先日、シラスで配信されていた速水健朗さん箕輪厚介さん、そして東浩紀さんの鼎談トークイベント「『意識高い』時代が終わった?──トランプ復活で『極端』はどこに行くか」のアーカイブ動画が、ものすごくおもしろかったです。
このタイミングにきて、箕輪さんがゲンロンカフェのイベントに出演してくれたのは、本当に嬉しい限り。
箕輪さんだからこそ可能となるような、普段のシラスでは決して見られないようなド直球の質問なんかも、非常に新鮮でした。
今日のブログ内容は、このイベントのアーカイブ動画を観た感想になります。
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この点、冒頭で箕輪さんは「僕はずっとゲンロンカフェは出禁だと思っていた」と冗談交じりで語っていました。
それでも、2000年代後半から2010年代前半、東さんが出ていた頃のニコ論壇などの「あのグチャッとした論壇が好きだった」とも語られてもいて、何だかその話に、僕はものすごく共感をしてしまいました。
なぜなら、まさに僕も、あの頃のぐちゃっとしたインターネット論壇が大好きだったから。
具体的には、当時のニコ論壇とかUstreamとかで配信されていた数々の論壇番組。
そこには起業家、哲学者、批評家、政治家、メディア業界人などなど、業界や垣根を超えて集まってずっと議論をしていました。
あのカオスな感じと、グチャッとした感じが本当に大好きで、みんなが何か新しい未来への可能性を感じていて、決して後ろ向きな議論ではなく、これからの日本をどのように変えていこうかと語り合っていた雰囲気が、本当に良かったなあと。
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当時、大学生で時間を持て余していた僕は、深夜にそういう動画ばかりを見ていました。
だから、早くからTwitterも使っていたし、それを活用して海外で就職もして、自分自身でも実際にブログなんかを書き始めて、メディアを立ち上げるために起業したような経緯がある。
もし、あの頃のインターネット論壇の雰囲気が当時存在しなかったら、間違いなく今の自分は存在しなかったなあと思います。
大学では法律の勉強をしていたので、わかりやすく法科大学院へと進み、そのまま法曹の道に進んでいたと思う。
今の自分がいるのは、間違いなく当時の論壇系の配信のおかげだと思います。
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ただ、番組の中でも語られていたけれど、それらもすべて2011年の震災前までの話であって、震災後は一気に縮小をしてしまった。
なぜなら、そんな空中戦の話なんかよりも、目の前の震災や、今起きている課題にどう立ち向かうのかということばかりが語られるようになってしまったから。
また、そのあと一気にSNSも普及したことによって、かつての横断的な対話の場は失われ、ドンドンと各ジャンルごとに島宇宙化してしまった。
結果的に、各業界や界隈ごとのトークイベントがリアル・インターネット問わず行われるようになって、一気に細分化が進んでしまいました。
具体的には、ビジネスはビジネス、政治は政治、批評は批評、リベラルはリベラルみたいな形で別々に集い合うようになり、その中での相互交流が行われることは、その後ほとんどなかったように思います。
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もちろん、それはそれでおもしろかったし、納得感もあったのだけれど、でも当時生まれていたようなシナジーが生まれるわけでもなく、新しい出会いや発見みたいなものが減ってしまっていたなあと思います。
そして、仲間内で「やっぱりあいつら(あの業界)は気に食わないよね」と言い合って、レッテル張りをしあって、集まっている観客の人々も「そんなもんなのかな」と思って流してしまうというような構造が、昨今ずっと続いていたなあと思う。
それがたぶん、冒頭の箕輪さんの「自分はゲンロンカフェは出禁だと思っていた」という話にもつながるのだと思います。
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こうやって一度離散してしまったものは、再び舞い戻ることもなく、このままお互いの棲み分けと分断が淡々と進んでいくのか、それは致し方のないことなのかと半分諦めてもいたわけです。
あの頃のグチャッとした論壇はもう戻ってこないんだろうなあと。
でも、今回このタイミングで箕輪さんがゲンロンカフェに参加してくれて、東さんや速水健朗さんと一緒に鼎談する内容なんかを見ていると、とても新鮮な雰囲気となり、かつなんだかとても懐かしくもありました。
「そうそう、当時もこんな感じだったよね」と。
それは、箕輪さんが意識的に当時の雰囲気を作り出そうとしてくれていたし、そのうえで箕輪さんが新自由主義的な立場に振り切って、持論を展開してくださっていた場面が何度もあったから。
求められるポジションをあえて取ってくれて、かつ編集者視点から、東さんや速水さんに対して、片足土足で踏み込んだ質問くれていたからこそ、お互いの立場の違いから生まれてくる建設的な意見の衝突や議論があったなあと思います。
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箕輪さんご自身も、今は一線から退いて「もう、まな板の鯉じゃなくなったからだ」と仰っていたけれど、箕輪さんの立ち位置も以前とはまた違った形で落ち着いてきたということで、このような場においてもトークができるようになってきたことを考えると本当にありがたい変化だなあと。
そして、東さんやゲンロンカフェのスタンス自体も、ここ数年で大きく変化し、大学や言論人からは適切な距離を置き、東さんの読者層やゲンロンの活動自体も大きく移り変わってきた。
もっともっと地に足がついた感じの哲学の価値や言論の価値みたいなものを、僕ら一般層に向けて、その価値をゼロから広めてくれているイメージ。
そうやって、まさにお互いがちょうどいいタイミングにおいてそれぞれに歩み寄ってきて、合流をしてくれたからこそ、当時の雰囲気がこうやって戻ってきてくれていることを考えると、本当に嬉しい限りだなあと。
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で、きっと、このグチャッとした感じの先に前回もご紹介した「中道」という話にもつながっていくのだと思います。
ここでいう中道とは、以前もご紹介したように「考え方や思想の中立性のことではなく、そこに参加している人々が、多様な政治的立場を持っていて、そのひとたちが同じ空間を共有していること」を指しています。
そこには、お互いの話に対して、ちゃんと好奇心を持って耳を傾け合いながらも、それぞれの立場から意見を言い合い、これからの日本社会をどうやってより良い方向へ向かっていくのかを考えていくような前向きな場所。
有料トークイベントなので、あまり具体的な内容は書けなくて申し訳ないのですが「なるほど!そういうことだったんだ」という発見が今回も非常に多かったです。
「ヤンキー的な文化」に対して勘違いしていたなって部分もあって、とてもハッとするところも多かったです。
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今回の動画は、延長を含めると6時間を超えていたのですが、本当にあっという間でした。
ゲンロンブームは間違いなく来ていると思うし、あの頃の東さんが作り出していたゲンロンの雰囲気が好きだった人からすると、今は本当に新しい機運に期待したくなるような流れが起きてきているように見えます。
やっぱり、今後もゲンロンカフェの向かう先には、非常に強く期待をしたい。
読者や視聴者コミュニティも活性化していきながら、独自のポイント機能なんかもつくると既に明言されているので、コミュニティ的な側面からも本当に目が離せません。
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なにはともあれ、箕輪さんには、これからもゲンロンカフェのイベントには定期的に出演して欲しいですし、ゲンロンカフェの雰囲気をいい感じに壊さず壊しつつ、新しい風を吹かせていって欲しいなあと。
また、できればビジネス書なのか人文書なのか、それすらも全くわからないような、でも衝撃的におもしろい本をつくって、新しい一般層も巻き込んでいって欲しい。
そうすればきっと、将来またここから新しい世代の若い人たちも育ってくるだろうなあと思うからです。
久しぶりに論壇系のトークイベントを観てワクワクしたので、今日のブログの中でご紹介してみました。興味がある方はぜひ、実際に配信もご覧になってみてください。
いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。
2024/11/10 21:28