「この案件を請け負うべきかどうか」という質問を最近立て続けに、質問を受けました。

その流れの中で「鳥井さんは、案件を受けるときに何を基準にしていますか?」とも聞かれたので、今日は自らが企業の宣伝や、記事広告の制作を請け負うときの基準、その個人的なスタンスについて、このブログにも少し書いてみたいと思います。

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まず前提からお話すると、このような流れは、近年のメディア構造の変化が大きいのだと思います。

企業側も、広告代理店やメディア運営会社だけではなくて、特定のジャンルに影響力を持つ個人に対して、広くアプローチをするようになりました。

フォロワー数だけではなくて、もっとピンポイントに刺しに行くようにもなってきたということです。

よく言われる話だけれども、漠然とした10万人のふわっとしたフォロワーがいるひとたちよりも、1万人、いや千人であっても、しっかりと特定の層に対して強い影響力を持ち、なおかつエンゲージメントが高いひとであれば、その広告効果は大きいと判断するようになってきたということなのだと思います。

だからこそ、最近は多種多様なジャンルのマイクロインフルエンサーのような人々にも、企業案件の声がかかるようになってきたということなんだと思います。

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この点、多くのひとがその案件を受けるか否かを考えるときの基準は「自分が普段から使っているものであれば問題はない」ということ。

僕も基本的には、その考え方には異論はありません。

以前から知っている企業やブランドであれば、最初から相思相愛であり、願ったり叶ったりみたいなところはあるかと思います。

ただし、それだけだと若干弱い気もしているのは、正直なところです。

なぜなら、それさえも結局のところ、マーケティングの術中にハマっている可能性は高いわけですから。

言い換えると、自分がその商品や企業に出会ったきっかけは、他のインフルエンサーたち、もしくは大手広告代理店がつくり出したイメージの罠に、ハマっているだけだったりもする。

だから、結局は自分自身が、ただ左から右にそのウィルスを感染させているだけの可能性も非常に高い。

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今の広告は、ものすごくキレイな話をあたかもブランディングではいかようにも見せることもできるし、最近はCSRの取り組みなんかも盛んで、そのためのノウハウも構築されてきているので、ある種ハックされている部分もかなりあるなあと思っています。

つまり、外側の部分はいかようにも美しく見せてしまうことはできる。

たとえば、オーガニックコットンとかは非常にわかりやすいと思います。

オーガニックコットンの基準は極めて曖昧にも関わらず、「オーガニックコットン使用」という表記と、それっぽい牧歌的な写真、そしてポエム調のキャッチコピーがついていれば、なんとなく良いものだと僕ら消費者は信じ込んでしまう。

しかも、このような環境やエシカル配慮の商品、商品の品質、使い心地自体はそこまで変わらないわけです。

でも、実際に蓋を開けてみると、裏ではわかりやすい搾取が行われていたり、実際にはオーガニックコットンの割合や比率が圧倒的に少なかったということもあるわけですよね。

だから、それがイメージとしてつくられたものなのか、それともその会社が本気で取り組んでいることなのかは、その資料や広報担当者の方の口からだけでは、案外わからないというのが正直なところです。

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じゃあ、一体どうすればいいのか。

ものづくりの現場に行くこと、それで大体わかります。

具体的には、工場や本社に直接訪れてみることが大事なんだろうなあと。

僕は、本社に直接行ってみた結果、「なんだ、結局口だけなのか…」と思って、受けることをやめた案件もたくさんありますし、本社と工場に行ったからこそ「マジか…!そこまでやるのか!」って思って、更にベタ惚れしてしまった企業もある。

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わかりやすく喩えるなら、これはSNSの写真なんかと一緒で、今は写真であればいくらでもキレイに加工ができてしまいます。

でも、その写真のフィルターで、期待して実際に直接会ってみたら、大したことなかったっていうアレとまったく一緒で。

で、企業側も、本社や工場のような現場までは、嘘をつけない。

あとは、その現場で働いている社員のみなさんの顔や満足度みたいなものを見ると、大体のことは伝わってきます。

だからこそ、僕が思うのは、生産の現場を自分自身の目で直接見に行くっていうことは、案件を受けてみるかどうかを考える上で、本当に大事なことなんだろうなあと思います。

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逆に言えば、実際にその商品だけを使っているような状態や、企業の広報活動の話だけを聞いている状態というのは、Zoomだけで言葉の遣り取りをした段階で、相手を信頼しているのと一緒なんですよね。

それだけでも、もちろん場合によっては信頼には値するだろうし、そこでハズすこともないと思う人も多いとは思うのだけれども、

もし僕が発信する側として、自分のことを信頼してくださっているフォロワーやサロンの皆さんにお伝えするときには、できる限りそのような齟齬によって裏切りたくない。

だからこそ、僕が意識しているのは、案件を受けるか否かの基準を判断するときには「その商品自体を、自分自身が好きか否か」以上に、僕自身が、実際に現場に行ったことがあるか、そこで違和感がなかったかどうかを判断基準にするようになりました。

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一番わかりやすいところだと、イケウチオーガニックさんなんかは、その好例。石見銀山にある群言堂さんも、まさにそうです。

両者ともに、コンセプトや見せ方はもちろん大変素晴らしいのだけれども、それ以上に、現場においてまったく嘘がない。だから僕は、両社を全力で応援しています。

あとは、オーディオブックをつくっているオトバンクさんなんかもそう。

本社の、ものづくりの現場を実際に直接見せてもらっていて、そこに嘘偽りがないと思ったからこそ、僕はずっと支援し続けています。

むしろ、ここまで徹底してつくっているなら、それをもっとちゃんと発信したほうが良いですよ!そのためなら、僕から何でもお手伝いさせていただきます!というスタンスで関わらせてもらっているような状態です。

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ということで、発信者側の立場として、広告案件を受けるかどうかに悩んだのであれば、一度直接本社と工場に、赴いてみることを強くオススメします。

城下町があれば、その町にも実際に足を運んでみる。

でも、コレって単純に面倒くさいんですよね。

だから、普通のインフルエンサーはみんなそんなことはやっていない。

送られてきたサンプルを、数日〜数週間使ってみて、なんとなくそれで使い心地が良かったから、それで案件を回していく。

でも、みんなやっていないからこそ、ぜひともやってみて欲しいことだなあと。

あと、本社とか工場とかに行くまでの興味がそもそも持てないのなら、たぶんそこまで好きじゃないんだと思います。

報酬に目がくらんでいるだけのパターンも大きいのかなあと。

自分の中の「どれだけ本気で、それを自分を信頼してくれているひとたちに伝えたいのか?」ということを確かめるためのリトマス試験紙にもなるかと思います。

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ここまで読んできて、自分は案件を受ける機会なんてないから関係ないと思う方もいるかも知れませんが、逆の視点から見て、PR案件を受けている発信者の話を信じるかどうかは、本社と工場に行っているかどうかをひとつの基準にしてみると良いのではないかと思います。

そこで観てきた内容について感動した話を語っていれば、きっと信頼に値すると思いますし、サンプルで提供された商品とそれに付随する広告、あとは広報担当者の話を聞いただけで感動しているパターンは大体、そのインフルエンサー自体も、企業側や広告イメージに騙されている場合が多いです。

もちろん、発信する側、インフルエンサー本人には悪気はないことも多いのですが、発信者としては、単純に信頼には値しないかと思います。

いち消費者として、ネット時代に身につけるべきメディア・リテラシーとして、このあたりは意識しておいたほうがいいのかなあと。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。