「これからの”働く”を考える」をテーマに活動するWasei Salonではじまったメンバーインタビュー企画「わたしの一歩」。

今回のお相手は、張本舜奎(はりもと・しゅんけい)さん。2023年春から、福井県おおい町の地域おこし協力隊として移住。しかしながら、ただ、都会から地方に移住したという文脈だけでは語りきれない葛藤や試行錯誤を経て、現在に至ると言います。

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張本舜奎(はりもと・しゅんけい)
大阪府出身、福井県おおい町在住。ホステルを共同創業した後、ライターの仕事をしながらコーヒースタンドで働く。2023年4月からおおい町の地域おこし協力隊として、まちづくり・広報の仕事に携わっている。


頭で考えること、身体が喜ぶことを模索した

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-私が初めて張本さんを知った時は、LINDA HOSTEL 106というホステルホテルを大阪で経営されていたかと思うのですが、コロナ禍で閉業したとお聞きしました。

はい、2021年9月末でお店があった場所を引き渡しました。将来コーヒーショップをやれたらという思いがあったので、閉業した後はコーヒーについて一から学ぶためにコーヒースタンドで働きはじめました。

ただ、それだけだと生活ができなくなるので、週の半分はコーヒーの仕事、もう半分はフリーランスとしてライター業も行っていて。そんな生活を一年半ほど続けていましたね。


-ホステルとは全く形態の違うライター業をされてたんですね。

そうなんです。いつかコーヒーショップをやったとしても、リアル店舗だけで経営を成り立たせるのは難しいんじゃないかという感覚があって。だから、コロナ禍でもあまり打撃を受けていなかったり、何を売るにしても必要となりそうなWEBマーケティングに関わる仕事に興味を持ちました。

ライター業に関しては、もともとお客さんとして通ってくれていた方が色々と教えてくれたので、コーヒーの仕事をつづけながらも、なんとか最低限の生活費は稼げている状況でした。


-確かに、飲食店やホテルよりは、まだなんとか生き延びる選択肢が多い印象でしたよね。ライター業は、今も続けていらっしゃるんですか?

仕事の一環として記事を書くことはありますが、ライター業を続けているという感覚はないですね。毎日延々と記事を書き続けていたら、心身ともに調子が悪くなりがちだったので、昨年の秋にライターとして働くことを辞めました。

一時期は考え込みすぎてしまって、LINEの文章ひとつ送るにも「これって、ライターとして正しい文章なのか?」「語彙乏しすぎないか?」と気にしてしまって、友人にメッセージを送ることすら苦痛に感じていたんです。

収入は安定はしていたので、頭で考えたら悪くない仕事だと思っていましたが、徐々に夜も寝れなくなったりして身体が拒否反応を示すようになっていました。

自分に合うサイズの箱ってどのくらい?

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-なかなか、大変な時期を過ごされてたんですね。

でも、こういう時期は初めてじゃないんです。新卒で入った会社を辞めたあとも、同じように休止期間というか、歩みのスピードをゆるめた経験がありました。だからなのか、不安や焦りを感じつつも、俯瞰してみるとエネルギーを溜める期間なのかなと捉えていましたね。


-そのエネルギーを溜めてみて、改めて何か大きなことにチャレンジしたいと思いますか?

うーん、今はあまりそういう気持ちはないですね。というよりは、まずは好奇心の火が灯っていることを常に大事にしていたいです。頭で考えて合理的なことや意味があることをやるよりも、「〇〇をしたい」という気持ちがより湧いていることに取り組むほうが自分にとっては優先度の高いことなんだなと。

そこに掛け算されるように、自分のキャパシティに見合う箱の大きさかどうかも大事な要素だとホステルの経営を通じて気付かされました。だからこそ、相対的に大きいことがしたいというよりは、「好奇心×箱の大きさ」が自分にフィットしていることをやっていきたいですね。


-それでいうと、ホステルの経営はかなり大きかったのでは?

まさに、そうですね。開業する前から分不相応な挑戦であることはなんとなく分かっていたのですが、何者かになりたい気持ちだったり、ワクワクの方が強かったので。それでやっぱり失敗しているので、背伸びしすぎるのはよくないことを痛感しました。

Wasei Salonの読書会をきっかけに心と身体のバランスを見直した

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-そういえば、張本さん、最近はよく読書会に参加しているとお聞きしました。

「普通がいいという病」の読書会をきっかけに、Wasei Salonの読書会にハマりましたね。
この本に、頭で考えることを優先していると、体や心が求める「〜したい」という欲求が押さえ込まれてしまい、心身の調子が悪くなるといったことが書かれていたんです。当時はライターの仕事が辛くて悩んでいた時期で、「経験が浅いから悩んでいるだけ。ライターを何年も続けてから、辞めるかどうかは判断すべき」といった思考になっていたから、かなり刺さったんです。

それで、今後はもっと好奇心を大事にしていきたいなということで、頻繁に読書会に参加するようになりました。


-読書会を通じて、何か変化はありましたか?

読書会に参加して色んなジャンルの本を読んでいると、自分のことだけじゃなく、外の世界に関心が向いていく感覚があるんですよね。それまでは自分のことばかり考えて悩んでいたけれど、本を読んでいるとそれが薄れていく。そうすると、自然と元気になっていく気がしています。


-Wasei Salonは、割と頻繁に活用されているんですね。張本さんにとって、Wasei Salonはどんな場所ですか?

言葉にするのは難しいのですが、生きる速度みたいなものを測るきっかけを与えてもらえている感覚があります。少し忙しくて余裕がない時は、ぜんぜん本も読めないし、読書会に参加するのもしんどく感じるんです。

けど、心身ともに余裕があって、穏やかに生きているときは読書会に参加するのが楽しみになる。Wasei Salonを自分がどういう風に捉えているのかで、なんとなく自分の調子やペースがわかる。ほんと不思議な場ですよね(笑)

おおい町での新たな日々

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-今年(2023年)の春から、実は、新たに拠点を移されたんですよね。

はい、福井県のおおい町で、地域おこし協力隊としてお世話になっています。


-おおい町では、どんなことを?

まちづくりに関わるイベントの企画や広報活動が主な仕事ですね。


- 春からの新しい生活はどうですか?

大阪での生活が長かったのですが、おおい町での暮らしの方が自分にフィットしているかもと感じているくらい、居心地いいです。空気が澄んでいるのも最高だし、人も穏やかで優しくて。

あと、都会と田舎がほどよくミックスされているのも暮らしやすいですね。買い物に行く道で星が綺麗だなぁと感じることもできるし、新築アパートに住んでいるので家の中に虫が出るとかでもない。なんか都会と田舎のいいとこどりをしてしまっている気分です。


- ちょうどいいって大切ですよね。いいなあ、星は見えるけど虫は出ないというちょうどよさ(笑)ちなみに、これから挑戦したいこととかありますか?

挑戦というよりも、まだバランスを取りたい気持ちのほうが強いかもしれないです。すごく気にしいなので、おおい町を外の人に知って欲しいという気持ちはあるけれど、それを発信するにあたって、家の中でもSNSのいいねを気にしてるとかは嫌だなと思ったりする。
仕事を通じてまちの人たちが喜んでくれるといいなぁという思いもありつつ、暮らしを犠牲にしたくはなくて。だから、いまは背伸びをすることなく、どちらも大事にしながらまちを盛りあげる挑戦をしていきたいと思っています。

編集後記

張本さんに対して、オンラインでお話したり、これまでのブログを読んでいた印象では「丁寧な暮らし」「物静かで真面目そうな雰囲気の方」というイメージを勝手に抱いていました。でも、実際にお会いしてみると、なんだかいい具合に力の抜けた、心地よい湿度を含んだ風のような人だなという印象に変わりました。

写真撮影も、本当は晴れが良かったなと少しがっかりしていたのですが、結果的に、お話した後は、しっとりとした雨がよく似合う人だなということを感じました。



執筆・写真:東詩歩:lit.link/shihoazuma