起業しているのに、最近、ほとんど仕事のことを書いたことがなかったのですが、珍しく、気持ちの変化があったので書いてみようと思います。ものすごく恥ずかしい私の黒歴史が出てきます。

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起業する前、特に20歳前後の頃、私にも、いわゆる自己啓発本を読む時期があった。最初は、14歳の頃、所属していた部活がいじめだらけで最悪だった。そんな時、たまたま近所のWAY(田舎なので蔦屋なんかなかった)で購入した『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を手にした。(もしドラで話題になった)

実践しても部活のいじめはなくならなかったし、この本自体の記憶は全くない。でも、間違いなく、この読書体験を通じて、自分の認識を変えると世界が変わって見えることを体感し、結局、しょうもない世界に嫌気がさして退部した。

そんなちょっと変わったきっかけから、マーケティングや経営の話に興味を持ち始め、中学3年生の自己紹介では、いつか自分の町におもしろい仕事を作りたいという夢を話していた。だって、みんな学校を卒業したら、つまらない(ように見える)仕事についていくから。もしくは、ヤンキーになって子供を産んで結婚する。退屈な毎日に、自己啓発本は、渋谷109くらいの衝撃を与えてくれた存在だった。渋谷109なんてアメーバピグでしか見たことがなかったけど。

しかし、ご存知の通り、自己啓発本は10冊程度読めば、だいたい同じことしか書かれていないし、結局、カンフル剤でしかないのだなと高校生で気付く。ただ、まだ経営書の棚にいる自分をかっこいいと思っていたので、マーケティングという聞き慣れない言葉を耳にする。なんかおしゃれだなと思って、限られたバイト代を握りしめて大阪梅田の蔦屋書店でブルーオーシャン戦略を買った。

結局、それを買っている自分が好きだっただけなので、あまり中身は読んでいない。しかし、パラパラめくっているなかで、いろんなキーワードに出会った。マーケットなんて言葉は学校では習ったことがなかった。そんな本を読んでいたら、だんだん周りの友達と話が会わなくなっていった記憶がある。歯科衛生士を目指す友達を見て、歯医者の経営ってどうなってるんかなと考えていた。

そんなこんなで、早熟、ビジネス野郎が誕生し、気付けばMAKERS UNIVERSITYという起業プログラムに合格。なぜかホームレスになり、東京で日々を過ごし、シェアハウスに拾われ、たまたま出会ったとある人に「私の考え方は自己責任論というやつかもしれない」ということを気付かされるに至った。(長すぎるので超簡略化します)

そして、1ヶ月で100冊近くの哲学書や思想書を読み、世界には資本主義というやつがあるらしいということを知った。東京の学生は、資金調達したりしていたけど、私は、マーケティングの4Pなんて言葉も知らなかった。恥ずかしかった。AIDAMAってなんやねん。服のブランドだと思ってたわ。東京の知り合いはみんな実家が都内にあって、恵比寿や六本木まで着いていった飲み会では湯水のようにお金が使われていて、それでも私は自分で苦しみながら学費を払わなければならなかったし、親からの資金援助がしてもらえないので、ずっとバイトをしていた。奨学金借りてる人初めて出会った、ドラマの中の話だと思っていたと言われた。家がない人ともたくさん出会った。丸亀でうどんが買えない時期もあった。全部全部資本主義のせいだと思った。

そんなこんなで、起業を志した私だったけれど、現実を見てどん底に突き落とされていた。「スタート地点からすでに負けている」と実感し、親に泣きついたこともあった。マーケティングなんて、誰かの心を勝手にハックして、操作して、買わせる行為じゃないかとむかついた。

それから、大学に復帰して、なんやかんやあって結局起業したものの、ほぼ営業ゼロ、広告宣伝もせずに、紹介だけでやってきた。なんか、マーケティングが好きになれなかった。SWOT分析も、AISASモデルも色々聞いたけど、人の心を馬鹿にしてるみたいで嫌だった。SEOメディアをやっていたこともあるので、その影響も大きいかもしれない。なんやねん「いかがでしたか?」って。売りたいだけのくせに。

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こんな経験をしていたから、なかなか自分の会社のことでさえ、宣伝したり、マーケティングしたりということに気持ちが動かなかった。分かる人だけ求めてくれたらいいやと思っていた。

でも、そんな時、ずっと大好きだったPodcastをリスナー側ではなく、配信側として始めたことをきっかけに、気持ちが変わることになる。もしドラを読んでいたあの頃くらいからだろうか、定期的にPodcastを聴くようになっていた。まだ出始めのiPod touchで"バイリンガルニュース"とかを聞いていたと思う。超初期リスナー。

トイドクも同じく、分かる人にだけ届けばいいやと思っていた。宣伝もほとんどしなければ、気が向いた時だけSNSに載せようって感じだった。インディーズな感じが好きなので悪くなかった。でも、トイドクを重ねると、だんだん「まだ見ぬ人に届いて、いつかリスナーの人と一緒に収録なんかしてみたいな」と思うようになった。そのためには、数ある番組の中で「ここにいるよ」とアピールしなければならない。マーケティングの登場ではないか。

本当に大切で届けたいものができると、誰かに知ってほしい、一緒にやりたいという気持ちが勝手に湧いてくるものなんだなと思った。

もちろん、人の心を無断でハックするみたいな考え方が嫌いなことは変わらないけれど、誰かに届けたいという気持ちを初めて抱いたかもしれない。お金を稼ぐとか、有名になるとか、そういう次元じゃなくて「見て見て〜〜」と子どもの時に周りの人に言っていたように、楽しいことを共有する手段なのかなと思った。その人たちとおもしろがるためにもっと中身をより良くしようって気持ちも生まれるのかな。

身近に、一緒に問いを楽しんでくれる人が周りになかなかいないから、Podcastを通じて友達ができるといいなと思っている。


▼Spotify以外はこちら
https://beacons.ai/toidoku 

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こんなに書くつもりじゃなかったのですが、気付いたら謎の黒歴史暴露日記になっていました。最初は、ただ、トイドクやったらマーケティング大事やんに変わったみたいな話を書こうと思っていたのですが、もっと根本的なものだったようです。もう少し、この気持ちには向き合うことになりそうですが、案外、PRすることって悪くないのかもなという地点にやってきました。