「生きている中で仕事をしている時間は長いから、『どうしたらより楽しくなるか』考えていきたいんです」

そう話すのは、Wasei Salon メンバーの濱田大輝さん。岡山県の福祉施設で働きながら、日曜日の朝にゲストハウス「DENIM HOSTEL float」でコーヒーを淹れています。

Wasei Salonでは、そんなメンバーさんの「わたしの一歩」に寄り添い、応援し、その軌跡を残していきたい。

今回は、濱田さんがどのような過程を経て、今の活動を行うようになったのか。そして抱いていた働き方の葛藤と変化について、お話を伺いました。

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濱田 大輝(はまだ だいき)
大阪出身、岡山県在住。岡山県に移住後、ゲストハウス「DENIM HOSTEL float」で住み込みスタッフとして働く。その後に、生活介護事業所「ぬかをつくるとこ」に勤務しながら、コーヒーブランド「CALMA(カルマ)」を営む。


2年間感じていた働き方への葛藤

ーー 岡山県に移住されたのは、何がきっかけだったのでしょうか?

4年間サッカーのコーチをしていたのですが、精神的に疲れ切ってしまって。実家に戻らず、大阪から離れたいと考えていました。

前に岡山県に旅行したとき、泊まったゲストハウスが「DENIM HOSTEL float」でした。そこで働いているスタッフの方と仲良くなって、穏やかな瀬戸内海の景色は綺麗だし、「岡山いいな」と思っていて。

ちょうど「float」で住み込みスタッフの募集をしていたので、県外でお金掛からず引っ越せると思って、住み込みで働かせてもらうことにしました。


ーー 色んなタイミングが重なったんですね。ゲストハウスではどんな働き方をされていたのですか?

ゲストハウスにいた頃の働き方は、無料で住む場所を与えていただく代わりに業務を手伝う、フリーアコモデーションと呼ばれる形で住み込みスタッフをしていました。

基本的な業務は、朝チェックアウトした部屋の清掃、チェックインまでの部屋の準備です。そのあとは自由に過ごせる時間があり、違うところに働きに行ったり、宿に泊まってくれた人と一緒にご飯を食べ、街を案内したりしていました。


ーー 働いてみて何か感じていたことはありますか?

お客さんやスタッフとの交流がたくさんあり、FUKKOKUというデニムを回収するプロジェクトやSUPツアーのお手伝いなど、ゲストハウスだからこそできる経験はたくさんありました。

思い出深い体験ばかりでしたが、落ち着いて自分のことを考えられる時間がほとんどなくて。24時間体勢で動いて、寝ている時間以外は仕事のことが頭にある状態でした。

他に働きに出るくらい、収入もそこまでなかった。自分を受け入れてもらった恩を返したいという気持ちもあったのですが、働けば働くほど自分が疲弊していってしまって......。移住前も含めて2年間ほど働き方には葛藤していました。

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変化していく働き方

ーー 2年間も......。生活介護事業所はどういう経緯で働かれたのでしょうか?

流れというか。ゲストハウスとは別にアルバイトもしていたのですが、打ち切りになってしまったんです。そのあと、知り合いに生活介護事業所「ぬかつくるとこ」を紹介してもらいました。


ーー 辛い状況ですね。 働かれてみていかがですか?

賑やかな職場です。友達とふざけて笑い合うような雰囲気の中で、楽しく仕事をしています。福祉の世界は初めてなので、わからないことを知っていく楽しさがありますね。


ーー おぉ楽しそう。働いている中で、どんな瞬間に喜びを感じますか?

そうですね。施設を利用している人が、スムーズに生活できるようにサポートできた瞬間は嬉しいです。例えば、言葉のコミュニケーションが苦手な自閉症を持つ人がいたら、彼らのくせやこだわりを把握して、今どう感じているのか、何をやりたいのか観察して、その手助けをします。

本当に相手の気持ちを理解できているかは、正直わからないです。でもサポートしたときに笑ってくれたり、喜んでくれたりする姿を見ると「力になれたんだ」と感じますね。

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ーー 濱田さんは伝え方やコミュニケーションを大切にされている印象を受けます。

そうですね。12年間サッカーに関わっていましたが、コーチや親に「〜しろよ」と強く言われるのが苦手でした。「その言い方で本当に伝わるのか?」という違和感をよく抱いていたからこそ、丁寧に伝える意識はしています。

施設を利用している人も、スタッフも、伝え方を大事にしています。相手の目線に立って話し、悩みがあったら一緒に考える。フラットに話し合える関係性に良さを感じるんです。


ーー 対等な関係に近い距離感ですね。働いてきた中で変化はありましたか?

パートタイムで働き始め、9月に「正社員を考えています」と職場の人に伝えました。パートタイムと正社員の間の立場である、準正社員として11月から働くことになりました。


ーー わぁ、おめでとうございます! 正社員になる決め手はなんだったのですか?

お金の面はたくさん考えましたね。親にも頼りたくないし。19歳から実家を出て、自分で家賃や生活費をやりくりしてきて、奨学金の支払いや生活に対するお金の不安が今もあるんです。お金の余裕とコーヒーの活動資金を作りたくて。
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ーー 19歳から親に頼らない生活を......。今コーヒーの活動もされていますよね。

4月にゲストハウスの住み込みスタッフを辞めました。前より収入が増え、時間の余裕もできたので、やりたかったコーヒーの活動を始めました。元々休みなく働いていたので、週休2日もあると何もしない時間にソワソワしてて。


ーー 何かをしていたかった。元々コーヒーはお好きだったんですか?

大阪にいたとき、Wasei Salon のメンバーである張本さんが運営していたゲストハウス「LINDA HOSTEL 106」で働いていました。カフェの営業もしていたのですが、自分が淹れているコーヒーの淹れ方すらわからなかったんです。

近くの自家焙煎しているコーヒー屋さんで、ハンドドリップコーヒーの淹れ方を学ぶワークショップが開かれたので参加しました。そのときに、ウェルカムドリンクでいただいたコーヒーがめっちゃおいしくて、そこからハマりましたね。

そのあとは、大阪や関西のいろんなコーヒー屋さんの勉強会に参加して、学んだことを元にコーヒーのレシピを作って、ゲストハウスで提供していました。


ーー 一からレシピを作っていたのですか!濱田さんは一から自分で作るのがお好きなんですか?

一から学ぶことは好きです。自分が作ったもので、何かをしたい気持ちはずっとありました。今年の3月あたりに「コーヒーの活動がしたい」とゲストハウスのお客さんに話してて。

「いつまでに、何をするか、決めておいた方がいい」とアドバイスをいただき、確かにそうだなと思ったんです。「24歳になる6月までに、コーヒーのイベントを開こう」と期限を決めて、5月にイベントを開きました。イベントの告知をSNSでして、それで知って来てくれた方や「float」のご飯を食べに来た人にコーヒーを提供していました。
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自分の中の変化を楽しむ

ーー おぉ!有言実行ですね。

元々誰かに相談をするのが下手なんです。相手の反応を気にしてしまって手が止まってしまう。Wasei Salonのコミュニティラジオで鳥井さんが「相談した人が教えてくれたアドバイスは、すぐに実行して、すぐフィードバックする」と話していて、相談に対する苦手を克服するために取り入れてみたんです。


ーー 相談をするって難しいですよね。取り入れてみて変化はありましたか?

相談や雑談の中で挙げられるアイディアって、流されることが多いと思うんですよ。でも拾うことによって、自分の中のアイディアとアウトプットの量が増えていきました。

それに、教えてくれたアイディアについて、フィードバックすると相手も喜んでくれます。自分がいいと思ったアイディアは、本気で実行するマインドに少しずつ変わってきました。


ーー なるほど!濱田さんのお話を聞いていると、私も相談できそうな気がしてきました。濱田さんにとってWasei Salon はどういう場所でしょう?

Wasei Salonは自分の考えていることを伝える場だと思っています。SNSでつぶやいたり、周りに言いづらい思いって、あると思うんです。

そういう行き場のない思いや言葉を Wasei Salon にいる人たちは耳を傾けて聞いてくれます。伝えないと自分の考えがまとまっていかないので、自分のためにも伝える練習をしています。

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ーー 確かに、思いを打ち明けやすい場ですよね。ちなみに、一つ打ち明けると私自身ライターとしてやっていけるのか不安なんですよね......。

積み上げていくうちに、仕事にできそうな気はしますけどね。駆け出しの頃は、何年も経験を積んで仕事の本質が見えている人からすると「気持ちとやっていることが噛み合っていない」と思われるかもしれない。

それでも、現実的な技術を擦り合わせて、コツコツと一つずつ課題を潰していくことで、生業としてやっていけると思うんです。コーヒーの活動も横の繋がりやお客さんにも相談していきながら、より良くしていこうと思っています。一から学び考える過程は楽しいと思いますよ。

僕も自分の変化を楽しんでいます。


ーー コツコツと一つずつ課題を潰していく。忘れたくないです。濱田さんのコーヒーブランドには、どのような想いが込められているのでしょうか。

「CALMA(カルマ)」という名前で、ラテン語で「凪」という意味です。瀬戸内海に見惚れる瞬間や、穏やかで見入ってしまう瞬間があるんです。

おいしいコーヒーを飲んだときにも、心が一旦穏やかになるというか。瀬戸内海を見たときと同じような感覚になる。その瞬間が好きなんですよね。心が落ち着く時間を大切にしたくて。
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もうひとつは、仏教の言葉で「業」と書いて「カルマ」と読むんです。自分の行いは自分に返ってくるという意味があります。

” 過去(世)での行為は、良い行為にせよ、悪い行為にせよ、いずれ必ず自分に返ってくる。”

ゲストハウスで働いていたときに感じていた葛藤から、自分の行いが良いこと悪いことにせよ、自分に返ってくる場所があっても良いんじゃないかと思っていて。

日常のなかで、人に対して優しく接したことや、人に喜んでもらえたことが、巡り巡って自分に返ってくる。そして、自分のためにも日常や人に対して丁寧に向き合いたいという、自分との約束の意味も込めて名前を付けました。
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仕事と生活のグラデーションをつくっていきたい

ーー 「CALMA(カルマ)」にはたくさんの想いが詰まっていますね。濱田さんがこれから取り組んでいきたいことはありますか?

コーヒーを販売するために必要なスキルをあげていきたいですね。ホームページの制作やパッケージを作ったり、今自分で焙煎した豆を販売できるように準備を進めています。

あと、いつか小さくてもいいので自分のお店を持ちたいです。「コーヒー屋もやりながら仲の良い友達が、僕のお店を借りてイベントを開いたら楽しそう」とか色々と想像しています。


ーー おぉ、いいですね!

仕事と生活の間にグラデーションができたら、より楽しくなると思うんです。生きている間、仕事をしている時間は多くの割合を占めます。そのなかで、「どうしたら仕事がより楽しくなるか」これからも考えていきたいです。

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編集後記

辛い状況に立たされたとしても、どうにか現状を変えていこうとする濱田さん。そんな彼のお話を聞いて、インタビューの途中に思わず、自分の悩みがぽろっと出てしまいました。それでも最後まで「うん、うん」と話を聞いてくださり、濱田さんがかけてくれた言葉は、漠然とした未来への不安に目がいく自分を今に連れ戻してくれました。

濱田さんの最後の言葉。自分の中の違和感を大切に持ち、楽しくいられる自分を諦めたくない。そんなふうに聞こえました。苦しくても、不安でも、「どうしたら楽しくなるか」考えていきたい。その先に踏み出せる一歩があると思うから。

この記事が、あなたの新しい一歩を踏み出すヒントになれば嬉しいです。



【CALMA COFFEE ROASTERS】

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営業日時:日曜日 8:30-10:30
住所:Denim Hostel float 〒711-0905 岡山県倉敷市児島唐琴町1421−26
Instagram:https://www.instagram.com/calmacoffeeroasters/


執筆:ファム フォン タオ https://twitter.com/thao_pp8 
写真:長田 涼 https://www.instagram.com/nagata.ryo/