地方には仕事がないというのは、よく耳にする話です。

都会から地方に移住を考えているひとが、一番最初にぶち当たる不安や悩みでもあるかと思います。

でも僕は、この言葉は少し誤解されているように感じます。

そもそも仕事とは、何か現状の課題を解決して、新たな価値を生み出すことです。

だとすれば、地方には過疎や商店街の衰退など問題が山積みなのだから、解決するべき課題がたくさんある。

よって、仕事はたくさんあるわけです。

ただし、地方に山積している課題というのは、簡単に解決できることではないのが実情です。

つまり、すぐに解決できる簡単な課題(仕事)が残っていない、というのが「地方には仕事がない」という言葉の本当の正しい理解なのだと思います。

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ただし、だからと言って「地方には、仕事がありません!」という結論には至らない。

もちろん地方の難題というのは、誰の目から見ても明らかな課題でもあるわけだから、行政などの注目も、そこには集まっているわけです。

人の注目が集まるということは、そこに予算(国からの予算も含む)が割かれているわけでもある。

つまり、仕事は常に生まれ続けているわけです。

だからこそ、若者が都会からUターン、Iターンした直後というのは引く手あまたになるのです。

都会からやってきた若者は、自分たち(地元住民)には持っていないスキルや視点をたくさん持ち合わせていると信じられているから、移住者が驚くほど神聖視される傾向にある。

「何か新たな風穴を開けてくれるかもしれない」という期待感が、余計に神聖化させるのでしょう。転校生が謎にモテてしまう構造とも、とてもよく似ています。

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だから、やっぱり移住直後には、たくさんの仕事があるのです。

「これもどうですか、あれもどうですか」と本人の本業とは関係ないところまで仕事が振られるようになる。

そして、地方では噂が知れ渡るのもはやいですから、仕事が仕事を呼び込み、ドンドン自分のところに仕事が舞い込んでくるようになります。

そして、多くのひとはここで天狗になってしまうのです。

単純に、「都会ボーナス」によって仕事が巡ってきているだけなのに、自分には才能や能力があるのだと誤解してしまう。しかし、もちろん自分自身の能力自体は何も変わっていません。

そして、「地方には仕事がないと聞いていたから覚悟してやってきたのに、こんなにもたくさんの仕事があるじゃないか!」と悦に浸る。

しかも、これだけバイネームで仕事が舞い込んでくるのだから、みんなが自分のことを頼りにしてくれているのだと誤解してしまう。これは自分がこれまで培ってきた能力による賜物だと解釈してしまうのでしょう。

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とはいえ、地方の課題は、多くの人が簡単に解決できない問題だから、そのまま放置されてきたわけでもあるわけです。

そうすると、ご多分に漏れず、任された仕事でことごとく結果を出せない状態が続きます。

最初の1〜2年はたくさんの仕事が舞い込んできても、そこで思った結果を出ないことがわかると徐々に見切りをつけられるようになる。(2度目、3度目がなくなっていく)

そして移住から3年も経過すれば、地元のひとたちからもすっかりと地元のひと扱いされるようになるわけです。

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じゃあ、このときに、都会の仕事が残っているのかといえば、地方の仕事で忙しく立ち回っているうちに、リモートでこなしていた都会の仕事にも新しい人が当てこまれてしまっている。

都会の仕事というのは、都会のスピードでドンドンと入れ替わっているわけだから、地方に移住して現場に足を運べないとなると、現場にいるもっと意思疎通がうまくできる若手に仕事が奪われる構造にもなっている。

そして、完全に積む。

このときに初めて、本当の意味で「地方には仕事がない」という状態になるのだと思います。

この事実に直面すると、移住者だった自分も地元住民側にまわり、補助金をうまく引っ張ってくる方法だけが熟達していき、また新しくやってきた移住者に仕事を振りながら、少しずつその予算を中抜きしながら生きていくという方法を取るようになる。

この無限ループを続けながら、今も日本各地の地域は徐々に衰退していっている最中にあるのだと思います。

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だからこそまずは、移住直後に引く手あまたになっても天狗にならないことが、とても大切なことだと思います。

そして、地方の課題は難題ばかりなのだから、結果を出すことが難しいということを最初からしっかりと理解しておくこと。

そして、役場やそれに類似した団体から降ってきた仕事をただ言われた通りにこなすだけではなく、その前提から疑ってみるとが、本当に大切なんだろうなあと思います。

もし、その任された仕事をこなしているだけで、本当にうまくいくのであれば(地方にある課題がちゃんと解決していくのであれば)自分が移住する前から、その課題は既になくなっているはずなのですから。

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そして、都会の仕事もちゃんと握っておくこと。

都会と地方の仕事を少しずつつなげていくのが理想的なのだと思います。そして当事者を少しずつ増やしていきながら、うまく都会側も巻き込んでいく。

自分がいる地域だけで問題を解決しようとするのではなく、コミュニティをつくり出し、少しずつ仲間を増やして、みんなの課題にしていくことが、何よりも重要なのだと思います。

地方の実態を長年見聞きしてきて、いま僕が思うことです。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。