Wasei Salonが発足当初から使わせてもらっているコミュニティプラットフォーム・オシロに待望の新機能「コミュニティ内の本棚機能」が追加されました。

Wasei Salonは、長らく読書会を開催してきたコミュニティでもあるので、一般リリースよりも前に、実験的に先行リリースで使わせてもらっています。

そして、これが本当に素晴らしい機能だなと感じています。

イメージとしては、オンラインコミュニティ内にウェブサービスの「ブクログ」や「読書メーター」が埋め込まれたような形を想像してみてもらえると、きっとわかりやすい。

まずコミュニティ全体の「みんなの本棚」があり、
https://wasei.salon/bookshelf

「私の本棚」はそれぞれのプロフィール欄から直接見ることができます。
https://wasei.salon/profile/1042f414530e

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で、この機能の構想については、以前から聞いていました。

読書会を頻繁に開催しているコミュニティの代表として、CTOの方にも一度ヒアリングもしてもらっていたので「本当にいつか実装されたら嬉しいな」と、ずっと楽しみにしていた機能でもあります。

とはいえ、まさかこんなにも早く、しかも想像以上の完成度で形になるとは思っていなかったです。

そして、実際に今回ベータ版を触ってみて、すでにめちゃくちゃ良い機能だなあと感じています。

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メンバーの三浦希さんもタイムラインに書かれていたけれど、この機能が生まれたことで、自然と「何の本が登録されているか」「他のメンバーがどんな本を登録しているか」「そしてそのひとが一体、何の本を1冊目に選んだのか」など、興味関心を抱く幅も、一気に広がった。

冷静に考えてみれば、インターネット上にはブクログや読書メーターのような似たようなサービスがすでにたくさん存在しているけれど、そういった「知らない誰か」の本棚を、わざわざ見に行こうとはあまり思わないんですよね。

同じコミュニティに所属していて、なおかつ似たような価値観や関心をどこかで共有している「共同体の成員」だからこそ、その人の本棚が気になるんだと思います。

しかもコミュニティ内で完結するから、余計に興味を持つことができる。

もしこれが、メンバーが個人で読書メーターを使っていても、そこまで興味は持てないんだと思います。それは「別界隈」での話になってしまうから。むやみに覗かないことが逆に相手への敬意にもなる。

ここも現代の本当におもしろいところだなあと。

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あとは、これは結果論だったとは思いつつ、本棚機能は漠然とした曖昧さのままリリースされたことが、本当に最高だったなとも思います。

今はまだ、自分の本棚が単純に提供されているだけ。そして、そこに登録された本が「みんなの本棚」にも自動的に表示されるという機能だけ。

それゆえに本棚に対する意識も、各人でまったくバラバラです。

具体的には、自分の読書「ログ」なのか、他者への「オススメ」一覧なのか、自己の「アイデンティティ」の提示なのか。

同じ本棚機能でも、まったく異なる目的で使われていることが、非常に興味深い。

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この曖昧さのなかで、それぞれが考える「こう使いたい!」という視点によって、さっそくドンドン使われ始めることが、なによりもおもしろいことだなあと思うのです。

これは会社や学校など、上意下達型の組織じゃ絶対にありえない。コミュニティならではの楽しさだなあと。

これからも積極的に「こうやって使ってください」は絶対に言わないでおこうって決心しました。

それよりも、このとにきに大事なことは、お互いの敬意と配慮と親切心。

そこから逸脱してさえいなければ、ほんとうに何をしてもいい雰囲気を大切にしていきたい。

大事なことは、「あなただったら、どう使いたいですか?」という問いであり、そのときに自分がコミュニティ内に投稿したい価値とは一体何か?を楽しく考えてもらうことが大事だと思うからです。

このことについて考えるタイミングですでに、コミュニティへの能動的な参加が始まっているような気もしています。

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とはいえ、同時に、この「みんなの本棚」機能からのさらなる広がり方が明確に具体的に見えてくることも、本当に素晴らしいなと感じています。

聞いたところによると、登録した本のステータス(読みたい、積読、既読)なども既に登録できるので、これもまた今後何かしらの形で表示される予定らしいです。

あとは、個々人の「バイブル」や「オススメ」も、もしかしたらそれぞれに分類できるようになるかもしれないとのこと。

こうやて本棚が生まれたことによって、どの角度からでも広がっていく可能性が秘められている。

そしてそれは、どれも「コミュニティ内の人と人を丁寧に優しくつなげるもの」になるのも本当に理想的だなと感じます。

ここが何よりも大きなポイントだと感じています。

本のログを付けていくようなオンライサービスは既にたくさんあるのだけれど、先にコミュニティが入口となって、そのコミュニティの中にこのようなログサービスがあることの価値が、本当に計り知れないなと思うのです。

その順序が異なるだけで、まったく違う意味合いを持つという発明。

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この点、現代の新しいサービスというのは基本的に、AIによってそれまでつながっていた人と人同士のつながりを「コスト削減」という名目のもと容赦なく分断する機能ばかりです。

海外に限らず、日本の会社においても、AI前提の社会を見据えて、リストラが増えていることがソレを象徴しているかと思います。

そして、そのAIによって作り出されたAIによるショート動画やマンガのようなものを薬物のように見立てて、アディクトするものをつくりましょうという呼びかけばかり。

もう分業で作る必要もなければ、わざわざ共同体感覚を抱く必要さえなくなってきているのが現在地なわけです。

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仮に人間同士が協力する場合であっても、山口周さんがいつも主張されている4つの資本「時間資本、人的資本、社会資本、金融資本」を増やすことじゃない限りは、もはや人間同士が手を取り合う必要さえない。

それゆえに、AIのマッチングのように何かわかりやすい興味関心軸から、無理やりそのような「資本」関係でつなげられてしまうというようなものが、現代のマッチングの基本です。

「あなたとこのひとがつながることで、これだけのメリットがありますよ」というふうに、です。

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で、そういう繋がりがメインとなり、享楽的な人生を生きることが楽しいという人達がいることを、僕はまったく否定しない。

むしろ、それこそが現代社会、資本主義と新自由主義に最適化した現代にジャストフィットした生き方だとも思います。

でも僕は、なんだかそれだけじゃ物足りないなとも同時に思うのです。

だからこそ、過去にも繰り返し書いてきたように、「資本を増殖させることだけが目的ではないコミュニティを、自分たちで淡々と手づくりするしかない」と腹をくくり、僕はWasei Salonを運営しています。

僕らが本当に求めているのは「真の共同性」だからです。


本当の意味で、人同士が代替不可能な「余人を持って代えがたい」存在としてつながっていく、そんなきっかけとなることのほうが、幸福につながるだろうと信じています。
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そして、今回の機能で、お互いへの興味関心に素直に興味をもつきっかけを与えてもらったなと思っていて、これが本当に素晴らしいことだなあと。

尊敬や敬意とは、相手の関心事に関心を寄せることだとしたら、それがより自然と加速したことが何よりも嬉しいことです。

それゆえに、この機能を起点にコミュニティ内での本を通じたコミュニケーションや読書会も活発になっていくことはもう目に見えているし、その読書会を通して、お互いが余人を持って代えがたい存在にもなっていくことも容易に想像がつきます。

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まさに「本」というメディア自体が媒介となり、そこにお互いが関わり合う「依り代」が生まれてくるような感覚です。

それによって、たとえ別々の界隈同士の人間であっても、つながることができる。

今後はさらに、本だけに限らず、Filmarksのような「映画の棚」、音楽のプレイリスト的な「音楽の棚」だってつくることができる。

古典も含めて、そんなさまざまな優れた魅力的なコンテンツを媒介にしながら、僕らはもう一度、本当の意味でつながることができるようになる気がしています。

具体的には、僕らが10代のころの本やCDの物質の貸し借りを通じてとっていた親密なコミュニケーションの新しい形が、現代にあった形で蘇ってきた感覚です。

「僕らが、インターネットによって、本当に求めていたコミュニケーションの活性化ってこういうことだったよね」ということが、強く実感できているなあと思います。

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今回のような新機能にかかわらず、オシロさんの縁の下の力持ち感は、本当にいつもプライスレスだなあと感じているし、非常に心強いなあとコミュニティ運営側として強く思います。

これがもし、自分たちで内製するようなオンラインコミュニティだと絶対にこんな改善は不可能です。たとえFacebookやDiscordのような海外産プラットフォームであっても、明確な断絶がそこにはある。

まさに、国産プラットフォームだからこその強みです。

僕らのような小さなコミュニティのことも気にかけてくれて、常に観察をしながら、本当の意味で「ここに一体どんな新しい機能が必要なのか」を毎日丁寧に考えてくださって、日本企業らしい繊細さでそれを実現していくれる。

そのために丁寧なヒアリングも、毎回何度も繰り返してくれるのがオシロさんです。

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だから、僕ら運営側も積極的に新機能を使っていきたいと思えるし、お互いにナイストライ!って思いながら、それこそトライアンドエラーを繰り返しながら「より良いコミュニティ(プラットフォーム)とはなにか?」を一丸となって共に模索することができている。

そのプロセス自体が、本当に大きな財産というか、かけがえのない資産となっている感覚はめちゃくちゃありますし、まさに「はたらく」ことの楽しさにも直結しているなあと。

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これからも、末永く使い続けたいプラットフォームだと思わせてくれることが本当にありがたいことですし、恵まれたことだなあと改めて深く実感しました。

先日、オシロさんのオフィスで開催されたオシロの代表・スギヤマさんと最所あさみさん、そして僕の3人で行ったトークイベント「日本にブッククラブの文化は根付くのか?〜ブッククラブがひらく、新しい読書体験〜」も後日、Voicyのプレミアム配信内で共有する予定です。

ぜひ配信されたら、また聴いてみていただけると嬉しいです。

オシロさんが、本当の意味でコミュニティ文化を耕していきたいと腹を決めている覚悟がとても深く伝わってくると思います。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。