私たちの “はたらく” を問い続ける対話型コミュニティWasei Salonのインタビュー企画「わたしの一歩」。この企画では、サロンメンバーが踏み出した一歩に触れながら、その人の人生や考えについてお話を伺っています。
今回のお相手は、たっけさん。ブロガーとしての発信、暗号資産・ブロックチェーンメディア「あたらしい経済」の立ち上げ、監査法人での勤務など、多様な領域を行き来してきた彼が現在見つめ直しているのは、「自らの感覚」と「これからの選択」について。
監査法人での勤務を終えた彼は、いま改めて、自分自身と世界との関わり方を問い直しているといいます。そんなたっけさんがこれまで歩んできた一歩と、これからの一歩について、彼の悪友・三浦 希が聞きました。
竹田 匡宏(たけだまさひろ)
通称:たっけ
8月14日生まれ。兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。暗号資産・ブロックチェーンメディア「あたらしい経済」の立ち上げ参画、監査法人での勤務を経て、2025年7月から暗号資産取引所「ビットバンク」にて事業開発者としてのキャリアをスタート。
「正解のない問い」に向き合いながら、“おもしろさ”を探し続ける
ーー 今日はよろしくね。お酒の席で膝を突き合わせることはあっても、こうして「取材」をすることは初めてだから、正直少し緊張してるよ。
そうやなぁ、三浦くんとは酒の席が多かったから(笑)。俺らが出会ったのは、それこそWasei Salonで出会ったのがきっかけだったよね。初期の21人として選んでもらってから初めて会って、意気投合してさ。
ーー そうそう。今のWasei Salonには、僕のこともたっけ君のことも知らないメンバーがいるはずだから、みんなに向けてぜひ自己紹介をお願いします。
本名は竹田匡宏(たけだまさひろ)で、「たっけ」と呼ばれることが多いね。2025年7月までは監査法人に勤めていて、現在は退職したばかり。いろんなことに再チャレンジしている時期です(2025年7月からは暗号資産取引所を運営する「ビットバンク」に勤める)。
ーー これまでのキャリアで言うと、たっけ君はどんなことをしてきた?
これまでのキャリアをざっくり振り返ると、最初はブロガーとして活動していて、その後、暗号資産系のメディア立ち上げに関わりました。最近では、身体性を取り戻したいという思いでボクシングを始めたり、旅をしたり。また、昔から書くことや話すことが好きで、ブログや文章を通じた表現、最近始めたVideo Podcastなど、さまざまなアプローチで「発信」を続けています。
ーー 本当に、さまざまなことにチャレンジしているよね。そのバイタリティって、どこからくるんだろう。「やってみよう!」と思うこと、つまり「新たな一歩を踏み出すこと」のきっかけ、というか。
やっぱり、何につけてもワクワクしていたいんよね。新しいことに挑戦したり、それを続けていくことによって、自分の心をワクワクさせ続けられる、というか。関西出身なのもあって、何かにつけて「おもろい方」を求めるような心持ちもあるのかも。衝動的に動いてしまうことも多いけれど、その時はいつも、素直な心に従っているような感覚かな。
ーー それで言うと、これまでのキャリアで「もっとも大きな一歩」はどんなものだった?
実は僕、大学に8年間通ってたんだけど(笑)、大学在学中、7年目に差し掛かる頃に暗号資産メディアの立ち上げに関わったことは、俺にとってものすごく大きな一歩だったな。当時はブロガーとして活動していて、暗号資産についての記事を書くうちに、Twitter(現:X)経由で編集者の方から「一緒にやらないか?」と誘ってもらったんだ。
その頃の自分にとって「暗号資産」は、ただの投機対象というよりも「新しい社会的な信頼の仕組み」としてすごくおもしろいものだった。ビットコインなどの無国籍通貨は、“国家” ではなく “人々の信頼” によって価値が決まるんよ。そこにすごく惹かれたね。情報とお金が密接につながる世界の中で、そこに自分がどう関わっていけるかを試したくなってさ。ただ一方で、「個人ブログ」と「メディア」の違いに悩むこともあった。
ーー たしかに、個人のブログを書くことと、メディアとして書くことは、かなり違うよね。前者には「属人性」が求められがちで、後者には「標準性」や「公共性」が求められるような。
自分が言いたいことだけを言っていればよかったブログと違って、メディアには公共性や客観性が求められるんよね、本当に。いわゆる「自分の視点」がどこまで通用するのか、自分の言葉にどこまで責任を持てるのか、そんな葛藤の中で、初めて「社会に向けて発信するとはどういうことか」を深く考えさせられたよ。
ーー 表現にともなう、責任というか。
実はその頃、個人でブログを書いてお金を稼ぐことに対して、どこか違和感を抱いていたのもあって。「これは本当に人の役に立っているんだろうか?」「誰かを損させる情報を広めていないか?」といった感覚が、強くあったんです。
暗号資産という、まだ確立されていない分野にこそ、信頼性と誠実さが必要だと感じたし、だからこそ、個人ではなく “誰かと共に” メディアをつくるという道を選んだんですよね。それが自分の中で、価値観が大きく変わった瞬間だったなぁ、と。
ーー メディアとして発信していくとはいえ、そのような業界だと、個人の言い分や意見としての側面も持ち合わせていなくてはならないはずだよね。
まさに。メディアに関わったことで、自分の “発信” が誰かを変えてしまうかもしれない。そんな可能性をリアルに感じるようになりましたね。だからこそ、自分の言葉に対してはいつも慎重でありたいし、時には社会の変化を受け止めながら柔軟に自分の意見を更新していく必要があると思っていて。
ーー “個人” でありながらも、社会あるいは会社としての “集団” のうちの一人でもある、という。その狭間で揺れることは、実に「葛藤」を生むのではないかなぁと思うんだよなぁ。
それも、すごくあった。僕はとにかく「自分語り」が苦手な人間なんよ。「せっかくならおもろい方がいい」じゃないけど、僕自身、つまり “個人” に関する話をすることが、そもそも相手にとっての「おもしろさ」に繋がるんだろうか、と感じている部分が大いにあって。
言い換えれば、「僕の自分語りを聞いて、相手はおもしろいんだろうか……?」とか、「自分語りをするぐらいなら、ちゃんとおもしろい形でなければならない」とか、そういった気持ちはいつもあるね。それがゆえに、自分語りができないのかもな、とも思う。
その「おもしろさ」は、社会性がいつも求められるメディアの仕事だったり、公共性が強く求められる監査の仕事だったり、そういったシーンではあまり必要のないものとされがち。自分が監査の仕事を離れたのは、ある種 “反発” 的なものもあったのかもなぁ、と思うね。それがすべてではないにせよ。
人生って、案外「正解のない問い」ばかりだから。だったら、まずは動いてみて、やってみて、自分の中に「実感」をつくることが何より大事なんじゃないか。そんなふうに考えるようになりました。
「トライアンドエラー」の感覚を取り戻すために
ーー 今は、どんなことに取り組んでいるんだろう?
いま(2025年7月初旬、取材時)は “再起動期間” と呼べるようなフェーズだね。2025年6月に監査法人を退職して、いまは一旦無職。有給休暇をフルに楽しんでるよ。次のキャリアとして決まっているのは、暗号資産取引所を運営する「ビットバンク」への就職かな。
ーー もう一度、暗号資産取引の世界に戻ることを決めたんだね。
監査の仕事は、社会的には正しいとされることや、整った枠組みの中で働くことが求められる環境だった。「貸借対照表」だったり「損益計算書」だったり、数字としての “正しさ” こそが求められる感じ。
でも、自分にとっては「トライアンドエラー」こそが生き方の根幹なんだよね。そういった “失敗を許されない世界” にいると、挑戦することすら難しくなってしまうのかなぁ、と思って。だから、もう一度「自分で選び、自分で決める」感覚を取り戻すために、まずは仕事を辞めてみることにした。そして、昔、自分の心をワクワクさせられた「暗号資産」の領域に戻ってみようと思ったんだよ。
いまは、ボクシングをしたり、知らない街を歩いたり、旅に出たりしていて。動きながら休んでいる感じかな。身体を動かすことで “野性” を取り戻したいという思いがあるんよね。都市での生活はとてつもなく便利だけれど、感覚が鈍ってしまうような部分もある。だからこそ、意識的に自分の身体と感覚を研ぎ澄ませたいと感じていてさ。
ーー たっけ君がオーストラリアへ旅行に行く時、「野性を取り戻すんや!」と言っていて、めちゃくちゃ笑った覚えがあるよ(笑)。それも、ある種の「制限からの解放」だったのかもね。
本当にそうかもしれない。監査の仕事については、嫌で辞めたのでは決してないのだけど、ある種の “制限” が自分にのしかかっていた感覚は、確かにあった。いわゆる「トライ」があまり無い環境だった、というのは大きいかも。
知らない町をひとりで歩いてみたり、寿司屋のカウンターでマスターと話し込んでみたり、ふだん出会わない人との会話の中で、思ってもみなかった自分の言葉が出てくることがあって。「あ、自分って結構制限してたんやな」と思うことがたくさんある。その瞬間や感覚が嬉しくて、旅を続けているんだよね。
ーー Wasei Salonには、どんな思いで参加してる?
Wasei Salonに入ったのは、もう何年も前。初期メンバーとして選んでもらったのがきっかけだったね。
ーー あの頃は、そりゃもう、ハチャメチャにやってたよね。懐かしいよ。
とんでもなく飲みまくってたよな(笑)。当時はまだ “荒野” みたいな感じで、とにかく集まった人たちで自由に語り、遊び、たらふく酒を飲んでは、挑戦していた。正直、何が目的で何をしてるのかよくわからないまま、でも、それこそ「おもしろそうだから」という理由で関わっていたかな。
ーー あの感覚が懐かしくて、たっけ君に「そろそろ戻ってこい!」ってメッセージを送っちゃった。
あれはかなりうれしかったよ。久しぶりに参加して感じたのは、「場」の成熟、だね。以前よりも、みんなが自発的に動いていて、「この場を良くしたい」というような気概を持ったメンバーがたくさんいるように思える。そういう場所には、やっぱり居たくなるからな。戻ってきてよかったと思ってる。
ーー 具体的には、どんな時に「戻ってきてよかった」と思う? 僕はもはや、Wasei Salonでたっけ君が何かしらを発するたびに「おかえり!!!」って思っちゃってる(笑)。
それはさすがに言いすぎやろ(笑)。戻ってきてよかったと思う時、かぁ。よくよく考えてみれば、この場所にいることで、自分の話を安心してできるようになったり、他のメンバーたちの話に自分もしっかり耳を傾けられるようになった気がするんだよね。
そんな仲間と一緒に、これからも一緒に過ごしていきたい。静かだけど、確かなつながりがあるなぁと思ってる。それは、初期の頃も今のWasei Salonでも、変わらないね。
「量」を重ねたからこそ知る、「質」を求める覚悟
ーー 抽象的な質問になってしまうのだけど、たっけ君は、これからどんな“一歩”を踏み出したいんだろう。仕事としては「暗号資産」の領域に戻ることになったけれど、いわば「竹田匡宏(たけだまさひろ)」という一人の人間として進めたいのは、どんな一歩なんだろうな。
「絶対にこうだ!」という正しさだけでなく、「AとBのあいだには何があるだろう?」と問い続けるような態度を持ち続けていたいかな。正しさは時代とともに変わるものだからこそ、自分の中の「正しさ」も更新していきたいし、過去の自分さえも否定できる勇気を持っていたい。
ーー 過去の自分さえも、否定できる勇気。
習慣化やルーティーンを大切にしながら生きてきたんだ。ブログの毎日更新や、2024年6月に取得した資格「米国公認会計士(USCPA)」の勉強なんかもそう。ひとつの物事を継続することにとことん集中してきた実感があるんだけど、ただ、そこにおいても「やってみなきゃわからないこと」というのは確かにあって。『量は質を凌駕する』という言葉の理解とともに、「質がともなっての量だ」と感じることもある。それは「量」を必死に重ねてきたからこそわかったことなんよね。
ーー うん、うん。実際に行動してみなきゃ、それには気付きにくいよね。
そう。俺は、趣味として始めたボクシングで、そのことを強く感じた。正しい「質」をともなった上での、量。その大切さに気づいたよ。目標に向かって地道に進むための「型」を持つことが、自分にとっては必要なんだよな。ブログを毎日書いたり、時には禁酒をしてみたり、資格のための勉強を続けたり。
たとえば、ある時、鳥井さんと一緒に「禁酒してみよう」と決めたけど、自分にとっては「お酒の場で誰かと一緒に時間を過ごすこと」が大切だったりすることがわかってからは、禁酒することを諦めたんだよね。そんなとき、潔くルールを手放すこともまた、自分を信じる行為だと思う。一応、鳥井さんにはしっかり謝ったけどな(笑)。
これからも、たくさんの挑戦を通じて、常に心を躍らせながら生きていきたい。自分の足で世界を歩きながら、その途中で出会った人たちと何かを共有できたら、それがきっとまた新たな次の一歩になっていくと思う。いつもワクワクしながら、楽しく歩んでいけたら、それがベストかな。
【編集後記】
懐かしいな、と思った。Wasei Salonで初めて会った時に「コイツとは間違いなく一生仲良くいられるだろう」と感じたのを思い出しながら、酒匂にまみれた語らいの日々を思い起こしながら、彼の声をじっくりと聞かせてもらった。あの頃は「飲み会」。今回は「取材」。名目こそまるっきり違えど、相変わらず楽しい時間だった。あの頃から、なんにも変わってなどいなかった。
それぞれの心持ちも、笑う表情も、その声色も、な〜んにも変わっていなかった。変わったのは、ただただ、置かれた環境だけ。たっけ君はあの頃から全然変わらず、実にパンクっぽく、熱狂と沈静の狭間で揺れながら問い続けているような奴だった。昔から一切変わらず、やっぱりいい男だった。取材後、酒場へ向かう足取りすら、昔と同じで懐かしかった。
変わったのはもうひとつ、歳をとったせいか、なんとなく酔いやすくなってしまったことかもしれないね(取材後は大泥酔であまり記憶が無いよ)。これからもずっと仲良くいよう。千鳥足のヨタヨタ歩きでも、一歩一歩、互いに楽しく支え合っていよう。よろしくな。
取材・執筆:三浦 希
写真:菊村 夏水
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