最近、ファーストキャリアや、自分がある程度結果を出せた職業(職種)の呪いというものがあるなあとよく思っていて。
あくまで、今自分がついている仕事や、ある程度結果を出すことができてきた職業や職種というのは、過去の今よりも若い頃の自分が選んだものに過ぎないはずです。
にも関わらず、それこそが自分の天職や最適な仕事だと思いこんで、次に選ぶ仕事も、その延長線上にあるものを、引き続き継続的に選び取ってしまうというような罠があるなと感じています。
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これはもちろん、そのような選択が功を奏した時代も長く続いていた影響も、かなり大きいはずです。
具体的には一度も転職せずに、ひとつの会社に終身雇用で雇ってもらうほうが有利だった時代が長く続いたわけだから、最初に選んだものを正解として見立てようというある種の幻想というのは、非常に理に適っていた選択だったんだろうなあと。
でもそれっていうのは、江戸時代に「◯◯藩のお殿様がどれだけバカだったとしても、藩を捨てずに、その現実を素直に受け入れて、その藩の中でこれが私の天職だと思いながら自らの任務に取り組むこと、それで結果を出せたら幸福だったよね」みたいな話とあまり変わらない気がします。
もちろん、そのような幸福論は今のリベラル的な価値観を持った僕らからすると、欺瞞極まりない話だけれども当時の人達は、それを真剣に信じていたわけですよね。
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でも一方で現代は、ファーストキャリアが私の天職だと思い込むことによって、不利益を被ることのほうが大きくなってきている気がします。
社会全体を見ても、一寸先は闇というような状況。明日には、AIによって自分の仕事のニーズがほとんどなくなって、相対的な価値がダダ下がりになるかもしれないわけだから。
だとすれば、ドンドンほかの業種の経験も積んでいったほうが自らのスキルの汎用性は高まったりもするわけです。むしろ、その掛け算のほうが本当の「自己一貫性」なんじゃないかとさえ思うんですよね。
でも今は、せっかく転職したとしても、最初に選んだ業種や職種も変えずに、まっすぐに進んでしまうひとがあまりに多いなあと。
客観的に見れば、そのひとの個性や能力はその業種や職種以外でも間違いなく花開くはずなのに、本人が勝手に自分自身の可能性を狭めてしまっているケースが散見される。
一般的には、ファースキャリアから同じ職業を貫いているひとは、自分以外にも沢山存在するわけです。むしろ、自分という身体や個体をキープしたまま、バラバラな職業を歩んでいる人間のほうが唯一無二なわけでもある。
どちらが希少性高く、社会的な相対的な価値がこれから高まっていくのかと言えば、間違いなく後者のほうだと僕は思います。
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で、ここからは少し自分の話になってしまって恐縮なのですが、僕もたまたま社会に出たときが2011年で、iPhoneが出始めたタイミングだったから、インターネットに関連することばかり手を出してきました。
これまでずっとオンラインベースの事業ばっかりやってきたけれど、これは、たまたま当時のタイミングにおいて自分と時代が交差した結果として、選んだことなだけで。
でも、むしろ自分の20歳までの20年間の記憶を振り返ってみると、本当はもっともっとマテリアルというか、質量があるものも好きだったはずで。
なにゆえ、こんなに質量ないものばかりを自らの仕事にしてるんだと、時々自分でも不思議に感じるときがあります。
ということで、今年新たに起業した2社目の会社に関しては、真逆に振り切って、不動産関連のことがやれたらいいなあという想いで立ち上げてみました。
今、少しずつ水面下で動き始めていて、来年以降に具体的な取り組みについて少しずつ、この場でもお話していけたらと思っています。
もちろん、ここで取り扱う不動産というのは、Wasei Salonメンバーのみなさんに活用していただけるものを世の中に増やしていきたいという願いからでもあります。
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で、話をもとに戻して、今日は一体何が言いたいのかと言えば、自分のファーストキャリアとか、うまく行った仕事とかにあんまり深く囚われすぎないほうがいいよ、という話なんです。人生は長いんですし。
もし最初から結果が出ていれば儲けもんで、長く続けたほうが良い場面もあるかもしれないけれど、大した結果も出せていないのに(というか大した結果も出せていないから、転職するのに)また同じ業種や職種に固執するのは僕は違うと思う。
もはや、それは完全なる執着です。
人間が持ち合わせている現状維持バイアスみたいなもの。でもそれはあくまで、若かりし頃の自分が決断した事柄であって、今もその一貫性に囚われてしまうのは、本当にもったいない。
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「とはいえ、世の中で結果を出している人たちは、若い頃の原体験を語り、それを天職のようにして、全うしているじゃないか!」と思われるかもしれません。
でも、それは半分本当で半分嘘だと思っていて。
僕が35年間生きてきて、いま確信に近い感覚というのは、人間というのはいつだってそうやって「原体験」を見つけ出す生き物なんです。
そこに「昔から◯◯だった」と同一性を見出すのが、人間という生き物が持ち合わせている「意識」の便利なところでもあり、厄介なところでもある。
僕の中で今年、一番良かった本は過去に何度もご紹介してきた哲学者・東浩紀さんの『訂正可能性の哲学』なのだけれども、今日のこの話もきっと、まさに訂正可能性の話にもつながっていくはずで。
遡行的に発見されて、あのときから同一性が保たれていた(天職が定まっていたんだ)と物語化してしまうわけです。
この話はわかりにくいけれど、ここは、本当に大事な大事な視点だと思っています。
たとえば、僕は今からたとえどんな仕事を担っても、たぶんそこに原体験を見出せる自信があります。具体的には、今からアパレル事業で大成功したら、その原体験も語れるし、食品加工で大成功しても、その原体験も語ることができます。まさに自由自在。
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なぜ、そんなことができるのかと言えば、コネクティングザドッツであり、この有名な話は、人間側のつなげる行為自体を見つけ出すこと自体を指すのであって、決して自分が打ってきた点と点が、あとから自動的につながっていくという話ではないからです。
つまり、なんとなく当たったもの、その当たったものが「なぜ当たったのか」を他人に説明していくうちに、気づけば「捏造」されるものなんです。
さらに誤解を恐れずにいえば、それらをつなげて「ほら、最初から意味があったでしょ!」と言い張ることができて、それを他者だけでもなく、自分自身さえも完全に騙してしまうことができるのが、人間の「意識」のちから。
意識は常に、同一性を主張するというは、まさにそういうことなはずで。
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これはちょうど、満天の星空に星座を見つけ出す、みたいな話にも近いと思います。
文字通り、星の数ほどある「星」のなかに、星座を見つけ出せるのが人間の能力なわけですよね。
つまり、人生のなかにも無限の星の数、その点というのがまずあって、その星(過去に放たれた光)同士を遡行的に発見し人為的につなげてしまうのが、コネクティングドッツの真の意味合いであり、紛れもない正体なのだと思います。
東浩紀さんの訂正可能性の話というのは、それを僕らに教えてくれている。
ひとが何かを成したら、必ず「昔からあいつは〜で、すごかった」と周囲が騒ぎ立てます。
そして、それは人間という生き物が、そんなふうに世界や時間の流れを見たがる生物だからでもある。
何か理解ができないことが起こると、その原因と結果を紐付けないと落ち着かない生き物なのだと思います。
でも僕らは、日々メディアからそのような情報ばかりを受け取るから、順序が逆になっているように感じてしまっている。
だから、客観的な事象よりも、今を全力で楽しむことのほうが圧倒的に重要なんだと思うんですよね。意図した点を着実に打って、あとからつなげようとするわけではなく、です。
今を全力で楽しむというのは、自分の心の空が曇らないようにするという感覚にも非常に近い。
ハッキリと星空が見えていれば、いくらでもそこに星座を見いだすことができるわけだから。
でも夜空が曇ってしまっていたら、星はつなげたくてもつなげられない。心が沈んでいると、空に星は浮かばないわけですからね。
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「謙虚にして驕らず、さらに努力を 現在は過去の努力の結果、将来は今後の努力で」
これは稲盛和夫が生前、JALの再建のときに社内に掲げたという社訓であるわけれども、これも本当にそのとおりで。
今の積み重ねが、将来になる。始まりはいつも「いま、ここ」からなんですよね。
でも多くの人は、失敗をしたくないから、常に過去と現在の連続性のほうばかりに目を向けてしまう。そして、それを担保のようにして、過去を無理やり踏襲し、今を構築しようとする。
だから結果的に、未来というのは、過去の延長線上になってしまう。
それは他でもなく、過去と未来を、「今」というつなぎ目において、自らでせっせと必死でつなげているからなんです。
そういう行動をしているのは、他でもない自分自身だというのに、それを運命だとか宿命だとか決めつけてしまうのは、本当にナンセンスだなと僕は思います。
社会に出るタイミングで、たまたま偶然選んだだけの道を「これが私の生きる道なんだ」と信じ込むのは、本当にもったいない。ときには、断ち切る勇気も必要です。
今日のこの話は、本当に理解しがたく、言葉で伝えるのはとてもむずかしい。でも、少しでも伝わっていたら嬉しいですし、実際にこれから自らの行動においても、わかりやすく実行していきたいなあと思います。
いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。
2023/12/20 16:34