「私たちの“はたらく”を問い続ける」をテーマに活動するWasei Salonではじまったメンバーインタビュー企画「わたしの一歩」 。
今回のお相手は、早稲田大学の商学部を卒業後、大手企業を経て、夢を叶えるためにダンサーへ転身したメンバーのごめさんです。
今年、2023年はダンスワークショップ全国ツアーに挑戦。
そんなごめさんの現在の等身大の自分とそこに到る経緯、いま踏み出そうとしている一歩についてうかがいました。
中込 孝規(ごめ)
「世界とつながるダンス教室」代表。早稲田大学商学部卒。大学在学中にオールジャパン学生ダンス選手権大会で優勝。教育系企業ベネッセに 4年間勤務の後に退職。世界一周をしながら1万人以上の子どもたちにダンスを教える。YouTube「ごめダンスチャンネル」は登録者2.5万人、総再生回数1,300万回以上。講演やダンスワークショップ、日本と海外の子どもたちを中継でつないだダンス交流会などを開催。
世界を回ることで起きた価値観の変化
ダンスを始めたきっかけは、高校1年生の頃、兄の影響でした。
最初はうまい・かっこいいと認められたい欲求が強くて、上下で人を評価する視点でダンスを見たり、自分の方がうまいと思われたいっていう承認欲求が強かったんですね。それって、元を辿るとコンプレックスが強かったせいだと感じています。
でも、それが大きく変わったのは、世界各地の人たちとの出会いでした。
なんか、みんなすごくカッコよかったんです。
2〜3歳くらいの子どもたちが、めちゃくちゃカッコよく踊ってて。同い年、または年配の方もすごくカッコいい。みんなそれぞれのスタイルがあって。
みんなも僕のダンスを楽しみに待っていてくれて、認めてくれた。しかも、旅の中でずーっと親切にしてもらえて。自分が本当に楽しいと思うこと、好きなことをしたら、みんな喜んでくれた。そんなことをたくさん経験してきました。
日本にいた時と違って、海外に出たことで、自分にも自分だけの価値があることに気が付きました。
いろんな人と一緒に踊ることが楽しい、そして、お互い認め合う中で、自分自身のことも自然と認められるようになりました。
これはダンスに限らず、人にはそれぞれ良さや特徴があって、誰もがその人だけのものを持っている。うまく説明できないけど、そういうところを大事にするようになりました。
海外で出会った人たちの価値観
その人の性格や好み、センスがダンスに表れていてみんな違う。それってすごいことで。
世界へ行く前と後では、感覚が大きく変わった気がします。
ダンスの指導にも変化
それまではある種の物差しがあって、ここはいい、ここは良くないよと指導していました。きちんとリズムに合わせて、右なら右、この角度という、正しいやり方に合わせる。
でも今は、別に右左が揃ってなくても、カッコいいものはカッコいい。
僕とはやり方が違うけど、それもめちゃくちゃカッコいいね、みたいに教える時も、その子が思うカッコいいイメージに近づけるための教え方をしますね。
一人一人違う自分の良さに気づくことや、「すごい楽しい、好き」っていう想いがどんどん大きくなることを意識するようになりました。
楽しさを伝える中でスキルも自然と上達していく
それぞれが楽しくて、みんなも楽しくて、一緒に感動したり、楽しいとか好きみたいな気持ちを共有できる場ができていたら、僕はすごい満足です。
また、上達すること自体が目的ではないですが、そういうことを繰り返しやっていく中で、子どもたちは自然と上達していったりするんですよね。
みんなと楽しめるダンスのよさも、上達することの素晴らしさもどっちも伝えられるといいなって思いながら過ごしています。
めちゃくちゃカッコいいね、って伝えて。できないことができるようになった時も、素直にすごいねって。
正しさと楽しさのバランス
なんか常に考えながら葛藤しながらですね、そこは本当に。
例えば幼稚園のクラスで教える時とか、楽しければいいってなると、みんなこう自由に、ステージの裏に行っちゃったり、おもちゃ持ってきたり(笑)
僕自身はコンテストに勝つとか、競技とか、そういう苦しさをすごく味わってきていて。
今は雰囲気づくりを重視していて、子どもたちに楽しんでほしい反面、「できたぞ〜!」みたいな実感もして欲しいですね。
基本は、やりたいから、やる。
お金であるとか、目先の利益を求めてしまうと、全然その場が楽しくないし、その後も失敗したりする。過去に後悔したこともたくさんありました。
本当にこの人と一緒に何かやりたいなとか、できたらいいな、みたいな気持ちを素直に大事にしたいなっていう思いがあります。
2023年のテーマは「遊ぶ」
その後の姿をあれこれ考えるよりも、本当にやりたいことを、どんどんやっていく方が自然とその後に繋がっていく。
今年の自分のテーマは『遊ぶ』なので、メリットがあるかよりも、その人とそこでそれがやりたいかどうかを大事にしています。
世界一周の時もそうでした。
周囲からは、何に繋がるの?とか、もっと役立つことをした方がいいよとか、言われました。
でも、人生で一番やりたいことだったし、ダンスをしながら世界を回れたら最高だなと思って、いろんな人の協力を得ながら実現できた。
そのことが、何かを受賞したり、何かに選ばれたりしたということよりも、とても大きな自信になっていますね。
なぜ、Wasei Saronに入ろうと思われたんですか?
2021年の10月の『ゆっくり、いそげ 』という本の読書会に参加したのが初めてです。ちょうど何年も積読(つんどく)になっていたんです。
サロンの指針や案内も素敵だなと思いました。サロンに入る前の2年くらいは本が全然読めなくて、プライベートでうまくいかなくなって、でも読書会がスタートしてまた本が読めるようになってきた。
僕はどんなコメントしようかな、みたいなことばかりを考えていたけど、みんな、聞く姿勢とか力がめちゃくちゃすごくて。それこそ、うなずいて聞いてくれたりとか、その後のコメントとか質問がすごい。
そして、みなさんとてもフラットで。相手と自分の境目もあやふやなような、そういう感じがあって、めちゃくちゃびっくりしたのを覚えています。
——読書会の『学びのきほん』シリーズはほぼ皆勤賞ですよね。読書会に参加したらごめさんに会える、みたいな。
僕にとって、すごく大事な時間、場所です。
自分の活動で迷ったり、悩むこともあるんですけど、読書会に参加すると、なんかすっきりする。
モヤモヤを直接相談しているわけじゃないんですけど、いろんなテーマでお話しする中で、肩の力が抜けていって毎回スッと自分に戻してもらえる感覚があります。
それこそWasei Salonの中でも何かを得ようとして、イベントに参加しているのが、自分本位で「自分が自分が」ってなり過ぎているんじゃないか、と思った時期もあるんですが。
『秘密結社Ladybirdと僕の6日間 』の会に参加した時に、まずは自分が得て、その後の自分が周囲に還元できるものが自然にあるみたいなのを思って。
人生にはいろんなフェーズがあるから、自分は今そういったタイミングでもいいんだ、みたいな風に思えるようになったことがありました。
そういういろんな考え方の変化が、実際の自分の活動にも日々の生活にも影響していくのはすごくあります。
価値観も変わりましたし、正解をきちっと決めなくてもいい、ただ一緒にいるとか、それだけでも誰かの役に立てているんだなとか、そういう気づきが日々あります。
——非言語コミュニケーションのダンスと、言葉ってどう捉えていらっしゃいますか?僕はダンスも言葉もどっちもすごく大事にしたいなと思って過ごしています。言葉は難しくて、それこそ子どもとか大人って言っちゃうと、普段僕そう思って接してないので、なんかもうその時点で違うんですよね。
もし、体感するんだったら、本当にダンスをこの場で一緒にやる、みたいなのが一番かもしれない。それこそ海外でも国内でも、一緒に過ごして、感情を共有するとか、同じ場を作り上げて、なんかこう感じるものとかもあったりするので。
一方で言葉は、世界一周の間もブログやSNSで何か人に伝えたりということもしているので、100%にすることはできないんですけど、伝える一つの方法としてすごいいいなと思っています。
——パフォーマンスを届けたい人たちって設定されていますか?
やっぱり、なんか昔苦しんでいた自分のイメージがすごく強くて。
今あるレールから逃げ出せないとか、誰かと比較してコンプレックスを感じていたり、自分のことを嫌いになっちゃっている人とかですね。怖くて一歩踏み出せないとか。
なんか、そういった人たちに対して、あったかい気持ち、今の自分を認められて受け入れられて、楽しい気持ちになれるとか、あったかい気持ちになれるとか、なんかこうあったかく解消することをやりたい気持ちがすごくあります。
YouTubeによって意図しなかった層に影響が
意外な人たちからの反響が多いのがYouTubeで。こんなにいろんな人が踊ってくれるってもともとは想定してなかったので。例えば小学校の運動会で踊ってくれているとか。
もともと、ずっとアップはしていたんですけど、そんなに再生されてはいなくて。
ただある時に、発表会が開催されるかどうかのタイミングの時に、ちょうど幼稚園の子も大人もみんなこう一緒に踊るみたいな、全員でごちゃ混ぜになって踊ろうみたいな、シンプルな練習用動画を作って。
コロナ禍で全体練習ができなくなってしまったので、YouTubeに練習用としてアップしました。
残念ながら、発表会は結局中止になってしまったのですが、その動画をアップしたら、すごくたくさん再生されたんです。
その後にアップした動画 でも、「運動会で踊っています」みたいなコメントもたくさんあったり、とある男の子のお母さんから、すごく熱い、あったかいDMを送ってくれたりとか。
それまで想像もしてなかった形で影響を与えていたりするんだろうな、と日々感じます。
2023年1月から日本各地を周る全国ツアーへ
コメントやDM、子どもたちが踊っている映像とかを送ってくれるとめちゃくちゃ嬉しいしハッピーな気持ちになる。一人一人にエピソードがあってめちゃくちゃいいなって思いますね。
こんな人たちが温かい感じで、全国にいるんだなと思うと、そうした人たちに実際に会いに行って、一緒に踊りたいなって気持ちがすごく強くなってきました。
お世話になった人たちもいるし、じゃあ、全国ツアーやろう!っていう感じです。
子供たちが素直に話しかけてくれるとか、そういった場でレッスンしたらすごい元気になる。
——非言語と言語、両輪で何か組み合わせたりとかの構想はありますか?
今、講演会をしてから、ダンスのワークショップをすることも多いので、それこそ本当に、言葉で説明して、すぐにダンスで体験するみたいなことをやっていたりします。すごく良い場になりますね。
言葉はストーリーも踏まえて伝えられる。ダンスだけじゃなくて、そういった形でやることもあります。
——改めてごめさんにとってダンスってどういう存在でしょうか?
何なんでしょうね(笑)
それも変化してきているんですよね。自分の中でもともとは自己承認欲求とか自己顕示欲を満たすものみたいなものから、それこそモテたいみたいなところからスタートして。
世界一周をしている時には、ただただ楽しい、そういう自己承認とかじゃなくてみんなと楽しめるものっていう風に変化していって。
以前はダンスもただのツールなんです、みたいなことをよく言っていました。サマースクールだったり、いろんな人と認め合うみたいなことをしたいから、いろんなことをしていて、漁港や畑に行ったり、衣装作るとか。
でも、コロナ禍になって、改めてダンスの力みたいなことをものすごく感じるようになって。
踊るとやっぱりすごい楽しいし、元気になるしいろんな人と繋がれるし、ダンスって自分の中でめちゃくちゃ大事なものだったんだって初めて感じて。
コロナ禍になって、ダンスによって自分が救われたりとか、いろんな人と楽しい場が作れたり。
もともとはダンスじゃなくなってもいいやって思うぐらいだったのに、今は自分にとってかけがえのないものだと思うようになって。
日々、大事にして過ごしているって感じですね。
——全国ツアーの手応えはいかがですか?
やっぱめちゃくちゃ楽しいですね。毎回。
今までの人と再会する場にもなっているし、新しく出会える場にもなっているし、あったかい空気も作れているので、やっぱりこれはめちゃくちゃいいなと思っています。
3月に福岡で行われたワークショップ
6月に石川県で行われたワークショップ
アフリカと日本を繋ぐ
もし、アフリカに行けなかったら、日本でも今まで全国ツアーに参加してくれたみんなを繋いで一緒に踊りたいみたいな計画をしています。
こんな風に動き始めたのも、それこそWasei Salonのイベントに毎月参加していて、徐々に気持ちとかこうなんていうんだろうな。
また動き出せるタイミングになるまで休めたというか、いい形でその中で自分の考えもまた変わってきたりとか、いろんなことに気づいたりできてきました。
別にWasei Salonのインタビュー記事だからとかじゃなくて、本当に参加して、この場があったから今こういう風に動き出せています。
動き出したら、またちょっと大変ですけど(笑)
編集後記
ごめさんから何度も語られた「なんか」というフレーズ。
非言語コミュニケーションを自分のフィールドにしているごめさんの「なんか」には、たった一言ではとても言い表せないたくさんの感情や言葉が詰まっているように感じました。
明確に言語化せずとも、そこに確実に存在している「なんか」。
儲かるかどうかではなく、やりたいことはやる。
行動して来た結果、今があるという損得抜きで行動できる姿に勇気づけられました。
なんか、カッコいいです。
執筆:山田智之
写真:菊村夏水
●世界とつながるダンス教室 中込孝規 -公式Webサイト-
http://gome-takanori.com/
●YouTube ごめダンスチャンネル
https://www.youtube.com/@nakagome63