最近、言論界隈の動画なんかを見ていると、web3やNFT、DAOに対する酷評がなんだか凄まじいなと感じます。

数年前には革新的だと持て囃されたこれらの概念が、AIブームの影響もあり、今では完全に失望されてしまって過去のものとなっているがゆえに、本当に言いたい放題です。

「詐欺師まがいの連中に、世界が騙された」と多くの人が考えていて、もはや真剣に議論する値すらないとさえ思われてしまっているようです。

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一方で、web3推進派は、相変わらず「まだ理解されていないだけなんだ」と、web3バブル崩壊前と、ほとんど同じ主張を繰り返している。

正直なところ、双方が自分の見たいものだけを見ているような気がしてなりません。

これはズルいと思われるかもしれませんが、僕は両者とも正しいことを言っていると思うし、両者とも間違っているとも思っています。

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この点、僕自身の立場は、今も一切変わらずに中長期的には、トークンエコノミーは広く浸透すると思っています。

一方で、AIバブルがやってくる前のweb3ブームは完全に不発に終わってしまったことも、しっかりと認めないといけないとも思っています。

そして、僕がいま大事だと思うのは「なぜトークンは失敗し続けるのか?」を改めて丁寧に考えてみることだと思うんですよね。

今日はそんなお話を少しだけ。

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具体的には、2017年のVALUから始まり2024年現在に至るまで、何度だってそのチャンスはあったはずなのに、そのたびに毎回ずっと失敗し続けてきた理由を考えてみる必要があるはずで。

でも、web3まわりのひとたちは、今までの状況を失敗だとは全く思っていないご様子。

「変化を恐れる一般人が、その魅力をまったく理解することができず、未だにweb2で留まり続けているだけだ」という主張を変わらずに続けていますよね。

でもその感覚自体が完全に、2010年代の幻想であり、何度も可能性があったのに、そのたびに思うように伸びていかなかった理由の方だってもう考えてみてもいいタイミングだと思うんです。

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たとえば、FiNANCiEにおいても、インフルエンサー系のトークンとかも軒並み現状は暴落していて、何かテコ入れが行われるわけでもなく、そのまま放置されているような状態が続いている。

また、市況的にリスク資産に波が来れば勝手に伸びると思うから、今はステイということなんでしょうが、あれだけ煽っておいて、そんな感じなのかと正直残念に思っているひともかなり多いはず。

結局、期待して実際に参加した人々も、大半のひとが含み損を抱えているわけだから、次にバトンをつなげていこうともならないわけです。

次第にログインもしなくなって、完全に塩漬け状態。トレンドの波が繰り返されるということ自体を理解していない人は、ただただ失望してしまっているように見えます。

このような状況が、きっと世間的にはもうweb3は完全に過去のもので、考える価値すらもないと思われてしまっている原因のひとつなんだろうなと。

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とはいえ、もちろんそれは推進派の方々が口を揃えて言うように、トークンの価格の増減は基本的には「自己責任」なんです。

金融資産に投資するというのは、つまりはそういうこと。

ボラティリティの激しいトークンなんだから、そこには余計に落差がある。

でも、そうなるといつも遅れてやってきた情報弱者たちがカモになり続けるだけで、プラスサムゲームにはっていかないわけですよね。

一方でたとえば、今のFiNANCiEなんかの構造的にも、額面的には含み益だらけの人もいたりして、その格差はかなり激しい状態です。

僕自身も、優先購入権をいくつかいただけたので、そのおかげもあり、あくまで額面上は結構な数字になっているけれど、じゃあこれを次のひとにも勧めたいかと思ったら、まったくそうとは思えない。

早くから乗っかっているひとたちだけが、利得を得るだけの構造になってしまっているからです。

逆に言えば、そのような最初から「勝ち確であるひと」を意図的に、合法的に、つくれてしまうのが、FiNANCiEのような仕組みなわけですよね。
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客観的に観たときに、これがただのポンジスキーム的に見えてしまう、この欠点を揶揄してくる人たちに対して「それは、自己責任だから」で逃げないこと。

そこを自己責任で逃れてしまうことができるなら、だったらもっと流動性のある金融資産、たとえば今なら、エヌビディアやパランティアとか勢いのある米国株や、仮想通貨でいいじゃんとなる。

また、より多くを購入している人間が、より多く贔屓されて優遇される構造を欲するなら、都心の不動産やエルメスやロレックスなどの嗜好品、高級車市場などお得意様ビジネスのほうで優遇されればいいじゃんとなる。

そのほうが、よっぽど流動性もあるし安全だし、合理的だ、と。

結局、そっちに舵を切れない種銭のない人々のガチャみたいになってしまっているのが、今のトークンエコノミーの実態になってしまっているのがなんだか非常に残念だなあと。

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そんな危なっかしいところには、資本が入ってこないのも当然のことだし、ガチャ感覚で入ってくる人は握っていられないから、すぐに市場も崩れてしまう。

それでも握り続けてもらうためには、宗教化してカルト的になっていく。

結果として、そこには新しいひとたちが、より入りにくくなる。こうやって、負のスパイラルに突き進んでいくことになるわけです。

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僕は、この失敗続きで、何度挑戦してもとトークンという仕組み自体が、世に浸透していかないフェーズにおいて、本当に大事なことは「自己責任」で逃げないことだと思うんですよね。

そしてここが今日一番強く伝えたいポイントでもあります。

トークンエコノミーやコミュニティ内通貨としての本質的な価値を、今一度再確認する必要があるはずです。

自助でも公助でもない「中間共同体」としての役割、セーフティネットとしての意味を再構築できることこそが、トークンの可能性が持つ一番の強みであって、最も本質的な部分でもあったはずなのです。

これは、他の資本ゲームやマネーゲームではできないこと。

最初の構想段階では、自分たちで手作りの理想的な共同体を生み出せるのが、トークンエコノミーの理想だったはずです。

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だとすれば、勝ち組と負け組がはっきりと分かれてしまうような格差を更に助長するような方向性ではなく、むしろ格差を適切に是正し、心地よいコミュニケーションが循環し、人々が互いに助け合える状態を創出するために使われていくべきだと思います。

そこにこそ、トークンの革新性があると僕はずっと考えている。

今の資本主義にどっぷりと浸かった大企業には絶対にできないことをやらなければ、意味がない。

当然また、アメリカの金利低下によって、リスク資産にお金が流れてくれば、バブルの様相を呈するのだろうけれど、また同様に、金利上昇局面ではバブルはしぼんでしまい、大多数の人たちはその時に含み損を抱えて、その様子を見て世間にはより一層失望感が漂う。

だとすると、安心安全なんてまったく得られない。コミュニティへの信頼感という意味では、真逆の状態がより助長されていくことになってしまうわけですよね。

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つまるところ、コミュニティの可能性を信じて、コミュニティを信頼して入ってきてくれているひとたちに「精神的な安寧」だけでなく「経済的な安寧」をどのようにして、この新たなトークンという仕組みを用いて、構築していくのかってことなのだと思います。

今は、日本円でさえも、インフレや円安で価値が暴落してしまうかもと誰もが不安に思い、年金さえも当てにできず、自らの自己責任で積立投資をしなければいけない時代なんだから。

逆に言えば、この資本主義の負のスパイラル、格差をひたすらに拡大させ続ける仕組みに一石を投じること。

そのうえで中間共同体としてのレジリエンスを高めていく。

そんな風にこれまでにはなかった新たな包摂性を生み出したら、株式や仮想通貨とはまた全く異なる、オルタナティブな役割を担うにはどうしたら良いかを真剣に考えたほうが良い。

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つまり、「情報強者の爆益」と「情報弱者の自己責任」そして、それを背後で差配している「プラットフォームの手数料ビジネス一人勝ち状態」を肯定しているうちは、トークンエコノミーは、きっとこれからも失敗し続けることになると思います。

もしトークンのような仕組みが、世間に大きく広がっていく可能性があるとすれば、方向性としては間違いなく「格差の是正」に向かったほうが良いんだろうなと思います。

とはいえ、これは、web3に早くから参入して、その裏側もはっきりと理解しているひとたちに「その既得権益を手放せ!」みたいなことを言っているに等しいからきっと反発も大きいし、今のままでも上位数%のひとたちにとっては、十分にメリットがあり続ける状態が続くだろうから、自発的には変わろうともしないはず。

「中央集権や既得権益をぶっ壊せ」というweb3構想それ自体が、一番既得権益的な構造を作り出してしまっているというのは、なんとも皮肉な話だなあと思います。

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最後に繰り返しておきますが、僕はトークンエコノミー肯定派であり、これが人々にとってなくてはならないものになっていくと信じています。

世の中には、国家や企業とは異なる無数の「中間共同体」が生まれ、それぞれのトークンを活用して、温かみのある小さな経済圏が発生し、より本質的な豊かさの方向に向かっていく。

中長期的に見れば、その可能性はかなり高いと考えています。

だからこそ、アメリカンドリーム的な格差を広げる仕組みに加担するのではなく、信頼と安心、人と人とのつながりを丁寧に醸成していくような温かみある関係性の構築を担保するものであって欲しいなと強く思うのです。

高度経済成長期の日本的な家族経営のような新しい形を、コミュニティ×トークンで生み出していく必要がある。

結局のところ、それが日本企業の大躍進を生み出したのですから。先人たちの功績にしっかりと学ぶことが、今後の発展にもつながっていくはずです。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。