何か社会に問題があると、僕らはどうしてもすぐにその構造から変えてしまおうとしてしまいがち。

たしかに構造を変えたら、その原因となる諸問題を除去できる可能性は一気に高まります。

でも一方で、僕らが強く感じている違和感というものは、その構造から生まれてくる確率が高いだけであって、構造それ自体が即アウトなわけじゃない。

以下の連続ツイートで書いたような話にも近いです。

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この点、最近頻繁にこのブログで紹介している「ラジオただいま発酵中」のなかで、非常におもしろいお話が語られていました。

ラジオただいま発酵中の運営元である発酵デパートメントは「メルマガ会員を、えこひいきする」とハッキリと明言していたのです。

その理由は、常に生産者視点に立っているからだ、と。

発酵食品は工業製品ではないから、大量生産・大量消費することはできない。多数の注文が入ってしまって、生産者を圧迫したくない。

生産者に無理な負担を強いることなく、一緒に共存していきたい。そのためには、テンション高くなっているメルマガ会員さんを時に優先するのだ、と。

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この姿勢は、本当に素晴らしいなあと思いました。

「えこひいき」って、ともすれば現代社会においてはかなりネガティブに聞こえてしまうワードです。

しかし、いま僕らが強い違和感を感じているのは、大手メーカーが市場を独占して、本当に昔ながらの製法でつくっている個人の造り手さんが疲弊してしまっていることだったりします。

そんな造り手さんたちをもっとしっかりと支援していきたい、残していきたいと考えるお客さんたちのニーズにしっかりと合致している。

その仕組として、「えこひいき」を再度復活させてくるというのは、ものすごく得策だと思うのです。

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このような商人側の思想が本来の「三方よし」という考え方だったはず。

明確な理由があっての「偏り」や「偏在」自体は、決して悪いことではない。むしろ、状況の説明と三方(売り手、買い手、世間)すべてに対して納得感を持ってもらうことが重要だったはず。

にもかかわらず、僕らは汚職や腐敗が蔓延ると「構造」のほうばかり変革させようとしてしまう。フラットにフラットに、平坦に平坦に、と。

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「でも本当にそれでいいんだっけ?」と強く疑問に思います。

たしかに、腐敗の原因となる構造や仕組みを解明し、消毒殺菌して無菌状態にしていくことで、最悪な腐敗は起こらなくなるかもしれないけれど、同時に発酵だって起こらなくなってしまう。

生きることの楽しみの根源である「循環」が起こらなくなってしまう。「不要不急」の議論と全く一緒ですよね。

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いま、僕らが感じている違和感とは何なのか。

まずは、その状況の分析と観察が必要であって、それをなくすためにはどうすれば良いのかを明確にすることが大事。そして、その撲滅をしっかりと宣言し、周囲に説明して、有言実行していくこと。

むやみやたらと、何でもかんでもその原因となる構造を破壊してしまうアナキズム(無政府主義)には陥らないこと。

その思想の最終形態は「人間それ自体を撲滅せねばならない」となってしまいますからね。

これからの時代において、とっても大事な考え方だと思います。

いつもこのブログを読んでくれている方々にとっても今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。

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