「人格の一貫性を貫けない」
「場面ごとに、異なる自分が現れて、ついつい事なかれ主義的に振る舞ってしまう」
そんな自分に強い違和感を感じる若い人は多いかと思います。
自分もまさにそのひとり。
では、なぜ人はそのように振る舞うようになったのでしょうか。
それはきっと、そのように振る舞ったほうがちゃんと得する理由(メリット)があったからだと思います。
つまり、インセンティブの問題。
今日はそんなお話を少し書いてみたいと思います。
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この点、一番大きい理由はやっぱり「お金」の問題です。
相手との関係性を長期的に構築し続けることよりも、その場ごとにお金を交換し、弁済義務を果たしてもらって関係性を断ち切ったほうが良いと、誰もが信じて疑いません。
それがお店の接客の良さや愛想の良さにもつながっています。
では、そもそもなぜ人は、お金を使って相手との関係性を断ち切るようになったのでしょうか。
一番大きな影響は産業革命以降、人々の流動性が激しくなったことだと思います。
それまで多くの人々は村社会の中で生活し、お互いの顔と名前が一致する社会に生きていました。
しかし、工場労働をするために、みんなが都市に出稼ぎするようになり、各農村出身者が都市生活を始めて人でごった返すようになると、場面ごとに出会う人間が全く異なるようになってきます。
このような流動性が激しい匿名性が高い社会では、一度債権回収を怠れば、もう一生支払ってもらえなくなる可能性が出てくる。
だから、「いま」この場で支払ってもらう必要があったのでしょう。
そのために人格の一貫性よりも、いま私にとって一番都合の良い振る舞いをしてもらうことが、全員の優先課題となったわけです。
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逆にいえば、そんな匿名性が経済の流動性を活性化させたとも言えます。みんな「早く弁済して欲しい」と願うから、お金がどんどん循環した。
この時に、属人性という面倒な概念は排除し、誰でもお金(資本)さえ持っていれば、サービスが受けられるという、まさに現代のような社会が完成しました。
ここから人間は、一番経済合理性に従った労力の少ない態度や性格を、各場面ごとに応じて選び取るようになったのだと思います。
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本来、相手との間に長期的なメリットを生み出し、信頼関係性を構築することは、非常に面倒くさい作業です。
ものすごく時間と労力が必要となる。全くもって経済合理性に見合わない行為です。
だから、いま目の前にいる相手から刈り取れる部分を最大限に刈り取って、早々に関係性を断ち切ろうとしてしまう。
それが一概に悪いとは思いません。上述したように、経済の流動性を劇的に高め、それで社会が発展していったのだから。
ただし、これだといつまで経っても人間同士の「信頼関係」が積み重なっていかないのです。
各人がいつまで経っても、ひとりひとり完全に孤立したままとなる。
きっと、そこに強い違和感を感じている若者が増えているのが現在なのでしょう。
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これを解決するためには、インセンティブ設計自体を変えることが必要不可欠になってくる。
「長期的に付き合い続ければ付き合い続けるほど、お互いが得するし、ワクワクするよね」と思えるような関係性をどのようにつくり出していけるのか。
具体的には「いま目の前にいる他人から1万円もらうよりも、長期的な仲間となって、10年かけて一緒に100万円を産みだし、2人で山分けしたほうがお互いに得だよね」と思えるような。
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たとえば、学校の先生なんかが「事なかれ主義」に陥り、何事もない中で早く生徒が卒業してくれれば、それが一番自分にとって都合がいいことだと思ってしまうのは、仕方のないことだと思います。
現代社会において、両親からのクレームや炎上リスクなどを勘案すると、わざわざ生徒の機嫌を損ねてまで寄り添うメリットなんて何もないですからね。
でも、その子が将来大きく出世すれば、自分にもメリットのあるような長期的な仕組みを生み出すことができれば、また違った関わり方を根気よく行う教師も生まれてくるかもしれません。
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いまは、この部分が完全に本人の倫理感や道徳感、信念におんぶに抱っこで丸投げ状態です。
善行を積むことが、人生の中で上位概念にある信仰を持ち合わせているような人間しか、そんなことは行わない。この宗教が形骸化している世の中で、そんな人間は稀です。
それが、これからはブロックチェーン技術などを用いて、長期的に、そして自動的に繋がり続けるようになるかもしれない。テクノロジー的な後押しによって、これから劇的に人間関係が変化してくる可能性は大いにあり得る。
というか既に、世界はそちらの方向に間違いなく向かっていると思います。
だとすれば、今この瞬間から「この人たちと分かち合いたい」と思える者同士で、お互いに信頼関係を構築していく練習をしていったほうがいい。
そのほうが間違いなく経済合理性的にも、得する世の中になっていくのですから。利他的になればなるほど、最後は自分にメリットが還ってくる世の中が、本当の意味で到来しつつあります。
今日のお話がいつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、何かしらの参考となったら幸いです。
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2022/04/22 11:20