前澤友作さんが仕掛ける「カブアンド」が突如大々的に出てきて、世間の注目を浴びています。


このタイミングで、カブアンドの弱点やデメリットを過剰に強調して、トークンのほうが優れているという「トークン vs カブアンド」という構図にしてしまうのは、正直もったいないなと思います。

むしろ僕は、カブアンドのほうがトークンの上位互換だと思っています。

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もちろん、ここで対立軸をつくりたい気持ち自体はとてもよくわかる。

NFTも含めて、自分たちが実現させたくて一生懸命取り組んできた世界観に対して、全部注目をかっさらっていったのが、カブアンドですからね。

でも、トークンを用いて実現したい世界観、その山の一番険しい道から「同じ山」の頂上に登ろうとしてくれているのが、カブアンドなのだと僕は思っています。

そうだとしたら、むしろ積極的に神輿を担いで、一番最初に頂上に登ってもらったほうがいいはずです。

なぜなら、今は誰が一番最初にその山の頂上に登るのか、という勝負をしているわけではなく、本当の目的は、トークンエコノミーが理想とする世界観をしっかりとこの世界につくり出すこと。

そして、その世界観を当たり前にすることだと思うからです。

前澤さんのカブアンドにまずは大成功をしてもらって、トークン業界をその状態から引き上げてもらう流れのほうが、理想的な流れだなあと思います。

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具体的には「このスキームが通用しますよね。これだけ多くの国民が資本の恩恵を受けましたよね。」という既成事実を、しっかりとつくってもらう。

そして、それをマスメディアでも大々的に報じてもらう。

「でも、株だと相当な時間がかかりましたね、売り抜けるタイミングも限定的だった。だからトークンという選択肢”も”ありますよ」というふうに。

前澤さんも、そこに対してはかなり協力的だと思いますから。

まずは数百万人単位の国民のみなさんに、山の頂上からの景色を実際に体験してもらってして、そこからさらによりお手軽なトークンに入ってきてもらうが、たぶん正攻法です。

株が膨らんで資産が増える、その旨味を知ってもらうこと。

「あー、こうやって参加者全員の資本を大きくするのね!」という成功体験がないと、一般的な人々、特にこれまで資本が膨れ上がっていくという恩恵を体感したことがない人たちにとっては、トークンの仕組み自体も、なかなかわかってもらえないはずです。

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この点、今の段階で一つはっきりと言えることは、トークン単独の今の延長線上においては、未来がほとんど見えないこと。

現状のボラティリティの高さや、高値掴みをして損するひとも出続けて「怪しい」という認識は変わらない。そして、その人達の嘆きは「投資は自己責任」という一言で切り捨てられてしまうわけですから。

だとしたら、比較的リスクの少ないカブアンドには「株式」の方向性からこちら側に歩み寄ってきてもらって、お互いに引き寄せ合って、変えていかないといけない。

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そうすれば、既存の証券業界や、エスタブリッシュメント層の見方もガラッと変わる。今のビットコインなんかが、まさにそうであったように。

そうすれば、その既得権益側や国家の中枢の中に、トークン界隈のひとたちが入っていける余白みたいなものも当然、生まれてくるわけですよね。

今は、両者の歩み寄りが何よりも大事なんだと思います。

それぞれ全く別のことをやっていて平行線のように見えるけれど、中長期目線で見れば、必ず両者の仕組みや世界観は交差するはずですから。

きっと、本当の意味で「未来の当たり前」であり「普通」になっているトークンエコノミーの真の姿は、ちょうどこの中間辺りにあるはずです。

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で、それよりも、もし問題となるような部分があるとしたら、カブアンドって、完全なる「手段の目的化」であるということです。

これについては、誰も話題にしていなくて、意外と不思議だなあと思う話なのだけれど、僕はそのほうが多少の違和感は残る。

この構想を前澤さんが提唱し、それをYouTubeか何かで僕が初めて目にしたときに、他に何かしらの「事業」があると思っていました。

TOYOTAの自動車や、Panasonicの家電、UNIQLOの洋服のような、実業があるわけではない。もちろん、その洋服を売るというEC事業のようなZOZOとも違う。

ある意味では、ミーム中のミームが、カブアンドです。

「国民総株主」を目標にして「みなさんの資本を膨らませて、資産を増やしてもらい、格差を緩やかにします」以外に目的がないわけだから。

何かほかのメインの事業があるわけじゃない。「そのミーム株をもらうためには、みなさんの生きている生活費の毎月の支払い、その支払い窓口を変えてください」という仕組み。

これを、ただのマネーゲームだと言われてしまったら、それまでのようにも感じます。

「金融工学の自己目的化」みたいな話でもある。

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東インド会社から始まった株式の仕組み。そこにはフロンティアの開拓や貿易という、何かしらの「目的」や「事業」が先に明確にあったはずです。

しかし、今回の誘い文句としては「上場すれば、後からより大きな資金がマーケットから入ってくるから、未公開の段階で保有しておくと、お得ですよ」という話のみなわけです。

そして、マーケットの特性上、実際にその通りだから全く問題ないのだけれど、言っていることは、ポンジスキームやネズミ講とそこまで変わらない。

「あなたよりもあとから人とお金がドッと入ってきて、あなたよりも高値で買いたいというひとたちが入ってくることは確実ですから、先に入っておいたほうがお得ですよ」ということで、会員数を増やす仕組み。

「その時に企業価値がないと、バブルだの、実態がないだの言われるから、企業の実態を作りましょう!」というのが、カブアンドの仕組みだと僕は理解しています。

だから、多少ネガティブな見方をすれば、ステーキングしてもらうこと、労働の搾取を通り越した「存在の搾取」みたいな状態だと思うという話を、以前もここで語ったわけです。


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で、もちろん、より多くの国民がカブアンドにステーキングしていれば、その人達にサブスクなり何なりで、ありとあらゆるサービスを、あとからいくらでも提供できるわけですよね。クレジットカードの付帯サービスのように。

というか、クレジットカードそのものをカブアンドが発行することもできるし、実際その準備も既に着々と進んでいるんだと思います。

だから、まずは繋がってもらうこと、より多くの国民に経済圏に参加してもらうこと、それが大事というロジックもわかるし、その順序を入れ替えただけなんだけれども、でも逆に言えば、もうそういった付帯サービスにおいての「差別化」はできなくなった、その証拠でもあるわけですよね。

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先に資本の増殖、その蓋然性の高さをエサにして、多くの人に集まってもらわないと、商品それ自体や理念で差別化できないという結論でもあるわけですよね。

現代は、どこの会社から商品を買っても大体同じクオリティ。

じゃあ、会社の理念や目標か?と言ってみても、それもどこの会社もChatGPTが描いたようなSDGsのようなフワッとした理念になる。

で、今回のカブアンドは、そんな「現代社会の歪み」みたいなものに対して、音楽で言えばパンクであり、「金融アート」のようなものであり、資本主義社会に対して完全に中指を立てているということなんだろうなと思う。だから、僕自身は全力で肯定します。

でもやっぱり、最初の事業がここから始まるしかないことに対する「手段の目的化」は否めない。まさに「デュシャンの泉」現象ですよね。

そして実際に、このタイミングにおけるアート的価値が非常に高いのは、紛れもない事実だと思います。当時、ただの男性用の小便器がそうだったように。


「終わりよければすべてよし」ということなんだろうけれども、夢を売る方法が、現代にはこれしかないという現実も、それはそれで悲しいことだなあと正直、心のどこか引っかかってしまう自分もいます。

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最後に、昨日「今75歳の人はWindows95が発売された時45歳だったのになんで使えないのか?」というTogetter記事が話題になっていましたが、


僕らが高齢者になる頃には、きっと若い人たちから「なんで当時からやってなかったの?自業自得じゃん」と言われるもの、それがオンラインコミュニティに所属していないことや、カブアンドのような未公開株(もしくはトークン)を持っていないことに対して、疑問に思われるようになるんだろうなあと。

しかも、パソコンやスマホの使い方とは異なって「当時の自分が悪かった」と反省し一念発起して学ぼうとしても、その時にはもう、完全に手遅れなわけです。

後戻りはできない。社会資本も、金融資本も、複利の力はそれぐらいに大きい。

大きく損をする可能性があるわけではないのであれば、少額でもいいから触ってみて、学んでみて「なるほど、こういう仕組みなのか」と理解しておくことは、いま本当に大事なことだと思う。

今はまだまだ黎明期で実際に触っている人たち自身もわかっていないし、それゆえに仕組みがこれから生まれてくる段階でもあるわけですから。

iPhoneの話と全く一緒です。


ルールが決まっていく立ち上がっていく段階で触れているかどうかによって、そこに雲泥の差がうまれてくるのだと思います。

いつもこのブログを読んでくださっているみなさんにとっても、今日のお話が何かしらの参考となっていたら幸いです。