コロナ以降、哲学や思想、歴史などを淡々と学びながら、僕が明確に感じていることのひとつに「タテの共同体」の復興の重要性があります。


現代を生きる僕らが、自らの「尊厳」を感じられずに、疎外されている感覚を抱き続けるてしまうその原因及び解決策というのは、この「タテの共同体」を復興し、その根本問題を解決しないと、きっと一生満たされない感覚だと思っています。

この点、最近読んだ倫理学者・先崎彰容さんの書籍の中に、ものすごく的確な表現が書かれてありました。
今、この「逆」の感覚を本当の意味で味わうことが、とっても大事なことだと思っています。

ちなみに、「ヨコの共同体」とは、現代を生きる人々同士が、一体どのようにして緩やかにつながり合い、助け合っていけるのかというコミュニティ文脈の問題です。

一方で、「タテの共同体」とは、過去と未来、その歴史的な時間軸の中に、自らをどのように位置づけて、死者、そしてこれから生まれてくるであろう新たな生命も含めた「広義の他者」と自己の関係性を築き上げていくことができるのかという問題です。

詳しくは、過去に何度かブログにも書いたことがあるので、ぜひこちらも合わせて読んでみてもらえると嬉しいです。

関連記事:

ヨコの共同体と、タテの共同体の復興。

これからの「タテの共同体」のあり方を考える。

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そのうえで僕は、NFTに「タテの共同体」の復興可能性を漠然と感じているんですよね。

今のNFTは、間違いなく「ヨコの共同体」の復興、つまりコミュニティ(共助)の要素が強いけれど、本当の価値は、行き過ぎた個人主義や新自由主義によって完全に破壊されてしまった「タテの共同体」の復興につながると信じています。

まだ誰ひとりとしてそんなことを言及していません。でも、僕はそれこそがNFTの「真の価値」だと言っても過言ではないぐらい、本気でそう信じている節があります。

なぜNFTがそんな可能性を持っているのかと言えば、ブロックチェーン技術によって、理論上は、未来永劫その履歴が残り続けて世代を超えて人々がつながっていくから、です。

実際に、本当に未来永劫、その記録やデータが残るかどうかは別としても「アドホックな連帯ではなくなる」と人々が自らの意志によって能動的に信じ切ることができるようになる。

その「共同幻想」のほうに、必ず価値が生まれてくると思うのです。

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とは言いつつも、NFTはまず「ヨコの共同体」として広く普及していくことは間違いないでしょう。

というか、既にそうなりつつあるように感じています。

従来型の「結」や「講」のように、「自助・共助・公助」の文脈における「共助的なセーフティネット」になっていくのはもうほぼ間違いなくて、これは時間の問題でしょう。この先、10年以内ぐらいのスパンで確実に実現している未来だと思います。

そして、一方で時間をかけて、少しずつ「タテの共同体」の萌芽も生まれてくるはずです。それはたぶん、ウォレット自体の所有者が代替わりをするときに、だんだんとその兆しが見え始めてくるはずです。

こちらは、数十年単位の変化の話。

きっと大事なことは、この「私達はつながっていくんだ」という擬似的な感覚のほうなんだと思うんですよね。

言い換えると、「家」という疑似共同体の拡張性、その“可能性”のほうにある。

新しい「家族(ファミリー)」の形として、そのつながりがちゃんとノード(取引履歴)として見える化されていく。

今ちょうど『鎌倉殿の13人』を一気観しているタイミングなので「将軍と御家人」のようなもっともっと広い関係性もここには含まれてくるはずで。

それぐらい広義の新たなファミリー像が、このNFTによって新たにつながっていくことでしょう。

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この「明確に何か意志のようなものが受け継がれていく」という感覚や可能性に、人々の「祈り」や「希望」のようなものが宿るはずなのです。

そして同時に、この現象の何がいちばん残酷かと言えば、決して僕らの生きている間には、その成果(結果)なんて絶対にわからないということ、です。

僕らが死んだ後に、本当の効力が発揮される、それがきっとNFTの本質です。

それでも、その可能性を信じて、そのバトンの最初の1人目として我々が起点となって残していけるのか?っていうことが、きっと今の時代を生きる僕らに試されていることなのでしょう。

だからこそ、このタイミングで、あの手垢がつきまくりのアドラーの言葉を思い出したいと思っています。

誰かが始めなければならない。
他の人が協力的ではないとしても、それはあなたには関係がない。
私の助言はこうだ。
あなたが始めるべきだ。
他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。


いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となったら幸いです。

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