どうしても僕らは、確固たる「理想の共同体」のようなものがこの世には存在すると思いがち。

ここで言う共同体とは、そのまま地域や国家、社会と置き換えてみてもいいと思います。

政治家に「美しい国」なんて掲げられて政治を行われてしまうものだから、ついついその崇高な目標が明確に存在するのだと思ってしまうのでしょう。

僕らが圧倒的にこの世に遅れてきた存在である以上、それは仕方ないことなのかもしれません。

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でも、実際のところはやっぱり「理想の共同体」なんてものは存在しない。

その証拠に、この国の憲法(法律)は、歴史の中でさまざまな形態を試してみてきた結果、最終的に辿り着いた最優先事項は「個人の尊重」でした。

その個人の尊重が対立するときだけ、公共の福祉に反しない限りで個人の尊重を制限しようと定めた。

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ここでもし仮に、「理想の共同体」というものが明確に存在するならば、

最優先事項は、その理想の共同体を実現するために実現不可欠な「何か」であり、「個人の尊重」よりも先に優先されるはずです。

たとえば、戦時中の「天皇主権」のように。

しかし、そうじゃない。

この確固たる事実は、ある意味で国及び人類の歴史が「理想の国家(共同体)なんてものは存在しませんよ!」と白旗を挙げている証でもある。

つまり、社会のために個人があるのではなく、個人のために社会があるということは明白になったわけです。

あくまでも、集団をなす個々人の理想の先に、その結果としての「理想の共同体」が立ち現れてくるだけ。

決して「理想の共同体」という崇高な目標が先立つわけではありません。

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ただ、ここで非常に厄介なことは、最優先されるその個人に、個人としての生きる意味(理想)が明確に存在しなかったということです。

万人に共通する生きる意味は、逆説的ではありますが、「死なないこと(食うに困らないこと)」だけでした。

この消極的な目的だけが人類に共通している目的。

だからこそ、戦後75年間の日本はあくまでこの「食うに困らないこと」という共通の目的のもと共同体をつくり出し、団結してきたわけです。そのために必死で経済発展もさせてきた。

そして、めでたく「食うに困らない」という目標も実現してしまいました。

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さて、困った。

目指すべき「理想の共同体」も存在しないことが判明し、「個人の尊重」で最優先される個人にも、生きる意味(理想)などないことがわかった。

その上で消極的な目的である「食うに困らず、死なないこと」もすでに達成してしまったのです。

これが今の日本の置かれている状況であり、世界の先進国が共通して抱えている問題でもあると思います。

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この点、日本人はどうしても、集団に対して奉仕することで、自らの生きる意味として確立させようとしてしまいます。

主従関係が逆なのです、どうしても封建制度のクセが抜け切らない。

ただ、きっとそれはある意味で正しいのだと思います。

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ぐるっと一周して来て、非常にわかりづらい話になっていて本当に申し訳ないのですが、それがきっと正しい姿。

個人の生きる意味がない以上、結局のところ「他者への貢献感」に行き着くしかないのでしょう。

つまり「集団への奉仕」となるわけです。

ただし、それは各人の主体的な意志で行われるべきものであって、国家や共同体から求められる義務であってはならない。

自ら主体的、能動的に共同体に奉仕していくときに初めて、人間としての生きる意味が立ち現れてくる。

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この点、「一身独立して一国独立す」という福澤諭吉の言葉を思い出さずにはいられません。

個人的にはあまり好きな言葉ではなかったのですが、いま改めて本当の意味するところを理解できたような気がします。

現在開催されているオリンピックのよう擬似的な祭典も、「美しい国」という耳障りの良い言葉も、あくまでもそのことを私たちが気づかせるための「方便(フィクション)」に過ぎない。

自ら主体的に共同体へ貢献したときに感じられるその高揚感に対して、「そうそう、それのことだよ」と体感的に伝えるための擬似的な体験装置に過ぎないということです。(RPGゲームを通して、人生を擬似体験して学ぶようなもの)

でも僕らは残念ながら、物心つく前からその方便としての体験装置だけを目の当たりにして生きてきてしまった結果、その「方便」こそが生きる目的それ自体だと誤解してしまっている。(多くの大人たちがそう信じてしまっているから、余計に気づけない)

でも本当はそうではない。自ら主体的に奉仕したいと思える共同体を創り出し、能動的に貢献していくときに初めて、個人としての生きる意味が立ち現れてくる。

だいぶまわりくどい書き方をしてしまいましたが、この記事を読んでくれた方々に少しでも今日の意図するところが伝わってくれたら嬉しいです。