私たちの“はたらく”を問い続ける対話型コミュニティWasei Salonのインタビュー企画「わたしの一歩」では、サロンメンバーが踏み出したさまざまな一歩に触れながら、その人の人生や考えについて深掘りをしています。

第8弾となる今回のお相手は、鹿児島県にてNPO法人の理事や神職を務める山田智之さん。

Wasei Salon内では雑談会を不定期で主催されていたり、鹿児島合宿の運営をしていただいたり、サロンを様々な形で活用してくださっているメンバーの一人です。

今回はそんな山田さんのこれまでのストーリーや「わたしの一歩」についてお話を伺いました。

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山田智之(やまだ ともゆき)
鹿児島県在住。NPO法人たがやす理事・神職。地域おこし協力隊として、鹿児島に移住。2022年4月からはフリーランスとして活動中。リラックマのようになりたい。


「実は『はじめの一歩』を踏み出したら、いきなり踏み外しました(笑)」から始まった、お茶目な側面を持つ山田さんへの笑いの絶えないインタビュー。紆余曲折を経てきた山田さんの経験、それによって滲み出る人柄を深堀りする時間となりました。




はじめの一歩を踏み出したら、踏み外すこともある。

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正直、今日のインタビューが近くなる度に、胃が痛くなってたんですけど......。4月にフリーランスになってみたら、思ってたよりコロナの影響もあり、仕事がほとんど無くて。

ーーあら、踏み出したら、踏み外したと。

正直、あれ、失敗やったんかなというのが、今の偽らざるところですね(笑)前職を辞める前は、仕事お願いしますって言ってもらってたり、お手伝いする予定だったりしたんですけど、ほとんどが飛んでしまって......。やばいですね(笑)





様々な「自分」を転々としてきた

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ーー山田さんは、今、お聞きしたフリーランス以外に、いろんな側面をお持ちだと思うんですが、これまではどんなことを?

大阪出身で、27歳までは大阪にいました。そして、27-30歳までは京都......、えーっと、正直、どこで何してたか曖昧なんですけど、30代後半から10年近く伊勢にいました。


ーー同じ世代の方で、転勤とかじゃなく、いろんな場所を転々としてきた方ってなかなか珍しいんじゃないですか?

そうですね、当時だと、あまりいなかったと思います。新卒で就職してって訳でもなくて、他に道がなかったので、結果、ずっと、今でいうフリーランスみたいな形になってましたね。


ーーじゃあ、結構、お仕事もさまざま?

うーん、そうですね、あんまり、過去と現在の自分に接続性がないもんで、説明するとなかなか大変なんですけど、大学入学後に20代で起業したこともあったり、たった3日で仕事をやめたり、家電量販店の販売員だった時期があったり。履歴書に書き切れないですね。あとは、地域おこし協力隊をやったり、NPOのお手伝いをしたり、神職だったりという感じで、いろんな自分を転々としてきました。若い頃は「何者かになりたい」という欲求も結構強かったんだと思います。





神職との出会いは突然に

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ーーその中で、なぜ、「神職」という珍しい道に?

20代の頃は若気の至りというんでしょうか、本当に色々あって、うまくいかない時期も長かったんです。そんな頃、当時、フリーターしてまして、ふと何を思ったか、教養を身につけようかなと度々シングルモルトのスコッチウィスキーを飲んでたんですよね。そうやって、お金もないのにウィスキーを飲み歩いていた時、とあるバーでよくお会いする方が現役の神職だったんですよ。そこで、「あなたみたいな人は神職になった方がいいよ」と言われて「あ、じゃあなります」っていう流れでした。


ーーへえ、人生何があるか分からないですね。もともと神道に興味があったんですか?

神道には興味があって、会う度に「昔の神道と今の神道はどう違うんですか?」とか色々聞いてました。そしたら、かっこよく言えばスカウトされる形になって。別に、神社の息子とかではないんですけど。


ーー神職に就かれた当時は、信仰心みたいなものはあったんですか?

別に、盲目的に神様を信じているとか、そういうわけでもないんですよ。結果として、ああ、間違いなくいらっしゃるなってところに辿り着いて、体感するようになったから、自分が神職として納得いったっていうだけの話ですね。

それを言葉にすると「神様って、ほんまにおるん?」って聞かれたら「親の愛とか男女の愛とかないと思う?」という聞き方にしかならないって感じですかね。ないと思ったらなくて......みたいなことなんじゃないですかねえ。





梅佳代さんから学んだいい仕事

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ーーいろんな仕事あるいは自分を転々とされてきたと思うんですが、今の山田さんが思ういい仕事ってなんなんでしょうか。

これは、僕の好きな写真家・梅佳代さんが雑誌の取材の中で語っていらっしゃったことなんですけど、ファンである”嵐”の写真を撮った時は「記憶がなかった」って。僕も、近しいことを思っていて、いい仕事ってすなわち、我がない状態、例えると、詰まらずに液体に余計な味を与えない無味無臭のストローのような存在になれた時なんじゃないかなって思ってます。

わたしが〇〇をしたという認識ではなく、その場になにかを引き出す存在になれたときは、いい仕事ができたなって。





目に見えない部分まで大切にすることで、相手の本質が見えてくる。

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ーー我がない状態、うまく相手のよさを引き出せる存在になるには、どうすればいいんでしょうね。

言葉に捉われないことじゃないかなって思います。例えば、僕の思ってる「宗教」って単語と相手が使っているそれは、全然違う。多分ですけど、僕らは自覚している以上に、無意識にやりとりしているんだと思うんですよ。それを大事にすることでしょうか。


ーーWasei Salonで対話をしていても、あれ、違うなって途中で気付くこと、結構ありますね。

無意識に関連して、相手の目には見えない範囲の方を大事にすることも大切だと思います。見えてない部分の方が大きいじゃないですか。例えば、1人の人にも先祖がたくさんいるというように、相手が持ってるバックグラウンドって、目に見えてる範囲よりも遥かに大きくて。今、見えてる部分って、かなり小さいと思うんですよね。だから、大きくて見えない部分に、敬意を払う、礼儀を尽くす、あるいは働きかけるってことをする方が、より相手の本質に近いんじゃないのかなって思うんですよ。





Wasei Salonは点描画のようなコミュニティ

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ーー山田さんにとって、Wasei Salonってどんな場所なんでしょう?

2年も属してると分からなくなってきましたね。んー、不思議な感じですよね......。でも、(2022年7月に鹿児島で開催された)合宿 の時、「みなさん本当に存在したんだ」っていうので感動しました(笑)

利害関係が我々に存在しないじゃないですか。その分、素直で居られやすいんやと思うんですよ。


ーー素直、本当にそうですね。みなさんが素直でいようと努めている感じ。

あとは、特にローカルにいるというのもあるかもしれないですけど、日常では存在しない人間関係やあり得ない関わり方をさせていただいてるという感じがしますね。

普段は、自分の話するの好きじゃないんですよ。理解されない話も多いし。でも、みなさんが真剣に素直に僕の話を興味を持って聞いていただけるので、得難いという意味で、本当にありがたいなあと思います。


ーー入った当時と比べてギャップってありますか?

そうですね、遠くから見ると、一色で塗られた「Wasei Salon」なんですけど、一人一人に近づいたとき色が見える、それぞれが色を持った点描画のような印象ですね。案外、利害関係のある普通の生活だと、そこまで一人一人の色って見えないんじゃないかなと思うんですよ。ここでは、人柄だったり、考え方だったり、美意識だったりが見えて、それがとても得難いものなんじゃないかなと思いますね。





どこまでも違和感に素直な山田さん

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編集後記として、この章を書き連ねます。今回のインタビューを通じて、ひとつひとつ出会う違和感を放っておかず、ご自身の人生を着実に歩んできた方なんだなということが、具体的なエピソードと共に立ち上がってきました。

山田さんとは、オンラインイベントで、たまにご一緒する仲でした。特に山田さん主催の雑談会が好きで、いつも、とてもゆったりと一言一言を連ねる様子に「父親くらいの世代なのに、こんなにまっすぐ若者の話を選別なく聞いてくれる人がいるんだな」という印象を抱いていました。その根底には、今回のインタビューでおっしゃっていた、我がない、伝導体でいるというような意識があるのかなと感じられました。

山田さん、お話を聞かせていただき、ありがとうございました。



執筆:東 詩歩 https://www.instagram.com/moon__mani/
写真:長田 涼 https://www.instagram.com/nagata.ryo/


【Wasei Salon / 過去のインタビュー記事を読む】
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