自らのビジネススキルを向上させようと思ったとき、

どうしても僕らは「これまで誰も考えてこなかった革新的な問いを考えられるスキル」と、「その問いを見事に解決できてしまう新技術の開発スキル」を追い求めてしまいがち、

その両方を同時に提供できる人間が、優秀なビジネスマンであると。

でも、これだけ科学技術が発達し切っていて、インターネットの力によってすぐにそれらが均一化される世の中で、この両方を常に行い続けることにはかなり無理があります。

いつも多大な知識を仕入れていなければいけませんし、新技術の開発にも莫大な予算やコストがかかってしまいます。

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むしろ、いま本当に求められているのは、各現場ごとに存在する些細なストレスや、個別具体的な課題を解決することにあるように思います。

その課題解決に必要なスキルは、上述したようなスキルではなく、そもそもを問い直せる能力、すなわち、当たり前すぎて誰も考えもしなかったという問いを、もう一度ゼロから考え直してみる能力。

そして、その問いに対して、散々使い古されてきた枯れてきた技術をまるっきり異なるこる分野に応用できる、「枯れた技術の水平思考」的な能力。

このようなふたつの原始的なスキルで解決できてしまうことが、世の中の個別具体的な課題の中にはまだまだ山ほど存在していると思うのです。

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具体的に、わかりやすい例でたとえると、たとえば飲食デリバリーの待ち時間の解消。

「注文者の待ち時間のストレスを解消するために、1分でも早く商品を届けるためにはどうすればいいのか」

ではなく、

「そもそも、なぜ人は待ち時間にストレスを感じるのだろうか」から問い直してみる。

そして、この問いに対してウーバーイーツの出した答えは、GPSのような使い古された技術を再利用して、注文者のスマホ画面にその位置を表示させることで、人間の「主観的な待ち時間のストレス」を圧倒的に減らすことに成功したわけです。

結果的に、バイクよりもさらに原始的な自転車の移動スピードであっても、まったく問題なくサービスを提供できています。

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数々の行動経済学の書籍が教えてくれるように、人間の不満解消や満足するポイントというのは、決して合理的ではなく、実は不合理なもの。

普段は全く接しない異なるコミュニティの人たちと直接対話してみることで、私だけに見えてくる根本的な問いがある。

その異質なズレに気がつき、そこに適用できそうな自らにとって馴染み深い技術(道具)を水平利用することで、思いも寄らないイノベーションが生まれていく。

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「そもそもを問い直せる能力」と「すでに古びた技能を他ジャンルで水平的に活かせる視点を持つこと」が、本当の意味でこれから役立つスキルになっていくのだと思います。

知識やお金も必要としない、まさに現代におけるタイムマシーン経営のようなもの。

また、それはローカルに対してより一層効力を発揮するものだと思います。

地方移住や2拠点居住を始めようと考えている若いひとにとっても、今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。