Wasei Salonの中で、仏教に少しずつ興味を持ち始めているメンバーさんがチラホラいて、すごくいい傾向だなあと思います。

でも一般的に「仏教は、どこから学べばいいのかもわからない」という反応なんかもよく見かける。

ということで今日は、もし僕がいまゼロから仏教を学ぼうとする場合、どのように学んでいくだろうか?ということを、自分なりに考えてみたいと思います。

ーー

さて、最初からまず話が脱線してしまうのですが、現状仏教を学ばずに済んでいるというのは、それはとっても幸せなことだと思います。

それはなぜかというと、仏教というのは本質的に、人生の根本的な「問い」や「苦しみ」、そして「迷い」と向き合うために生まれたような教えだから。

もし、仏教に出会いたいと強く望むような状況になったとすれば、それはおそらく、自分が何か深刻な問いや迷いに直面しているときだと思います。

つまり、仏教が必要になるということは、何らかの「不自由さ」や「痛み」と直面している状態だとも言える。

その意味では、現状この瞬間まで、仏教と出会わずに済んでいるということは、実はとても幸福なことだと僕は思います。

ーーー

だから僕は、誰もが仏教を無理に学ぶ必要なんてないと感じています。

ただ一方で、本気で自分自身の人生と向き合おうとするならば、いつか必ずその問いに出会うタイミングがやってくる。

その時にはじめて、仏教という世界を知ればいい。

それまでは出会わなくて済んでいるのであれば、出会わないままのほうがいい。本当にひとそれぞれだと思うんですよね。

ーーー

きっとこれは喩えるなら、おじさんの喩えになってしまって申し訳ないのですが、マンガ『HUNTER×HUNTER』の世界で「念能力」を知っているかどうか、みたいな話。

念能力というのは、その存在を知らなければ知らないままで全く問題ないけれど、一度その存在を知ってしまうと、もう後戻りができない。それを「知らない」ころには戻れなくなってしまう。

とはいえ、じゃあ、あの物語のなかで念能力を知らないということは不幸なことなのかと言えば、決してそうではないと思うのです。

主人公であるゴンのおばさんのミトさんの暮らしが、あの物語の中で一番平穏で豊かな暮らしであることは、きっと間違いない。そんなミトさんは、念能力のことなんて全く知りませんよね。

ーーー

仏教というのは、良くも悪くも、人生という道を真剣に歩もうとするときに、必ずその道を通らざるを得ない場所、僕の中ではそれが仏教という認識です。

特に、日本の思想、歴史、宗教、慣習、文化、そういうものを通るときに、仏教は避けては通れないもの。

文学で言えば夏目漱石、映画で言うと黒澤明、漫画で言えば手塚治虫、アニメで言えば宮崎駿、有無を言わさずに必ず通るところ。好き嫌いはあれど、それを通らずして、そのジャンルを語れない。

知っている人からすると「あっ、まだ通ってないんだ」という感じであって、でもそれは通ってないことも全然構わないし、幸せなことだと思うというお話です。

ーーー

さて、ここからは、それでも出会わないと人生が始まらないんだと思った人向けの話であって、今、仏教に興味がなければ、スルーしてもらったほうがいい内容だと思います。

で、まず多くのひとがやりがちなのは、最初から本屋さんや図書館に行って、仏教の超入門的な本を手に取ること。

でも、それが結構な落とし穴だなとも思います。

仏教にはさまざまな宗派があって、なおかつ「嘘も方便」が許されるのが、仏教の世界。

入門的な本は「そんな言い方でいいの!?」って思うのもいっぱいある。優しく、わかりやすくしすぎるために、逆に勘違いさせてしまわないかと不安になる。

ーーー

たとえば最近だと『自分とか、ないから。』という東洋哲学の入門書が書店では売れているみたいです。

僕もこの本をAudibleで途中まで聞いたのですが、正直、自分にはこの本の良さがまったくわかりませんでした。

「なぜナーガルジュナ(龍樹)と、現代のひろゆきを比較しなければいけないのか」と、意味がわからないなあと思って途中で聴くのをやめてしまいました。

でも、この本が素晴らしいという人も、すごく多いです。だから実際にこれだけ売れてる。そして僕はそれをまったく否定しない。

それぐらい仏教っていうのは、百花繚乱、それぞれのクセが強い。そしてそのクセこそが魅力のように捉えられている分野でもある特殊なジャンルだと思います。

だから、僕も仏教について専門家でもないにもかかわらず、自分の意見を堂々とこのブログにも書いているわけです。

たとえば、これがキリスト教とかになってくると、また全然話が変わってくる。ブログに書きたくないし、書けないなとも思う。

ーーー

で、もちろん、全く同じような理由で、YouTubeの仏教系のチャンネルとかも避けたほうが無難だと思います。

短時間でわかりやすく「まとめた」動画というのは、必ずしも深い理解を助けるとは限らないからです。むしろ、誤解を招くことにもつながってしまう。

「じゃあ、おまえのオススメは一体何なんだ?」と思うかも知れませんが、

こんなにも普段から読書を進めていながらも、意外にも「書籍」からは入らないことだと思います。そこで、僕がオススメしたいのは、NHKの「100分de名著」です。


実はこの番組にも、仏教関連の配信回が、たくさんある。

たとえば、「ブッダ    真理のことば」や「ブッダ    最期のことば」など原始仏教にまつわる回があります。

また「般若心経」「維摩経」「法華経」などのお経の回もありますし、ほかにも「親鸞の歎異抄」「道元の正法眼蔵」「日蓮の手紙」などもあります。

まずは、このあたりを一通り観てみることを強くオススメしたい。

この番組の良いところは、専門家が丁寧に、でも分かりやすく解説してくれていることです。

初心者向けながらも、決して安易に単純化をしすぎない。大衆迎合的にキャッチーな、今流行りの変な具体例なんかも持ち出さない。

まずはNHKオンデマンドなどを契約し、この番組を10時間ぐらい視聴して、仏教のあらすじを掴んでみると良いと思います。

ーーー

そこから、さらに復習がてら書店で売っている「100分de名著」のテキストを実際に手にとって読んでみる。このあたりからやっと読書という行為で理解してけばいいと思うんですよね。

さらに、そのあとに同じくNHKブックスから出ている「学びのきほん」のブックレットに流れればいい。

こちらも、仏教関連の本がシリーズの中で既に数冊出ている。最近も『みんなの密教』が出版されたばかりです。


あとは、この「学びのきほん」シリーズには巻末にブックガイドのリストがついている場合が多いので、そこから芋づる式に関連図書を読んでいくといいかと思います。

ーーー

もちろん、100de名著の解説者の方々の、他の書籍に流れてみるのもいいと思います。

とはいえこのタイミングだと、すでに読みたい本が逆にありすぎ困るという状況だと思うので、あとは興味が赴くままに色々と手にとってみて、自由気ままに学んでみればいい。

また、座学だけではなく、奈良や京都など、仏教の総本山に実際に訪れてみて、今も実際に生きている仏教を、生で体感し、感じてみるというのもいいのかなとは思います。

ーーー

今の時代に「仏教」を学ぶには、個人的には、この順序は一番良いなと僕は思います。

下手に迷わされることがなく、なおかつ、最初から極端に変な道に迷い込まされることもなく、網羅的に仏教の全体感から知ることができるはずだからです。

もちろん、これもあくまで僕の「嘘も方便」であって、きっと批判的なひともいるとは思います。

でも、自分自身が試行錯誤してきた中で、この道が一番通りやすそうな道だなあと思ったので、今日改めてご紹介しておきました。

ーーー

ただ、もう一度最後に強調しておきたいのは、まだ仏教に触れずにいられているなら、それはそれで幸せな状態だということ。

人生の道を歩んでいて、もしあるとき「どうしても通らなければならない」と感じたら、そのときにこそ仏教と出会ってほしい。

そして、仏教に触れてしまったら、もう後戻りはできない。それは繰り返しお伝えしておきたいと思います。

だからまだ触れなくていいや、と思ったらドンドン先送りすればいいし、こんなブログなんかも、このまま素通りすればいいと思います。間違いなくそれが一番幸福な状態です。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、何かしらの参考となっていたら幸いです。