佐々木俊尚さんが朝のキュレーションでシェアしていて知った、若者が旅をしながら、現地でスキマバイトアプリを使って働きながら旅費を稼ぐというお話、とってもおもしろい旅の仕方だなあと思いました。
このブログでは、スキマバイトアプリは、孤立化を深めて分断を広げることにつながると、ディスってきた。
でも、こういう使い方だったら、スキマバイトみたいな労働のあり方でも、素直に応援したいなあと思いました。
紹介されていたnoteの記事自体も、すごくリアリティがあっておもしろかったです。
なにより、この「ひとり旅×スキマバイト」の組み合わせは、何かそこに新しい「物語」がはじまりそうで、良い。このまま小説や映画にもなりそう。
若いひとや、それを受け入れる側の地域において、あたらしい「旅と働く」の可能性が生まれてくるような事柄だなあと思うから、今日はこのお話をもう少しこのブログで深堀りしてみたいなと思います。
労働を提供される側、労働を提供する側、両者にとってチャンスがある話だなと思います。
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この点、15年ぐらい前、つまり僕らが20代前半のころは、この手段がちょうどブログでした。
旅の記録をブログに投稿すると、そこに読者がついてくれて、そのPVに応じた広告収入やアフェリエイト報酬が入って、それを旅の資金源にできた。
僕もそうやってブログを書いて日本各地や、世界をバックパッカーして回っていたひとりです。
そして、そうやって旅先で得られた知見や体験が自己投資につながり、その後に仲間とともにウェブメディアを立ち上げたり、会社を起業したり、その会社で自治体さんと連携してさまざまな特集記事や勉強会、リアルイベントなどを開催するようになったり、今のようにオンラインコミュニティをつくるまでに、つながってきます。
でも、やっぱり一番最初の起点は「ひとり旅の経験」が大きかったなあと思います。
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とはいえ、今やSNSやYouTubeも完全に飽和状態になってしまって、15年ぐらい前の旅の仕方はもう完全にレッドオーシャン。
今の若い子たちは、逆にこういうスキマバイトアプリから、新たな働き方を知って、地方の現場仕事の魅力などを再発見するみたいな流れも十分にあり得そうで、それが本当に素晴らしいなあと思います。
そして当然、これ自体がひとつの「リアリティショー」みたいにもなりえるわけですよね。
きっと賢い子は、この体験自体をSNSやYouTubeのコンテンツにして、PVや広告費を稼いだり、フォロワーや視聴者たちからの投げ銭も獲得できそう。
実際、冒頭でご紹介したnoteの記事もそのような役割を果たしていて、いま僕もこうやって感化されて、ブログに書いたりして話題にしてしまっているわけだから。
本当にさまざまな「物語」が始まっていきそうな予感があるなあと思います。
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じゃあ、物語が始まりそうとは、具体的には一体どういうことなのか。
それは、従来とは異なる形で「人と人とが出会える機会」が生み出されていく可能性があるということだと思っています。
これまでにはなかった新しい縁がそこに生まれてくる。
で、それは、観光による「お客さん」という関係性ではないのもポイントです。
地域の働き手が減っている中で「若い子が働いてくれる」というのは、すごく価値あることだと思うんですよね。
お金はないけれど、時間だけは死ぬほどあるという若い子たちが、地域とつながるためには観光以外の開かれた場所が必要だとずっと思ってきました。
逆に言えば、観光で訪れたある程度の年齢の大人たちというのは、もうご自身の仕事が立派に確立されてしまっている。それゆえに観光するだけの資金的や、時間的な余裕があるわけですからね。
わざわざそのひとたちが今の仕事を捨ててまで、地域に移住したり、地域で働いてみたりすることを考えないと思います。どれだけ環境が良く、人が良かったとしても、じゃあまた観光で来よう、と思うだけ。
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でもこのスキマバイトアプリの場合は違う。
あくまでも旅するように訪れて、でもお金面に不安もあるから、現地で働けたら嬉しい!というようなニーズを上手く満たしている。
もし仮に「現地の人に出会う」チャンスが、若者にとっては移住などだけだとあまりに重たいわけですよね。「お試し移住」みたいな言葉でさえも非常に重たい。
僕ももし、20代前半のときに、「観光」の出会いだけに限られていたら、すぐに破産していたと思いますが、ブログがあったから安宿に泊まりながらも、好き勝手に旅ができた。
そして、ブログやウェブメディアの取材だと言えば、観光とはまた異なる形で多彩な人々に出会えて、直接話を聞かせてもらえた。その経験は、とてつもなく大きな経験でした。
そしてその距離感が非常にちょうどよかったなと思うんです。スキマバイトアプリにもきっと似たような効果がある。
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これは以前もご紹介した「課金して会いに行く」という話にも似ていて、お互いの役割分担、そのロールがはっきりしている関係性にも通じる。
しかもそれが「労働」を介してということもいいですよね。
もし、移住したときにも、メインになるのは観光ではなく「暮らし」であり、その暮らしの大半は「労働」になるもなるわけですから。
一週間、その土地で働くということもリアルに想像できる。現地の人々も「おもてなし」の顔ではなくて、労働のときの顔なわけですよね。そうやって町の人たちとのコミュニケーションをとれる機会なんてなかなかない。
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で、今は、季節労働のような単純労働だけかもしれないけれど、たとえば、これが若い人にSNSの投稿を作ってもらうことだっていいと思います。
そういうのが得意な若者も多いわけだから。それこそ、若いギャルみたいな子が、地域の企業のインスタやTikTokを請け負ってみるみたいなことも、短期で試せるのは良いことだなと。
お互いに数時間だけと割り切れるから、下手な雇用契約を結ぶ必要もないし、そこで何がどう変わるのかをお互いにお試し体験できる。
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あとは、地方の労働環境が、評価される側にまわるというのがめちゃくちゃ良いなと思う。
これは、最近クローズアップ現代でも「“スキマで稼ぐ”が急拡大 働き方はどう変わる?」という形で、スキマバイトアプリが特集されていて、この番組の中で僕も始めて知ったのだけれど、労働者側だけでなく、労働環境側にもレビューがつくらしいのです。
つまり、労働者だけではなく、労働を提供する側も、真摯に評価される立場に晒されるわけです。
このブラックボックスに、ついにメスが入るのかと思うと、とてもワクワクもする。
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たとえば、番組内で紹介されていておもしろいなあと思ったのは、ある4階建ての居酒屋さんで、ホールスタッフの移動がすべて急な階段を使うことになっていたそうです。
そうすると、この上り下りが辛い、というレビューがバイト側からついた。
だから雇用する側はワンフロアごとにスタッフを採用をして、業務時間中に階段の上り下りが必要ない動線に改善したと語られていました。
それで実際に、スキマバイトに来る側の満足度も向上したそうです。
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このように、若い人たちの目線から観たときに「これは絶対にありえない」というものが、ちゃんとレビューで低評価を受けて、改善の対象になるわけです。
その居酒屋の店長さんが何気なく発言をしていて面白いなと思ったのは「働いているときに直接言われたら生意気だ、になるけれど、レビューだと素直に改善しようと思えた」みたいなことを語られていて、めちゃくちゃいい話だなと思いました。
働く若者側も、生意気だって言われることがわかっているし、立場的にも自分がいうのは恐れ多いと感じる。それが縦社会が残る日本の空気であり、慣習です。
でも、それをレビューに書き込むことは、若者にだってできる。むしろ若い人はテキストコミュニケーションの方に慣れてもいるわけだから、本音を書いてももらいやすい。
そうやって、若い人たちの真のニーズ、どんな働き口を求めているのかも、見える化されていくわけですよね。
やっと、首都圏の若いひとの本音が、地方の働き口に採用されるチャンスが出てきたなと思います。
番組内では、自治体の活用も紹介されていましたが、この高評価がたくさんついている地域はどう考えたって働きやすいし、すなわちそれは暮らしやすいことにもつながるわけだから、移住定住問題においても、ダイレクトにつながる話だと思います。
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あと、これも番組で知ったのですが、このまま長期で働いて欲しいと思えば、お気に入りメンバーを登録できて、優先的に案内することができる仕組みなんかもあるそう。
お互いの相思相愛もわかるということですよね。
つまり、最初はお互いに1回限りだと思って、一期一会で誠意ある対応をし合っていたら、気づけば、準レギュラーになっていた構造もつくることができる。
そうやって呼ばれたら「じゃあ、もうちょっと…」を繰り返して、気づけば移住していた、みたいな流れになりそう。
どんなひとだって、自分宛にメッセージが届き相手から固有名において頼られたら、喜びを感じて、そこに居場所のようなものを見出していくということはあるわけですから。
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いろいろと可能性を書いてきたけれど、やっぱり強く思うのは、人と人との出会いがあり、そこに「物語」が始まりそうな予感が本当に素晴らしいなと思います。
これまでにはなかった「はたらく」と「人の出会い」を生んでいきそう。これからも注視していきたいストリートカルチャーだなあと思います。
いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。

2025/02/21 17:30