「リアルとオンラインのコミュニケーションにおいて何か違いを感じることはありますか?」

先日のサロン内イベントで挙がった質問です。

このコロナ下で、リモートワークが進み、きっと多くの方がいま直面している課題かと思います。

今日は、この問いに対して僕の思うところを少しだけ書き残しておこうと思います。

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日本の文化には、「察して文化」が古くから根付いています。

ちゃんとはっきりとは明言しないけれど、言動含め、あの手この手を使って、相手にこちらの意図が伝わるように仕向けて、「察してください」と伝えようとする。

一方、受け手側も、その相手からのサインを必死で察し、相手の意図通り察せられるひとが、仕事ができる人間であり、優しいひと、思いやりのあるひとと評価される。

そうすると、ひとはドンドンその相手の優しさに甘えてしまうようになるんですよね。

ちゃんと明言しなくても分かり合える関係性が「良い関係性」となってしまうのです。

とてもわかりやすい例で言えば、昭和世代の典型的な夫婦像のようなもので、旦那さんが「あれ」と言えば、「あっ、あれね」と察して、旦那さんが意図するものを奥さんが勝手に持ってきてくれるというような。

仕事においても似たような構図は至るところで存在していると思います。

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「このお話が、リアルとオンラインのコミュニケーションにおいて一体どんな関係があるの?」と思っている方もいるかもしれません。

僕はオンラインが主流になったことで、この「察して文化」がより複雑化してしまったなあと思うのです。

具体的には、ネット上で各人が発信できる場が増えてしまったことで、相手に届いているかどうかも定かではないのに、ネット上で発信したことによって、「自分はちゃんと相手に伝える義務を果たした」と思ってしまう現象が散見されるなと。

具体的には、

「Twitterで書いたじゃん」

「Instagramに投稿したよ」

「noteに書いのに」と。

そうやって、自分が相手に伝える義務は棚上げして、「私はちゃんと発信したのに、なぜあなたは分かってくれないんだ」と、察してくれない相手を責めてしまう場面が増えてきた気がします。

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でも、さすがにそれには無理がありますよね。

無理があるのだけれど、優しくて思いやりのある上司ほど、部下のSNSを日夜追い続け、その甘えに対応しようとしてしまう。(部下が上司のSNSを追う構造も全く同じ)

そして、「いまこんなことで悩んでいるのかもしれないな」「いまこんな助言をしたら喜んでくれるかもしれないな」と察してあげて、

実際に相手に思いやりを持って行動した結果、相手にも素直に喜ばれて、あのひとはいい上司(部下)だと評価されてしまう…。

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ひとは、結果が出たことは何度も繰り返そうとしてしまうので、これが一度うまくいくと、また必死になって相手のネット上の発信を追おうとしてしまいます。

でもこれにはキリがありません。そして、みんなが不幸になっていく。

なぜなら、常に誰かの発信に怯えながら、まわりの人間が自分の人生の主導権を握ってしまうことになるからです。

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ご多分に漏れず、僕もこの現代の特殊性にハマりかけていた時期があります。

自分が発信する側として「ブログにちゃんと書いているのに、なんで分かってくれないのだろう?」と他者の思いやりに甘えたり、

自分が受信する側として、会社のメンバーのSNSをちゃんと追えていない自分に対して徐々に嫌悪感を感じてきて、「自分は良い上司になれてないのではないのではないか…?」と悩んでしまったり。

そうすると、どんどん小さな発信まで追ってしまって、「この画像には一体どんな意味があるのか…?」と、考えても一生答えが出ないようなことにまで悩んでしまっていた時期もありました。

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インターネットが発達したことにより、誰もが簡単に発信できるようになり、それを誰もが閲覧(フォロー)できるようになった時代だからこそ、本当に気をつけないといけないことだと思います。

『お金と人のないしょ話』の中でも話題に上がった「FOMO」にもつながってしまうようなお話です。

https://twitter.com/fta7/status/1275349877451485184?s=20

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僕からの提言は以下です。

まずは、この呪縛に気づき、そこから解放されること。

「知らなくても大丈夫だ」ということに気づきましょう。

そして、相手の「察して」には決して寄り添わない勇気を持つ。

お互いにちゃんと相手の話を聞くこと、そして相手にしっかりと伝えること。

そうやって、まわりの人と健全な「ヨコの関係」をつくっていくことがいま本当に大切なことだと思います。

決して「思いやり」や「優しさ」を隠蓑にした「タテの関係」には、足を踏み入れない。

参照:タテの関係か?ヨコの関係か? | Wasei Salon https://wasei.salon/blogs/025e75b8af17

いつもこのブログを読んでくださっている方々にとっても今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。