比叡山延暦寺には「不滅の法灯」と呼ばれる、1200年のあいだ一度も消えていない法灯があるそうです。

最澄の「明らけく後の 仏の御世までも 光りつたへよ法のともしび」(仏の光であり、法華経の教えを表すこの光を、末法の世を乗り越えて弥勒如来がお出ましになるまで消えることなくこの比叡山でお守りし、すべての世の中を照らすように)という願いが込められて、今もそれが脈々と受け継がれているらしい。(ウィキペディア参照)

で、僕はこの「不滅の法灯」をNHKの「歴史探偵 」の中で知りました。

番組内の解説の中で一番驚いたのは、なんとこの法灯は、その油を継ぎ足す役(係)が決まっていないそうなのです。

その理由は、全員がこの法灯を絶やさずに守り伝える当事者であるという意識を持つことが重要だから。

気づいた人が「足りないな」と思ったら継ぎ足すようになっているそうです。(ゆえに「油断大敵」という四字熟語の語源にもなっているそう)

結果として、一日の中で何人ものひとが法灯を見に行ってしまうと番組内では語られていました。

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さて、もしこれが現代の会社組織だったら、一番最初に「改善」が求められてしまう部分でしょう。

「なんて非効率で、生産性のないやり方なんだ!」と。

そして、すぐに役割を定めて、シフトを組んで、マニュアルが生まれてくるはずです。

しかし、その真逆の方法を選んでいる「不滅の法灯」が、1200年ものあいだ一度も消えていないということは、本当にすごいことだと思うし、ここに大きなヒントが隠れているように思うのです。

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たとえば、企業の論理に染まってしまっている共働きの夫婦は、企業の「役割主義」を家庭内にも持ち込んでしまいます。

家族の中で、誰が何を担当するのかを事細かく設定し、子供に対しても役割とマニュアルを与えて、それを破ったときには罰則を与えようとする。

でも一方で、なんだか風通しが良さそうで関係性がうまくいっている夫婦は、あまりそのようなルールを定めているような様子はない。

家事や育児も、気づいたひとがやるようにするという方々が多いように思います。

一見非効率かもしれないけれど、それが最終的にはそれぞれの「自発性を高めること」につながるのでしょう。

つまり「役割・シフト・マニュアル」というのは、属人性を排除することによって、誰でも実行可能となる素晴らしい仕組みである一方で、現場にいるひとりひとりから組織の一員であるという「当事者性」を奪っていく、そんなトレードオフのような関係性にあるのだと思います。

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もちろん、「役割・シフト・マニュアル」が適している場面も多々あります。

工場労働や、コンビニ運営などのフランチャイズ経営などはその典型でしょう。

しかし、人間社会において、「当事者性」が求められる場面だってたくさんある。

たとえば、このWasei Salonではオンラインイベントを立ち上げる役割を持ったひとを、明確には定めていません。

サロン活動の中核であり、肝心要の部分であるにも関わらず、あえてこれまで役割を定めてきませんでした。

きっとこれはかなり効率が悪いところも存在するはずです。でも、なんとなくそのほうがいいと思って直感的にそうしてきました。

結果として、メンバーひとりひとりが当事者性を持ってくれていて、このサロンに息づいている価値観や文化を大切にしていこうと動いてくれている中で、自然と生まれてくるものになっていると思います。今も毎月絶えることなく続いているのは、本当にみなさんのおかげです。

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どちらの方法が正しいとか正しくないとか、優れている・劣っているという話ではありません。

いま自分たちがつくりたいと思っている世界観において、適している方法とは一体何なのか。

社会で結果を出している主流派の大きな声に惑わされるのではなく、しっかりと現状の課題と目指したい組織の在り方を通して、自分たちの頭で考えていきたい。

そんな意味でも延暦寺の「不滅の法灯」は、今回とても大きなヒントを与えてくれました。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。

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