どうしても僕らは、相手の無理難題の要求に対し、それをどのように回避するかばかりを考えてしまいがちです。

だから、その要求とセットで提示される相手のニーズ自体も全面的に否定してしまう。

でも、たとえどれだけ無理難題であったとしても、その相手の「要求」と「ニーズ」をしっかりと峻別することは可能であって、相手のニーズの部分は全面的に肯定することはできます。

それって、本当にとても大事なことだと思うのです。

最初から、無理難題な要求は「聞くに値しない」とたかをくくってしまうから、議論は平行線を辿ってしまう。

今日はそんなお話を少しだけ。

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では、相手のニーズを全面的に肯定するためには、どうすれば良いのでしょうか?

具体的には、昨日のブログにも書いたように、お互いの話を最後まで聞き合う「対話の場」を持つことが重要なのだと思います。

参照:納得感と合意感。現代の社会において圧倒的に足りないところ。

相手の具体的な要求だけでなく、その背後に見え隠れするニーズまで、ちゃんと最後までゆっくりと耳を傾けながら聞いてみる。

そして、同様の態度で自分の話を相手に聞いてもらえれば、本当に不思議なことですが、自分の要求を後回しにしてでも「お先にどうぞ」と思えるようになってくる。

もちろん、相手も自分と似たような気持ちになっているはずだから、結果的にお互いの無理難題な要求も自然と引き下げることにつながっていきます。

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このように、お互いの置かれている状況は一切変化しなくても、お互いに聞き合う、たったそれだけのことで満たされることが、この世の中にいっぱいあります。

そもそも、相手のニーズというのは、必ず受け入れられるようにできている。全面肯定できるのです。

なぜならほとんどすべてのニーズは、「私はここにいるよ」と相手に認知を求めているだけだから。

ここは非常に重要なポイントなのですが、「認知」であり「承認」さえ本来は求めていないのです。

ただし、その認知さえも獲得することができないから、自らの要求のほうがドンドン肥大化していく。つまり、より目立つ行動(要求)へと発展していくのです。

実は、ただ自分の話を聞いてもらい、存在を認知して欲しいだけみたいところがその出発点だったりするのに、です。

しかも要求する本人も、そのことを自覚していない場合が多い。何か大きな要求を掲げて、「ここに私がいる!」と主張しなければ、私の存在が認識されないと無意識に思ってしまうのでしょう。

未成年の飲酒喫煙、リストカットなんかはその代表例だと思います。

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逆にいえば、お互いのニーズをしっかりと聞き合うだけで、お互いに満たされて解決することができるのに、相手が掲げている要求自体が、何か途方もないことを要求しているように感じてしまい、到底受け入れることができないと態度で示し、相手の話を聞くまえから最初から「ノー」と言ってしまう。

そのような臨戦態勢で、議論の場に臨んでしまえば、議論が平行線を辿ってしまうのも当然のことです。

もしくは、必ず言い争いになると予測できるからこそ、先回りして水面下の見えないところで根回しをし、粛々と相手の気づかぬうちに自分にとって有利な行動してしまう。

そしてポイント・オブ・ノーリターンのところまでやってきたタイミングで、「このまま進むか、それとも進まずに、あなた方が甚大な被害を被るか」という二者択一を迫るような脅迫めいた状況に追い詰めてしまう。

そうやって、より一層お互いの「わかり合えなさ」に絶望していく。

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「ちゃんと聞いてもらえている」と思えたら、まったく別の方法や手段でお互いのニーズを満たせるような、第三の道を自然と共に探ることができるようになります。

いや、むしろそこまでたどり着いたら、もう第三の道さえも必要としていない。なぜなら、すでにお互いのニーズはしっかりと満たされているからです。

そのためには、繰り返しますが、相手のニーズを全面的に肯定する場として「対話の場」が必要不可欠だと思います。

しかも、それを日常的に持ち続けることが重要。対話を怠っているうちに、非日常(戦闘状態)に突入してしまえば「対話」のちからは完全に無力になってしまうから。

日々の小さなニーズを理解し合っていくことが、何よりも大切で最善策。もちろん、そんな場を設定するだけだったら、多額のお金などもかかるような話でもありません。

家族〜国家まで、どのような規模感の共同体においても全く同様の話が適用できると思います。

今日書いたお話は以前、Wasei Salon内でも読書会を開催した書籍『「わかりあえない」を超える 』で学んだことを自分なりの解釈や、自らの実体験を加えて書いてみました。気になる方はぜひ本書も合わせて読んでみてください。(サロンメンバーの方は読書会のアーカイブ動画もご覧になれます)

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。

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