっているわけではない。

資本が膨れ上がるような行動を、コミュニティ全体で行っていくことが、これからは何よりも重要であって、それはその資本の一部を持って自分が資本家になってみることが一番わかりやすい。身体知としての理解にもつながるわけです。

そうすれば、自分たちが一体どのように行動をしたときに、ソレが膨れ上がるのかが自ら手に取るようにわかるわけだから。

そうすると、「これからに必要な生産活動とは何か」自体を見誤ることもなくなります。

なぜなら、ユーザー行動をしている間も、消費をしている間も、僕らは労働をしていたんだとハッキリと目に見える形で理解できるんだから。ゆえにこの視点が、いま本当に重要なことだなあと思います。

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あと最後に、感動したのは「表現」の部分であって「野球場ひとつ分のコミュニティをつくればいい」というお話です。

野球場ひとつが埋まるぐらいの人数のコミュニティ、具体的には3〜4万人ぐらい人がいれば経済圏はそこに誕生するんだと。

あの球場の熱気というか、一つの目的に対して集まりつつも、それぞれがそれぞれに自分のクリエイティブを持ち寄って、ひとつの時間を楽しんでいる感じが理想形であるんだと。

具体的には、そこでビールを売ったり、グッズを売ったり、そうやって働いて飯を食えるひとたちがいる。自動販売機でも収益は生まれるし、球場の外側にはペパハンのようなダフ屋みたいな存在も自然と生まれてきますよね。

なんというか、これは本当に美しい表現で、頭の中にその画がはっきりと浮かぶなあと思いました。

最近だと球場自体のほうもドンドン変化してきて、僕はまだ行ったことがないですが、北海道の「エスコンフィールド」のようなボールパークを想定するのも、非常にわかりやすいかと思います。

それが、目指すべき理想的な経済圏の姿。

どうしても数字だけだと、想像しにくいけれど「球場一つを埋めよう!」というふうに考えたら、よりコミュニティが一丸となって、一致団結していくような目標になるなあと思いました。本当にコピーライターはすごいなあと思います。

そう考えてくると、3〜4万人ぐらいの規模感がコミュニティのひとつのティッピングポイントなのかもしれません。いまFiNANCiEでダントツトップのCNGコミュニティも現状1.4万人ほどですが、ここから2〜3倍ぐらいに増えたら、そのときに大きくキャズムを超える瞬間になってくるのかもしれません。

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ということで、以上の3つのお話が個人的には非常に印象に残っているお話です。

とはいえ、他にも細かいところを挙げればきりがない。気になった方はぜひ、前・後編続けて観てみて欲しいです。

また、2年前の僕はこのブログで、糸井重里さんの名著「インターネット的」という本と同じように、「web3的」という本が必要だという話をしましたが、今も変わらずそれは思い続けています。

オウンドメディア、D2C、コミュニティなどなど、とにかく新しいトレンドがやってくるたびに、糸井さん、そして「ほぼ日」が時代を先駆けていたという話になる。

今回のweb3やトークンエコノミーにおいても全く一緒です。一切触れていないのに、これだけシンクロすることの凄さ、です。

でも、こうやって経済系のメディアに言及されるたびに、糸井さんは決して「新しい動きを意識しているわけではない」とおっしゃっています。つまり、変容しているのは僕らのほう、なんですよね。

もっと具体的に言うと、新しいテクノロジーが生まれてきてその可能性や、その可能性から生まれてくる人間関係の変化などを垣間見て、初めて僕らの視座、僕らのメガネの解像度が高まっていくというような構造認識のほうが正しい。

つまり、いつも圧倒的に見落としているのは僕らの方なんです。

逆に言えば、それだけずっとほぼ日のほうはメディアやコミュニティ、ビジネスや商いの「本質」をつき続けているということです。

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昨日も書いたように、確かに現状においてこの分野に今、わかりやすい先人はいないかもしれない。完全なるフロンティアであり荒野です。

でも、今回も「ほぼ日」の取り組み、そこから学んで活かせることは山ほどあるんだろうなあと感じます。

多くの人は、きっと未だに「NFTやFiNANCiEは、金儲けの道具であってギャンブル好きなひとたちが手を出すもの」と誤解していると思うのですが、でも、決してそうじゃないと僕は思います。むしろ、ほぼ日のような世界観を、あたりまえにする、一般化するための仕組みやテクノロジーになり得る。

テクノロジーが追いつかなかったから、「ほぼ日」はたまたま株式会社という形態だったけれども、それは本当に早すぎただけだと僕は思う。

ほぼ日が思い描く理想的な世界観が訪れるのは、まさにここからなんじゃないかと思います。参入してくればの話ですが、一番の鉱脈を掘り当てるのは、もしかしたらほぼ日かもしれません。

改めて研究してみたい会社だなあと思いました。

番組の最後に、糸井さんはご自身の今後の進退の話もされていたけれど、ぜひお元気なうちに実際にトークンにふれる機会もつくって、ほぼ日で試してみて欲しいと願うばかりです。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。