「主人の転勤やこどもの成長に伴った、暮らしにフィットする働き方をつくりたい」

そう話すのは、Wasei Salonメンバーの海老澤 敦子さん(以下、あつこさん)。これまで、小さい頃から夢見ていた小学校の先生として働いたり、エチオピアに2年滞在するボランティアとして活動したり、自分のやりたいことを大切にしてきた人だ。

そんなあつこさんは今、1歳8ヶ月の子供を育てながら、2〜3年に一度訪れる旦那さんの転勤についていく生活をしている。長期で勤められないことや保育園の送り迎えの時間を考慮すると、働くことができる会社の選択肢は大幅に狭まり、就職活動は困難だったという。

この記事では、暮らしと仕事の狭間で感じた葛藤、そして暮らしにフィットする働き方をつくる過程について、あつこさんにお話を聞いた。

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海老澤 敦子(えびざわ あつこ)
大阪在住。1児の母。バイリンガル保育園で働きながら、オンラインこどもえいごクラス「aiai」を2021年9月に始める。革作家としても活動中。これまで小学校教師やエチオピアでのボランティアを経験。


これまでの仕事は無意味だったのかな

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ーー今日は、今の働き方をあつこさんはどのように捉えられているのか、旦那さんの転勤に合わせて仕事をすることへの葛藤はないのか、お話を聞きたいと思っています。

よろしくお願いします。

ーーまず、旦那さんの転勤にあわせてあつこさんの働き方が変わることを、どのように感じられていますか?

主人の転勤が多いことは結婚する前から知っていたので、自分の仕事を優先したい気持ちはないですね。新しいところに住むことは新鮮で楽しくもあるので、ポジティブに捉えています。

ただ、自分のやりたいことを我慢するタイプではないので、主人についていきつつ、私がやりたいことも実現していきたいと思っています。

ーー住む場所や働く場所が変わる頻度が高いことで、不安はないのですか?

今の会社に入るまでストレスをかなり感じていました。2020年の秋頃から就職活動をしていたのですが、せっかく条件の合う会社を見つけても、面接で落とされることが続きました。数年後には遠くへ引っ越す可能性があったり、子供の保育園のお迎えの時間に間に合うように退社したかったり、就活に不利になる要素が多かったので。

「就職できなかったら専業主婦になるしかないの?」「これまで仕事で積み重ねてきたことは無意味だったのかな」と考えては、落ち込んでいましたね。だから、今、私を雇ってくれている会社には感謝しています。




エチオピアの豊かな暮らし

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ーーこれまではどのような仕事をされてきたんですか?

大学を卒業してから7年間、小学校の先生をしていました。私が小学生のときから、将来は先生になりたいと思っていたんです。

そのうち2年間は青年海外協力隊としてエチオピアで活動し、帰国後は児童数約900人の大きな小学校で英語講師として働きました。

ーーエチオピアに2年間も滞在されていたんですね。どういう経緯でしょうか?

20代の終わりに「このまま30代になっていいのかな?」という漠然とした不安があったんです。小学校の先生として働いていたときは多忙で、休日出勤もよくしていました。平日は授業準備をしながら、寝落ちしてしまうような日々を送っていましたね。

だから、このまま小学校の先生としてがむしゃらに働きつづけるか悩んでいたんです。そんなときに、電車の広告で青年海外協力隊のことを知りました。海外で働くことへの憧れが中学生のときからあったので、結婚する前に人生最大のチャレンジをしようとエチオピアで働くことを決めました。

ーーエチオピアでは、どのような日々を過ごしていたんですか?

エチオピアの小学校では、アートは新しい教科で、知識を重視した授業が行われていました。そこで、日本のように手を動かす授業の提案をして、現地の先生や子どもを巻き込んで、アートの時間を満喫していましたね。

ーー暮らしや仕事において、日本とエチオピアの違いは感じましたか?

エチオピア人と日本人の仕事観の違いに驚きました。優先順位でいうと、神様がいて、家族がいて、友人がいて、最後のほうに仕事があるんです。自分も身近な人たちも大切にして、ゆっくりと暮らしているんですよね。

そんな人たちに囲まれたエチオピアでの暮らしでは「あー、幸せだなぁ」と感じる瞬間がたくさんありました。

ーーエチオピアでの経験を通じて、暮らしがより大切になったんですね。

エチオピアの人たちのように、大切な人を大切にして暮らす豊かさが土台にあり、その上に仕事があるという考え方に変わりました。帰国後には結婚をして、今では1歳の息子がいます。笑いと癒しをたくさんもらっていて、生まれてきてくれてありがとうの気持ちがずっと続いています。



いい循環が生まれた「オンラインこどもえいごクラス」

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ーー子育てをしながらフルタイムで働かれているんですよね。バランスをとることは難しくありませんか?

正直、難しさを感じることはよくありますね。2021年の4月に保育園に入社してワーママデビューをしたのですが、息子は2週間に1回くらい熱を出していて、仕事も暮らしもうまくいきませんでした。どちらも中途半端に感じて「子育てに専念したほうがいいのかな」と悩みましたね。

ただ、こうした悩みは暮らしと仕事の両方を大事にするなら、ずっと付いてくるものだと思うんです。だから、主人の転勤や子どもの成長に合ったちょうどいい働き方は自分でつくっていくしかない。そう思って、昨年9月に「オンラインこどもえいごクラス」を始めました。

ーー「オンラインこどもえいごクラス」は、どんな活動なんですか?

赤ちゃんから未就学児を対象に、親子に向けて月1回無料で英語の絵本の読み聞かせや手遊び歌をしています。これまで30人ほどの子どもとその親御さんが参加してくれました。

ーー始めたからこそ、感じるものはありましたか?

そうですね。いい循環が生まれていると思っています。

バイリンガル保育園では外国人の先生のアシスタントをしているのですが、どこか悶々としていたんです。私は「こんなことをしたら楽しくなりそう!」とパッと閃いたときや、そのアイデアを形にしていく過程に喜びを感じるタイプなのですが、保育園では試せる場所がないと思いこんでいました。

でも、自分のオンラインクラスを始めてからは、アイデアを形にして、試せる場所ができました。そうすると、保育園でのアシスタントの仕事中も積極的にインプットをするようになって、仕事を楽しめるようになってきたんです。

ーー試せる場所があると学ぶことが楽しくなる。すごく共感できます。

そうですよね。そうして仕事を楽しめるようになると、保育園でもアシスタント以外の仕事をする機会が増えてきました。外国人の先生がやすみのときに英語の絵本を読むことになったり、「今度のお誕生日会で手遊びの出し物をお願いします」と頼まれたり。

「オンラインこどもえいごクラス」を始めたことで本業への心持ちが変わり、仕事も楽しめるようになったことは、予想していなかった大きな変化でした。



暮らしにフィットする働き方を

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ーーこれから「オンラインこどもえいごクラス」をどうしていきたいですか?

転勤や子育て、暮らしにフィットする働き方をつくっていきたいですね。住む場所にとらわれずに、自分らしく働きつづけたいです。そのためにも、今よりも「オンラインこどもえいごクラス」に注力し、より多くの人に参加してもらえたら嬉しいです。

また、森で小さな英語教室を開くという夢もあります。英語絵本のブックギャラリーを作ったり、森で材料を集めてクラフトを楽しんだり、そんなことができたらと想像しています。

ーー暮らしにフィットする働き方。すごくいい言葉ですね。

エチオピアで暮らした経験もあってか、じっくり、ゆっくり進んでいきたいといつも思ってます。その点、Wasei Salonで投稿するブログは、じっくり前に進む力になっていると感じているんです。

ーーどういうときに感じられるんですか?

未来の楽しい妄想やモヤモヤしていることをブログで文章にして自分と切り離すと、今より良くしていこうと前向きな気持ちになれます。過去に書いた記事を自分で読み返しては、前に進んでいる実感を得て、安心することがよくあるんです。

ーーサロンメンバーのコーチングも受けられていますよね?

そうですね。Ayaさんのコーチングを半年以上継続していますね。コーチングを受けて、言葉にして、行動する流れができているので、「オンラインこどもえいごクラス」も伸びやかに試行錯誤しながら、形にしていっています。

ーーあつこさんの暮らしにフィットする働き方をつくる挑戦をブログで読むことを、今後も楽しみにしています。

嬉しいです。ありがとうございます。



わたしの一歩を支えるもの


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ーーあつこさんの一歩を支えるものはありますか?

近所にある森ですね。昨年にワーママデビューをしたとき、仕事も子育てもいっぱいいっぱいになってしまって、主人とともに3ヶ月ほど苦しんでいた時期がありました。

「どうしたらいいんだろう?」と悩みながら、近所の森で散歩するようになりました。森の中を歩いていると、その状況から抜け出すことにつながる考えが自然に浮かんでくるんです。それ以降、よく家族と一緒に散歩に出かけるようになりましたね。



編集後記


あつこさんのお話のなかで印象的だったことは、暮らしも仕事も諦めない姿勢だ。旦那さんの転勤に伴う新しい環境への適応は決して簡単なことではなかったと思う。その状況においても、旦那さんへのリスペクトや子供への愛情は忘れずに、家族との暮らしを第一に優先する。その上で、自分も家族も大切にする働き方を諦めることなく、新たな挑戦を積み重ねていく。

暮らしでも仕事でも、制限を感じ、悶々とすることはある。そんな時は、あつこさんの生き方を思い出し、前を向いてじっくりゆっくり進んでいきたい。

執筆:張本 舜奎
写真:長田 涼