先日、Wasei Salon内で限定配信されているコミュニティラジオで、運営メンバーの3人、僕とコミュニティマネージャーの長田さん・若月さんでお話する機会を作ってもらいました。


何人かの方々にも言及してもらいましたが、とてもバランスの良い3人だと僕も思います。

本当に成るべくして成ったなあと思いますし、今年丸7年を迎えて、8年目に突入していることがそれを見事に証明しているなと感じます。

その中でも、ラジオでは特に話さなかった、これは間違いなく僕らのバランスのひとつだなと思っているのが、それぞれの「家族構成」だったりします。

今日はそんなお話について、このブログの中で書いてみたいなと。

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具体的にはそれぞれが「独身・DINKS・ファミリー(核家族)」という感じで、まるっきりバラバラであること。

僕は、仮住まい的な住所不定の独身です。

一方で、長田さんは、お子さんが2人いらっしゃって絵に描いたような移住ファミリーです。

また、若月さんは都会に暮らすDINKS (あくまで今のところ)であり、かわいい猫と一緒。

今の30代以降のかなりリアルなライフスタイルをそれぞれに体現しているなあと思うんですよね。

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このバランスがきっと僕らの強みだし、Wasei Salonの多様性や包摂性を生んでいる要因のひとつにもなっているなあと思っています。

もちろん、これは決して狙ったわけではなくて、Wasei Salonを始めた当初は、全員20代の独身だったわけだけれども、7年間続けているうちに、それぞれのライフステージが変わり、本当に成るべくして成った感じです。

でも、これもある種の必然のように感じられてしまうのですよね。

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この点、一般的には、会社経営者やコミュニティ運営者のようなひとたちは、早く結婚をして子どもをつくり、一家の主のように振る舞うことが求められがち。

でも、それってホントなのかなとちょっと僕は疑っています。

たしかに、昭和〜平成までは間違いなくそれが正解だったと思うのですが、でも令和においては、本当にそれは正解なのかと結構疑問に思う。

特にコミュニティ文脈においては、強くそう思います。

ここは、時代の変化が明確にあらわれている気がするんですよね。

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逆に言えば、ファミリーのひとがオーナーを務めるコミュニティには、ファミリーが集うに決まっていて。

コミュニティオーナーのスタンスが、ひとつの正解になるし、その価値観を大事にしようとなるわけだから。

でもそうすると、今度は独身者の居場所がなくなっていく。そして、ここが現代の特殊性です。

令和の日本においては、単身世帯はドンドン増えていて、3割が単身世帯、2050年頃には単身世帯が5割近くにまで増えるとも言われているわけですよね。

もう時代は変わったし、昭和的平成的な家族観は成り立たない。人口比の問題でもあるから、これから単身者世帯が増えていくことは、すでに起きた未来でもあるわけです。

ぼくらは何がどう転んでも、その未来を生きる運命にある。

だとすればそれに合わせて変えていくほかないと思っていて、理想的な家族像を語ってみても仕方ないと思うのです。

言い換えると、一般的な家族像ではない、時代に合ったオルタナティブな選択肢がいま強く求められている。

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で、ファミリーを持つオーナーがつくる居場所になると、特に30代以上の独身の女性たちの居場所がなくなるなあと思ったんですよね。

ちょうど最近読んでいた、内田樹さんと三砂ちづるさんの対談本『身体知』という本の中に、「オニババ」の話が語られてあって、この本の中では、

「社会のなかで適切な役割を与えられない独身の更年期女性が、山に籠もるしかなくなり、オニババとなる」と書かれてありました。

だいぶ表現が過激ですが、このような排他性は間違いなく社会の中にある。

それゆえにオニババの物語、本書の中では日本昔話でもよく出てくる「三枚のお札」なんかが紹介されていましたが、能などいろいろな物語の中にこのようなオニババのテンプレ的な存在が描かれているわけですよね。

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で、本書の中では「いいから黙って結婚しなさい」というのが結論であって、それが、2004年頃に出版された三砂ちづるさんの単著『オニババ化する女たち』という本の内容でもあり、それがフェミニズムの観点からも強く批判されたそうです。

そりゃあ、そうだよなあと思います。

逆に言えば、だからこそフェミニズムの代表の上野千鶴子さんのように「おひとりさま」みたいな話にもつながっていく。

僕は、そんな独身女性たちのライフスタイル自体を全く否定はしないけれど、それだけだと社会の「分断」が深まるばかりだと思うんですよね。

独身女性がつくる独身女性コミュニティは、どうしても一義的になる。そこには、独身男性も入りにくければ、ファミリー層も参加しにくい。

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そうじゃなくて、老若男女、ファミリーもDINKSも独身も関係なく、さまざまな立場のひとが、共に同じコミュニティを共有することができる社会がいいなと思います。

でもそれが地域共同体も、会社共同体も担保できない状態になってしまっているなと思うのです。

ここも現代の大きな問題のひとつ。

資本主義のもと、会社共同体では売上をつくれる仕事ができる人間、男女ともにいわゆるエリートが居場所を獲得できるようになっている。

その単一的な基準に嫌気が差して、ローカルに移住すると、今度はそっちは「暮らし」文脈が強すぎて、家族や子どもの重要性が際立ってくる。

言い方を変えれば、ローカルに移住する際は、なるべく結婚をしていて、できれば子どもがいたほうがいいのは自明なわけです。

子どもが地元のひととのコミュニケーションを繋いでくれる、それは間違いないのだから。

でもそうすると、それができなかった、つまりエリートになれず、家族も持てなかった、30代以降の人々は、居場所や肩身は極端に狭くなるわけですよね。

誰にとっても、居心地が良く、なおかつ相手の状況を妬まない、恨まない、蔑まない状態、それぞれに考えていることをフラットに知れて、本当の意味でつながること。

それをオンラインの共同体でつくれないのかなあと僕は思うのです。

だって日本の人口比的には、それが急務な問題だから。

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で、そのためには、そのコミュニティ運営者が各地を飛び回り住んでる場所も曖昧な独身ぐらいのほうがいいんだろうなと。

この点、キングコングの西野さんが本当に上手だなと思うのは、自らがずっと独身を貫きながらも「ファミリーエンターテイメント」を謳って、なおかつ一番に子どもを大事にしようと、ひたすらに言い続けていること。

コミュニティのルールとして、一丁目一番地にそれを訴え続けていることが本当にいつも素晴らしいなあと思います。特に子沢山ファミリーを応援している姿勢は、絶対に崩さない。

世の中には単身者が増えていくなかで、これはものすごく時代に合った素晴らしい「戦略」だなと思います。より多くの属性のひとたちと共にコミュニティを築くことがあできる。

つまり、これからのひとびとの居場所を本気でつくる、となったときに本当に大事なことは、独身者がファミリーを大切にする、子どもを大切にする、というこの包摂性の方向性しかないなと思うんです。

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「いやいやいや、逆だっていいだろう!ファミリーを持つ人間が、独身者に対して包摂的になっていくという方向性もあるだろう」と思うかも知れないけれど、それだとやっぱりダメなんですよね。

どうしても今の時代の価値観だと、そこにはまだまだ悲壮感が漂う。言い換えると、どうしても、それは優しい「ケア的な態度」になってしまう。

持てる者から、居場所を与えられた、という感じになってしまう。つまり、単純に鼻につくわけですよね。

「そんなのは独身者が拗ねているだけだろう」と言われたら、ごもっともなのかもしれないけれど、奥田知志さんの「助けているようで、助けられているのが良い支援」という、あの話にもつながるとも思います。



本当の意味で対等な立場というか、お互いに居心地のよいコミュニティをつくるためには、やっぱりお互いに歩み寄っていくのかという姿勢は大切であって。

そのときに令和の現代においての最適解は、独身者がファミリーや子どもを大事にする、全員参加型のコミュニティを、自ら旗振り役を務めてゼロから創設していくしかないんだろうなあと思います。

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で、だとすれば、Wasei Salonにおいても、僕が自分が住所不定の独身ぐらいであるほうがちょうどいいんだろうなあと思うし、そのうえで、ファミリーの長田さんや、現状はDINKSの若月さんとしっかりと組んで、お互いのライフスタイルを尊重し合いながら、互いに敬意を持ち合っていることが、マジで大事だなあと思っています。

そうすると、本当にどの属性にいるひとたちにとっても、居やすい状態になっていくはずだから。

僕は、本当の意味で全員が、対等な立場で参加できるコミュニティをつくるためにはを考えたい。

そして、僕にとっては、いつも言っている通りWasei Salonこそが養老孟司さんや河合隼雄さんが語るような「イエ」であり、ファミリーだと思うのはそれが理由です。


そして、河合隼雄さんの永遠の同伴者における「生贄」の話なんかにもつながる。僕が少なくとも現状として捧げるべき生贄はコレなんだろうなあとも思っています。

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いわゆる通説として流布している「会社やコミュニティをつくりたい人間ほど、早く結婚して子どもをつくれ!」とは、全く異なる価値観だと思われると思うのですが、意外とこちらのほうが令和としては正しいスタンスのように思っています。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。